活動記録 2017年度 B&G指導員研修会 開催

活動記録 2017年度 B&G指導員研修会 開催

「あらためて考える地域のリーダーとしての役割」をテーマに講義と実技

  • 全国から集まった参加者の皆さん

  • 情報交換会で「インスタ映え」を試す。指導者同期や全国の指導者と交流した

 1月25日(木)、26日(金)の両日、日本財団ビル(東京都港区)で2017年度B&G指導員研修会を開き、全国の海洋センター192カ所と海洋クラブ1カ所から213人が出席して、「あらためて考える地域のリーダーとしての役割」をテーマに座学と実技によりスキルアップを行いました。同時に年に一度のインストラクターなどが結集する機会であり、情報交換を深めました。

 開会あいさつでB&G財団の菅原悟志理事長は海洋センターのあり方に触れて、さまざまな人達が「目標を持って歩むことができる拠点にしたい」と訴えました。指導員の皆さんと共にあることを忘れずに、誇りを胸にもってほしいと強調しました。この後、今年度新たにセンター・インストラクターとなった指導者が会場で紹介されました。

【基調講演】「人を創る~やれば誰でもできる~」
日本体育大学名誉教授/「集団行動」監督 清原 伸彦 氏

 初日は情熱の指導者である清原伸彦氏(日本体育大学名誉教授、集団行動監督)が、基調講演「人を創る~やれば誰でもできる~」と題して講演しました。日体大水球部で驚異の公式戦376連勝を達成した黄金時代、卓越した集団行動の妙技を監督することでも知られています。

 九州生まれで大阪育ち、幼い時に母を亡くした生い立ちを織り交ぜながら、指導者の心得を語りました。夢であった叔父がやっている弁護士を目指しますが、高校3年の時に日体大出の恩師から言われた「人づくりが体育教員だ」に衝撃を受け、人生の分かれ道となったといいます。

清原 伸彦氏(日本体育大学名誉教授、集団行動監督)

 随所で「ここなんです。私が言いたいのは」と、ほとばしる熱情で顔を紅潮させて語ります。22歳から55年間の教師のポリシー、理念、情熱は「子供たちの人格を大切に伸ばしてやる」ことで、私はスポーツで教えてきたと言い切ります。

 清原氏は集団生活の基本として「集団行動」を研究、指導してきました。水族館の魚群はぶつからない、リーダーがいるのか疑問がわきますが「大変なこと想像できないことをやるから、人は喜ぶ」と明快です。スイスで行われたイベントが映像で紹介され、日体大の集団行動は別格でした。欧州は学生たちを待っている、世界を魅了したものと自負しました。

 そして最後に長い指導者人生を語るように「心です。誰でもできないことはない。一流でなくてもいいじゃないですか。活きる、形になる、チャンスになる。みんなでやったことを伝えていくよう指導しています」と振り返りました。

【講義】「スポーツ施設におけるプロモーション戦略」
和光大学 経済経営学部経営学科 教授 原田 尚幸 氏

 講義は「スポーツ施設におけるプロモーション戦略」を原田尚幸氏(和光大学経済経営学部経営学科教授)が、施設としてソーシャルメディアを使うことを中心に述べました。肝心なのはホームページやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で検索されて「引っかからなければ、ここでアウトになる」ことだと指摘しました。

 プロモーションとは「スポーツ施設に関する情報を効率よく、効果的に伝達すること」で、ソーシャルメディアは誰もが発信できて、一瞬にして伝わると認識で対応すべきだと述べました。ソーシャルメディアに関するサッカーチームの事例などを紹介しました。情報の効果的な更新のタイミングを分析。情報を見れば共感、確認、参加、共有、拡散という過程をたどり、「SNSはホームページに引っ張り込むもの」であると強調したうえで、検索して見つけてもらうこと、最低限ほしい情報が載っているかが問われると指摘しました。

原田 尚幸氏(和光大学 経済経営学部経営学科 教授)

【講義】「施設管理に基づく安全について」
日本床工事工業株式会社 執行役員 兼 営業部長 佐藤 民夫 氏

 体育施設の床面工事に23年関わってきた佐藤民夫・日本床工事工業株式会社執行役員兼営業部長(公益財団法人日本体育施設協会・特別会員)から施設管理に基づく安全と題し、現場経験をもとにしたスポーツフロアのメンテナンスを講演しました。

 最近のニュースで体育館床面のはがれによる事故が起きているように、全国的に30~40年経過している古い体育館が増えてきていると指摘。床面の構造、材料、材質、耐圧などについて詳細に説明すると同時に、仕上げのポリウレタン樹脂塗装について、適度なすべりとノンスリップ性能が必要であると解説しました。具体的に学校体育館の床面へこみ事例を挙げて、荷重は1㎡当たり500キロが限度であり、4人で飛び上がって着地すると限度を超えます。舞台前に殺到するコンサートは要注意だと喚起しました。このほか日常的なフロアメンテナンスの作業方法、手順などを手ほどき、出版されている「スポーツフロアのメンテナンス」が紹介されました。

佐藤 民夫氏(日本床工事工業株式会社 執行役員兼営業部長)

【実技指導】「高齢者の認知症予防と健康づくりプログラム」
筑波大学 体育系・高細精医療イノベーション研究コア准教授 大藏 倫博 氏
一般社団法人マットス協会理事 松浦 雄一 氏

  • 左が、大藏 倫博氏(筑波大学 体育系・高細精医療イノベーション研究コア准教授)

  • 松浦 雄一氏(一般社団法人マットス協会理事)

 全世代で楽しめる軽スポーツ「マットス」の実技を主体に、受講生が多く2教室に分かれて行いました。「高齢者の認知症予防と健康づくりプログラム」をテーマに大藏倫博氏(筑波大学、体育系・高細精医療イノベーション研究コア准教授)と一般社団法人マットス協会の松浦雄一理事が講師となりました。前段にアルツハイマー型の認知症を対象にした講義を行ってから、昨年6月からスタートしたマットスの実技に移りました。

 高齢化社会について各種統計値を基に日本人の長寿などを説明。日本人の発症率が高い認知症は長生き病といい、運動による予防に効果があるのはダンスと一人でもできるウオーキングで、集団のダンスが良いと述べました。顔と手で脳の三分の二を使うといい、指先をどれだけ細かく動かすかという手先の器用さ、身体機能の巧緻(こうち)性に着目。末梢の動きは脳を活性化するので、日常生活で巧緻性を高めるよう指摘しました。

 マットスはボールをマットにトスすることからできた呼称。若い人も高齢者も楽しめ、車椅子でもできるユニバーサルなスポーツです。まさに手指を使い脳トレ運動です。使用するお手玉のような4個の専用ボールは、重さはわずかずつ異なり、通常はバックスピンをかけて投げます。

 講師からルールなど一通りの説明を受け、習うより慣れろでスタート。「エンジョイ マトス」とコールして開始です。まず練習からでしたが、早速、満点の100点を取った人もいて、テンションは上がります。本番は5試技を行い、合計300点以上が一人出た会場もありました。

「マットス」にチャレンジする参加者たち

【海洋センターの事例発表】
「海洋センターを活用した地域コミュニティの再生について」
 北海道積丹町B&G海洋センター 丹場 康雄 氏
「熊本地震での体験を通して学んだこと」
 熊本県南阿蘇村B&G海洋センター 笠 健 氏

  • 丹場 康雄氏(北海道 積丹町B&G海洋センター)

  • 笠 健氏(熊本県 南阿蘇村B&G海洋センター)

 事例発表が2件あり、意識改革からはじめる地域コミュニティの活性化について、北海道積丹町B&G海洋センターの丹場康雄氏が、熊本地震での体験を通して学んだことを熊本県南阿蘇村白水B&G海洋センターの笠健氏が行いました。高齢化が急速に進む中で積丹町B&G海洋センターの利用者は、年度ごとに急増している。公民館的な役割もあり、スキー場も運営している。丹場氏は年度ごとに事業結果と成果を重視していると報告。

 今後は海洋センターを活用した地域コミュニティ再生モデル事業から海洋センターの高度利用、官民横断的な連携による事業展開、地方創生・地域活性化へつなぐと説明しました。清原氏の話を「目からウロコ、聞けて良かったなと思った」と述べ、自身が伝えたかった「熱意と心で、人づくりは心を育てること」と思いはかぶっていると話しました。

 南阿蘇村白水B&G海洋センターの笠氏は、一昨年4月の地震が起きてからの職員記録をもとに報告。発生時からの動き、状況など現場で起きたこと感じたことを体験的に次のように語りました。

 梅雨時の大雨による二次災害。深夜の物資受け入れ。避難所に電源なく業者依頼。役立った避難世帯管理カード。ノロウイルス感染。自分の命は自分で守る。避難所は避難者で運営する訓練をしていく。防災力を上回る災害に備える。準備してもまだ不十分な点は多い。
  B&G財団の支援について、周囲から褒められ誇らしく思ったと述懐。「防災でなく忘災」だと強調して、いつ起きるか分からない災害に、一人でも多くの命が助かるように準備するよう訴えました。

終わりに

 全国指導者会の川島正光副会長は、会設立して8年経過した成果を踏まえ、さらなる前進を図るため「会はひとつのチーム」だと認識して、社会貢献できるよう指導員が行動力を発揮するよう要請しました。

全国指導者会の川島正光副会長

 B&G財団は、食品ロス削減に取り組む社会貢献型ショッピングサイト「KURADASHI.jp」から支援先として、寄付金をいただいています。菅原悟志理事長からサイト運営会社の関藤竜也社長に感謝状が授与されました。あいさつした同社長は、フードロス(削減)は国民運動となっていると強調して、商品購入者が支援先を選択できるなど寄付の意思を明確にできると述べました。

  最後にあいさつしたB&G財団の古山透常務理事は「時代の要望に応えるよう指導者皆さんの協力が不可欠である、すばらしい故郷日本を引き継いでいこう」と述べました。

菅原悟志B&G財団理事長(左)から感謝状を受け取る関藤竜也社長