活動記録 2018年度 B&G指導員研修会 開催

活動記録 2018年度 B&G指導員研修会 開催

自然体験活動の更なる推進に向けて指導者が集う
~2018年度B&G指導員研修会開催~

 2019年2月15日(金)、16日(土)2日間笹川記念会館にて「自然体験活動の更なる推進に向けて」をテーマに2018年度B&G指導員研修会を開催しました。この研修会は指導者としての資質向上を目的に、全国のB&G指導者を対象として毎年行っているものです。今年度は過去最高の437人が参加し、海洋センター・クラブの運営に関する最新の知識や現場での指導のスキルを学ぶとともに、全国の指導者間のネットワーク強化を図りました。

真剣な眼差しで各講義に耳を傾けるB&G指導員

自然フィールドでの体験活動を実施するうえで重要な安全管理について学ぶ

 講義Ⅰでは「自然体験活動安全に運営するための気象情報活用」と題しNPO法人気象キャスターネットワーク副代表 気象予報士の岩谷忠幸氏にご講義いただきました。
 岩谷氏は現代の子供たちは自然体験の機会が減少していると感じており、またそれが理由で自然災害への危機感が希薄になっている。自然に触れ合う機会を増やすことで、どういった状態が危険であり、避難しなければならないのか判断できるようになり、防災力向上のためにも自然体験は重要だと説明しました。講義は悪天候による落雷や河川の増水の回避方法、高温による熱中症対策、高潮発生のメカニズムなど多岐にわたり、指導者たちは気象現象による災害のリスクについて学びました。

自然体験を安全に行う上で気象についての知識を深めることの重要性を語る岩谷氏

命に関わるセルフレスキュー 指導者には正しい知識を教える責任がある

 講義Ⅱでは「3.11から学んだセルフレスキュー」と題し(株)朝日海洋開発 水難学会理事長の安倍淳氏からセルフレスキューについて講義いただき、ふいに水に落ちてしまった時に水面に浮いて救助を待つことが重要であることや、浮いて助けを待つときの正しい姿勢「背浮き」のポイント、人の体が水に浮く原理などについて、分かりすく解説していただきました。
 講義の後半では、東日本大震災での自身の被災体験を中心に、セルフレスキューなどの訓練を定期的に実施し、考えて行動できるようになることが大切だと語りました。安倍氏は宮城県東松島市の海岸沿いにある会社事務所で被災し大津波により、会社事務所とともに吉田川を約7キロメートル流されましたが、自力で土手に上がり生還。その時の一部始終を実際の映像を用いて解説していただきました。

震災当時を振り返る安倍氏

 安倍氏はセルフレスキューの正しい知識を持っていることは重要であるが、知識として留めるだけではなく実際に行動に移すことができるようにスキルを身に付けるけることがさらに重要であると語りました。また野蒜小学校の体育館が津波により浸水し、正しい背浮きで救助を待ち続け命を取り留めた小学生の事例をあげ、子どもたちの命を守るためにも指導者は正しい知識を教えなければならい責任があると説きました。

 

「やらされている」から「やらずにはいられない」へ

 指導員研修会2日目は「主体的なスポーツ参加を促すコーチングと題し日本体育大学 体育学部 教授の伊藤雅充様にご講義いただきました。伊藤氏は選手や子供たちがその競技を「やらされている」から「やらずにはいられない」という感情に変化させることが指導者の役目の一つであるとし、そのためには指導する相手が主体的に学ぶ環境を作ることが重要だと話しました。序盤ではモチベーションは、無動機、外発的動機、内発的動機といった種類があると説明したうえで、指導者が自分の型にはめようとする指導は相手のモチベーションを下げてしまうと指摘しました。

 講義ではグループワークも取り入れ、相手の話を聞く力や、相手の思っていることを聞き出す力を養うためのアクティビティを行いました。
 また人は自身が意識したものしか見えず視野が狭くなってしまいがちであり、その狭い視野や自分の固定概念で判断することの危険性について言及。指導者は自分が見たもの、経験したことばかりに固執して教えてしまう傾向にあるため、常に自分を改善し新しいことを身に着けていき指導に取り入れることが重要だと説明しました。

  • 情熱的かつ理論的な講義行う伊藤氏

  • グループワークでコミュニケーションアクティビティを行う指導者たち

それぞれ特色ある海洋センターの取り組み事例発表

 研修の最後には2名の指導者から海洋センターで行っている特徴的な事業の事例発表を実施。
 初めに、群馬県明和町B&G海洋センターの島田聡氏がプールでの海洋クラブ活動について発表しました。同クラブではプールでカヌーを日常的に練習し、カヌーに乗ることに慣れた方を対象に利根川でのカヌーツーリングを行っています。安全管理について専門家の意見を取り入れることや、指導者会に協力を仰ぎ人員を確保することなど、これらの活動が実現に至った方法を説明しました。

 次に福井県大野市B&G海洋センターの山口優氏は財団事業のBG塾を実施した際の事例について発表。
 BG塾を実施するにあたり大野市の現状について調査した結果、夫婦共働きの率が高いということがわかりました。保護者は夏休み中、子供たちを安全に預けることができる場所を必要としておりBG塾を通して地域の課題解決に一役買えるのではないかということで実施に至りました。参加した子供たちからの感想は好評であり、海洋センターをスポーツ施設だけでなく夏休みの学びの場として、新たな活用ができる手ごたえを感じたとのことでした。

  • 群馬県明和町B&G海洋センター 島田聡氏

  • 福井県大野市B&G海洋センター 山口優氏