活動記録 笹川会長が語るトランプ大統領の実像
日本財団 笹川陽平会長 特別基調講演

笹川会長が語るトランプ大統領の実像
日本財団 笹川陽平会長
特別基調講演『トランプ大統領就任式』に参加して

 全国のB&G海洋センター所在390自治体を対象に開催している海洋センター首長会議「B&G全国サミット」。9回目となる今年度は、過去最多となる223名の首長を含め、副首長、教育長など総勢830名が出席し、2017年1月24日、笹川記念会館において開催しました。 この会議では、毎回、日本財団会長の笹川陽平様に特別基調講演をいただいています。

 今回の演題は「『トランプ大統領就任式』に参加して」。1月20日の大統領就任式に出席した笹川会長から、間近で見た第45代アメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプ氏の人物像について語っていただきました。

毎年好評をいただいている笹川会長の講演

トランプ大統領の素顔に迫る!

ご紹介賜りました日本財団の笹川でございます。私はあまり講演を得意としておりませんので、昨今では、子どもたち以外にはあまり話をしないようにしているのですが、このB&G財団のサミットだけは特別で、9回連続で出させていただき、大変光栄に思っております。

私の話は、もともと実体験に基づいた話ですので、評論家的な話は大変苦手です。今回はトランプ大統領の就任式に出席をしましたが、面識のない方についてお話するのは初めての経験ですので、皆さん方にどれだけご理解がいただけるか分かりませんが、周辺情報を集めてまいりましたので、お聞き取りをいただければと思います。

過去最高の参加者となった「第9回B&G全国サミット」


私は過去30年ほどの間に466回も海外に出掛けておりますが、ほとんどがアフリカやインドの奥地、あるいはアジアの僻地、南米の僻地という所ばかりです。時間にしますと、記録を取っただけで約3000日ということですから、刑務所に入れられたと換算すると8年位、世界のハンセン病制圧のために海外を駆けずり回ったということになるわけです。お陰様で病気のデパートといわれるような地域を回っておりますが、いまだにマラリアをはじめとした各地域の風土病になったことはありませんし、前の便の飛行機が墜落したとか、私が出発した後に内戦が勃発したとかいうようなことは多々ありましたが、運だけが頼りで生きてきたわけです。これも多くの皆さんの支えがあってのことだと思っております。当年78歳になりましたが、今だに自転車操業のごとく、ひたすら前だけ見て走り、横も後ろも振り返らないということを信条として仕事をしています。

さて、私がトランプという名前を聞きましたのは今から25年ぐらい前のことです。どうして名前を知ったかといいますと、その時分は日本がバブルの時代で、ニューヨークの5番街という世界で最も華やかな場所にトランプタワーというビルが建ちました。これはマンションで、その隣には有名なティファニーという宝石店があります。今でも日本の若い女性は、婚約指輪はティファニーが欲しいという方が多いと思います。

実は、バブルのときにこのティファニーを日本人が買収しました。ところが、後でこれが大変な高値でつかまされたということが分かったのです。ティファニーは3階建ての建物ですが、横にトランプタワーが、確か30階以上の高層ビルでして、ティファニーがもし改装して高い建物が建ちますと、このマンションからの眺めが悪くなります。当時、日本には空中権という考えがなかったのですが、アメリカにはあったのです。トランプはこのティファニーの3階以上の空中権を買収していたのです。そのため日本人は知らずにこのティファニーの3階建てのビルを買収しましたが、トランプが自分のビルの景観を守るために空中権を買い入れていたため、日本人はえらい高い物をつかまされたということがありました。そんなことで、私はトランプという名前を、当時、知ったわけです。

この方のことはもう皆さんご承知だと思いますが、父親はドイツ人、母親はスコットランドの方で、白人で長老派のキリスト教徒で当年70歳。三度結婚しており、60歳のときに今の3番目の奥さんであるメラニア夫人と結婚し、その間にまだ10歳のお子さんがいます。不動産業を始めてから4回も倒産を重ね、その中から立ち上がり、大統領に当選しました。まさにアメリカンドリームを実現したのです。彼の年収は250億円です。従いまして、アメリカの有数の大金持ちの一人です。

トランプの性格は皆さんがテレビでご覧になっている通りで、格闘技・プロレスが大好きで、長老派のキリスト教徒でありながら、右の頬を打たれれば左の頬を出しなさいというような聖書の精神に大いに反し、右の頬を打たれたら倍返ししろ。相手がぶっ倒れるまでたたき尽くせと言いそうな感じで、非常に激しい性格の持ち主であるように見受けられます。大統領の就任式でも背広のボタンを外し、赤いネクタイぶら下げて肩を振って出てくるという姿を見れば、大体想像がつくと思います。しかし一方で、大変清潔好きだそうで、アメリカ人でありながら人と握手するのはあまり好きではなく、握手の後には必ず手を洗うという潔癖性でもあるようです。

トランプの頭脳はどうかといいますと、ペンシルベニア大学のウォートン・ビジネススクールの卒業生です。ビジネススクールとしては今や世界一と言われています。ハーバード大学のビジネススクールよりはるかにランクが高い世界一のビジネススクールであるウォートン校を出ていらっしゃいますので、秀才かどうかは知りませんが、相当秀れた方ではないでしょうか。就任式の演説は、皆さんお聞きになりました通り、政治に対する思想や理念の話があるわけではなく、実に現実的な商売人としての話でしたね。大変異色な方が大統領になられたわけです。

就任演説をするトランプ大統領


ご承知のように、アメリカの選挙は2年間にわたり激烈な闘いを繰り広げるのですが、民主党はもう絶対的にヒラリーで決まりでしたから、トランプは出る所がなく、17人の共和党の中の泡沫候補として立候補したわけです。17人の中には生粋の共和党員であるルービンや、ブッシュ前大統領の息子でフロリダの知事で実績を挙げた人などの候補を次から次へと蹴落とし、あれよあれよという間に共和党の代表になってしまったわけです。

どういうやり方かといいますと、既存の枠組みや権威ある人たち、そういうものを破壊しようと、徹底的に1人で、Twitterを唯一の武器として活動したわけです。トランプが敵にしたのは民主党だけではありません。共和党の大部分も敵に回し、しかもホワイトハウスを敵に回し、FBIを敵に回し、司法省を敵に回し、国務省を敵に回し、財務省まで敵に回したんです。いわゆる政治の中心地である首都ワシントンDCの権威というものと徹底的に闘ったのです。ですからワシントンDC特別区のトランプさんの得票率はたった4パーセントでした。これを見てもいかにすごかったかと思います。

今や世界の大金持ち8人で世界74億人の人口の約半分、37億人と同じだといわれています。アメリカにはニューヨークの金融のセンターであるウォール街を中心にして、金儲けに狂騒する大金持ちが獲物を狙って集まっています。もちろん先ほど言いましたように、トランプも250億円の年収があるわけですからその一部ではありますが、ウォール街の金融の専門家や大財閥とも闘ってきたわけです。

彼の言動の中には、オバマ大統領、あるいはブッシュ大統領、クリントン大統領なども非常に汚い言葉で罵しってきたことは皆さんご承知のとおりです。ヒラリーとの論争におきましても、あれほど程度の低い大統領候補の論争はないといわれるような状況でした。そういう中でもっとすごいのは、テレビでいえばCNS、CBS、NBS、いわゆる日本でいえばNHKから全てのテレビ局を敵に回しました。新聞はウォール・ストリート・ジャーナル、ワシントン・ポスト、そしてニューヨーク・タイムズ、全ての主要新聞も敵に回しました。

彼は、この巨大なアメリカの近代国家を造った既存の指導者、メディア、そしてあらゆる既存勢力を敵に回し、唯一Twitterだけで、たった1人で闘ってきたと言っても過言ではありません。にもかかわらず彼は当選をしたわけで、多分、これからヒスパニックや移民の人口が増えてきますから、白人の代表が大統領になれる最後のチャンスではないかと言われており、泡沫候補が大統領になったということです。

私見ですが、既に述べたように、トランプには政治理念や理想はありません。これはオバマと正反対ですね。オバマは理想ばかりを言って現実問題としてほとんど何もやらなかったと言っても過言ではありません。最後にキューバ問題を解決したというところはありますが、私はオバマはあまり評価をいたしておりません。

トランプの政策の柱は六つの項目で、はっきりしています。TPPはやらない。NAFTA、メキシコ、そしてカナダとの貿易協定については見直すということを言っており、これが不動産屋の一つのやり方だと思うのですが、彼の優れた点はバイで、相対で勝負しようと。あまりグループでやるとうまくいかないし、そういうのは好きではないというきらいがあります。そういうことで、貿易協定を見直し、日本に対しても自動車批判が既に出てきております。

何よりも今一度、強いアメリカを作りたい。外部に出てしまった雇用をもう一度増やすために、製造業をはじめ、みんな戻ってこいと。戻ってこないと35パーセントの関税掛けるぞというブラフをかけられてあたふたとしている自動車業界は、既にご承知のとおりです。強いアメリカの中には、雇用をもっと取り戻して、特に中西部の白人の生活レベルを上げたいという、非常に強い意志を持っています。

それから外交は、力による平和ということで軍備の強化。どのように予算を組むのかは分かりませんが、軍事費を増大していくそうです。それと治安が大変悪くなってきましたので、特に黒人を中心とした地域での治安をきちんと回復したい。そして、エネルギーはシェールオイルがありますので、今まで輸入に頼っていたサウジ、あるいは中近東からの油も要らなくなってきますから、非常に強いアメリカを造りたい。

話はそれますが、東京でも今、小池知事が「都民ファースト」ということを毎日のようにおっしゃっていますが、あれはトランプの「アメリカファースト」の言葉を「都民ファースト」に言い換えているだけの話です。これは余談です。

大統領に就任した途端、何をやったかといいますと、宣誓式が終わりましてすぐ部屋に戻り、オバマ大統領が苦労した「オバマケア」、国民の2000万人が影響を受ける保険制度を廃止するというのに署名したんですね。これが彼の最初の仕事です。そうするとトランプさんってどんな人なのということになるのですが、簡単に申し上げますと、新興成金の不動産屋が、突然日本国の首相になっちゃったという感じです。

従いまして、共和党員の中にも知り合いはほとんどいない。握手したこともないという人ばかりで、どうしても身内を頼らざるを得ないという形で出てきて大統領になり、1月24日現在、まだ閣僚は2人しか決まっていません。国防長官のマティスと国土安全保障担当のジョン・ケリーのたった2人ですが、15人の閣僚が必要です。閣僚以外でもCIAやFBIの長官ですとか、いろんなポストがあります。アメリカは人口に関係なく各州から2人ずつ出てくる上院議員100人の公聴会を通らないと正式閣僚になれないので、まだ2人では片肺飛行どころの話ではございません。

そういう政治ポストが約3000人分あり、これをがらっと変えなきゃいけないわけです。閣僚はこれからの公聴会で順次決まっていき、各省庁の次官級から局長クラスが決まるのには通常で最低1年かかるのです。ですから霞が関の局長さんは、日本では約600人ぐらいといわれますが、それと関連する組織の人は全部退陣して新たな人が入ってくるという、大移動をするわけです。

特に外交官におきましては、ほとんどが「ポリティカルアポインティ」といいまして、献金が多かった人、選挙で活躍して汗をかいてくれた人、これが英国大使になり、フランス大使になるという具合で、職業外交官が一流国の大使になる可能性はありません。日本でもこの間までのケネディさんは、何の政治的な力、外交的な力はありませんでした。アメリカの一流国への大使は、ほとんど論功行賞です。

また、アメリカには100日ルールというのがありまして、100日間はハネムーン期間で、メディアは対立しないということになっておりますが、果たしてメディア側がそれを守り通すかどうかは、大統領自身のTwitterによっては変わってくるわけです。明らかにこの人は白人主義ですね。大統領就任式で周りを見渡しましたけれども、出席者はほとんど白人しかおりませんでした。閣僚名簿にも1人も黒人の名前が挙がっていないという、オバマのときとは全く状況が違う異様な大統領就任式でした。集まった人の数も違いますし、就任式後は大規模なデモがあったということも新聞を見ていただければ分かるとおりです。

大統領就任式に参加した笹川会長


従いまして、彼はそういう激しい気性の中からNAFTAやTPPを排除し、NATO・北大西洋条約も見直さなければと言っていますし、国連をどうするかということにもつながっていくわけです。果たしてどこまで持つか私には分かりませんが、非常に個性の強い現実的な政策を打ち出していくようです。

もう既にイスラエルのネタニヤフ首相がアメリカで会見をすることになっていますが、イスラエルのテルアビブにある外交団の大使館の中から、アメリカだけがエルサレムに大使館を移動するということになれば、中東は今にも増して大混乱になる可能性があります。特に長女のイヴァンカの旦那さんはユダヤ人でユダヤ教徒です。そしてホワイトハウスにも入りましたので、大変強い影響力を持っております。

ここで新たな火花が散る可能性がありますが、とにかくアメリカファーストで、アメリカが良くならなければ世界は良くならないという考えの下に、彼はディール、いわゆる取引を通じて、これからの政治をやっていこうとするわけですから、これから日本がどのように対応するか、やはり負けないようにしなければなりません。

あの大手の新聞、メディア、既存の勢力と、Twitterだけで闘って勝った男ですから、紳士的なことを言ってみたところで彼自身聞く耳を持たない。先ほどまで大統領だったオバマが、精魂込めて議会工作したにもかかわらず、難航に難航を重ねてもできずに大統領権限でやっとたどりついた「オバマケア」という制度を、ものの見事に破棄する文書に署名をしたわけですから、何が起こってもおかしくはないと思います。

そういう意味で、いろいろな人がいろいろ解説や論評をしていますが、正しく言えば、アメリカを中心に、何も分からない不確実性の時代が到来したと私は思います。イギリスはEUから脱退をしました。メルケル首相もドイツを中心とし、何とかEUの盟主としてやっていこうと努力しておりますが、右腕であったフランスがあのような状態で左翼勢力が大変強くなってきましたので、彼女自身も非常に不安定な状況下にあります。

G7の中で言えばメルケルの次に政権が長いのが安倍首相であり、世界の中で最も社会が安定している国は日本ですから、日本に対する世界の期待も強まると同時に、われわれに与えられた国際社会での使命・役割・存在というものは、ますます高いものになっていくわけです。もちろん、国内的にはさまざまな社会課題を抱えてはいますが、世界的に見れば、これだけ安定して豊かな国は世界にはありません。

それぞれの国が社会不安を起こす理由の一つは、民族対立と宗教上の対立です。私は今、ミャンマーの国民和解の政府代表として、懸命に政府と小数民族武装勢力との和平に心血を注いでいます。ノーベル平和賞をもらったスーチー女史が、アメリカでは聖女のごとく取り扱われ、イギリスの国会で演説もして、ここでも聖女のごとく取り扱われてきました。にもかかわらず、仏教国ミャンマーにおいて、イスラム教であるロヒンギャという非常に限られた地域の問題の対応を巡っての国際批判と彼女に対する落胆は、ノーベル平和賞受賞者たちがこぞって国連安全保障理事会にロヒンギャ問題の解決という抗議文を出したことからも分かりますように、世界からあれだけ評価された女性が、ちょっと言い過ぎになりますが、一夜にして評価が変わりつつあり、懸命に努力はされているのですが、具体的な成果を出せない状況にあります。政治とは難しいものですね。

かつて日本の古い政治家の川島正次郎という人が、政治の世界は「一寸先が闇」だという名言を吐いています。トランプがどこまでもつのかはこの100日間で大体決まります。しかしながら、少なくとも4年間はやれるわけで、日本がどのように対応するかは、先ほど申し上げたように、一喜一憂しないことです。とかく日本の識者といわれる方々、新聞記事を書いている皆さま方、そして学者・文化人と称する人たちは、常に悲観主義に立った日本しか論じないのです。しかし世界から見れば、これほど豊かで平和な、いわゆる先ほど言いました宗教対立がない、民族対立もない、政治的にも安定した国は世界ではまれなのです。従いまして、我々はきちんと世界に対応できる社会であり、政治状況も安定をしており、そういう意味で内向き思考ではなくて、もっともっと自信を持つ必要があります。世界になくてはならない日本という存在は、特に東南アジアを中心にして急速に評価を高めています。にもかかわらず、私たちが自信を持てないことの落差は残念でなりません。

戦後70年が経ちました。かつての国連、国際連盟というものが最初、アメリカのウィルソン大統領によってつくられましたが、その国際連盟において、「人種差別撤廃法案」というものを最初に出したのはどこの国でしょうか。あの当時、世界で初めて人種差別撤廃を提案したのは日本政府で、言ったのは新渡戸稲造です。国際連盟の事務次長までして『武士道』という本を書かれた方です。現在、人種差別がいけないとか何とか、世界中で言っておりますが、最初に国際社会に発案したのは日本です。そして、その法案を否決したのは議長であるアメリカのウィルソン大統領で、同数になり提案を無視して破棄してしまったわけです。

そういうことで、日本は伝統的にも歴史的にも、国際社会の中できちんとした位置付けができる優れた国であるということに私たち一人一人が自信を持ち、そして素晴らしい日本国を造り上げたことで、既に世界の中で尊敬される国になっているわけです。そこを知識人やメディアのコメンテーターと称する人たちを含めまして、全く分からずに発言をしているということは、私たち日本国民の方向性を誤るだけではなくて、子どもたちに対しても良い影響を与えないのではないかと憂慮しております。

日々の報道によって一喜一憂することはありせん。日本国は世界から素晴らしい評価の対象になっています。別に私は安倍首相を持ち上げるつもりはありませんが、世界中を飛び回って、非常に高い評価を受けているのが分かります。個々の事例を見て、井戸の底から世界を見るのではなく、やはり鳥のごとく、1度空に舞い上がって世界を俯瞰してみれば、長い歴史と文化によって培われた日本という国がいかに素晴らしいものであるかということは理解できるのではないでしょうか。

どうぞ皆さま方におかれましては、日米関係も含め、イギリスのEU離脱、あるいはNATOの崩壊ということもあるかも分かりませんが、わが日本国はそういう国際的な評価の中でこれから生きていくので、一喜一憂せずに、自信を持ってじっくりと構えて、それぞれの与えられた分野の仕事をしようではありませんか。

最後に、日本財団はモータボート競走の収益金によって運営されておりますが、日本はもとより、世界中のさまざまな課題に対処をして活動しています。昨今、社会課題が非常に複雑・多様化してきております。特に子どもの貧困問題について関西地区での私たちの聞き取り調査によりますと、「君、将来何になるんだい。何になりたい」と聞くと、「うちはおじいちゃんもお父さんも生活保護でやってきたから、僕も生活保護でいくんだ」という答えが返ってくる。実話ですよ、これ。世界中回って子どもたちに聞けば、お医者さんになりたい、看護師さんになりたい、あるいは学校の先生になりたいという答えが必ず返ってくるのですが、僕、何になるか分からないという答え。これはやっぱり私たちに与えられた大きな責任ではないでしょうか。

次代を背負う子どもたちのためにご尽力をいただいている皆さん方です。どうか、日本財団はそういう貧困の家庭の子どもだけに特定はせず、第3の子どもの居場所づくりというものを作っていこうと思っています。私の子どもの時分には、学校から帰ればかばんをおっ放り出し、お米屋さんの前ですとか、炭屋さんの前に行けば必ず5、6人の子どもたちがいて、上は中学生から下は幼稚園児ぐらいが集まっていろいろな遊びをし、その中で「長幼の序」ありを自然に覚えたものです。現代はそういう仕組みがなくなって横社会といいますか、学校でも学習塾でも同学年との付き合いはあるが、学校から家へ帰るとスマホしかしないのです。

第3の居場所づくりを、これから全国的にやっていきます。そこには鉄棒もあれば縄跳びもできる。あるいは跳び箱もあり跳び方も教えてくれる。将棋も教える。そして時間があれば勉強もしてもらう。場合によってはおなかが空いたら食事の世話もすると。そして子どもたちだけじゃなく、年を重ねた大人も参加し、食事作りや昔話を聞かせてたり、工作の仕方を教えてくれたりもする。定年後、家庭にだけいては夫婦の間がぎすぎすしたものになります。老人も、老人っていうと失礼ですけれども、活動できる元気な人たちが、子どもたちと一緒に新しいコミュニティーをつくっていかないといけないのではないかということで、日本財団は「第3の居場所づくり」を全国展開していきます。

皆さまの所でそういうご要望がございましたら、われわれは喜んでお伺いいたします。とにかくすぐ仕事をするのが日本財団のポリシーです。難病を抱える子どもたちの施設を造るのも大々的にやっておりますし、皆さん方の地域で抱えている社会課題がございましたら、ぜひお声を掛けていただき、皆さん方と共に明るい未来を子どもたちに伝えていく責任が私たちにはあるのではないかと思います。共に汗をかいて仕事をさせていただきたいと思っておりますので、遠慮なく日本財団をご活用ください。ご清聴ありがとうございました。

訂正
トランプ大統領はウォールトンのビジネススクール出身と書きましたが、ウォールトンスクール(経営学部)出身の誤りでした。訂正させていただきます。