事業内容を知る 「子ども第三の居場所」

第9弾 外国籍児童支援拠点にサッカー選手がやってきました!中央市拠点編

2024.04.09 UP

日本財団助成事業

2024年3月27日(水)、「子ども第三の居場所」山梨県・中央市拠点で、J2リーグヴァンフォーレ甲府のヘナト アウグスト選手(以下、ヘナト選手)によるサッカー教室が行われた。3月1日に山梨県内1拠点目として開所したこの拠点は、子ども第三の居場所事業において初であり唯一でもある外国籍児童への支援に特化した拠点である。サッカー教室のリポートとともに、拠点マネージャーの佐野一彦さんと、中央市教育委員会 生涯教育課の岡野秀典さんに、スタートしたばかりの中央市拠点について話を聞いた。

願いは、日本の生活における不自由さを解消してほしい

山梨県内でも、最も外国籍住民の割合が多い中央市。市内の小中学校には、外国にルーツのある児童・生徒が約170名在籍しているという。

中央市教育委員会の岡野秀典さん

中央市教育委員会の岡野秀典さん

岡野さん:この拠点は、2024年の3月1日に開所したばかりです。現在、4月からの申し込み者も含め30人を超えた登録者がおり、一番多いのはブラジル国籍の子どもです。そのほか、中国やペルー国籍の子どももいます。

開設の目的は、子どもたちに日本語はもちろん、日本の文化、生活習慣を学んでもらうこと。毎日の生活における不自由さを解消してほしいと思っています。子どもたちは放課後にやってきて、宿題をやったり日本語の勉強をしたり、本当に一生懸命取り組んでいます。

最初はどれだけの人数が集まるかわからず予想もできなかったのですが、開所してみたら毎日12~13人くらいの子どもたちが利用してくれています。

トランプで遊ぶ子どもたち

トランプで遊ぶ子どもたち

いかに楽しく日本を学んでもらえるかが重要

拠点内で飛び交う言語は日本語が少ない。スタッフ陣には、勉強や日本語を教える教師に加えて通訳が常駐している。また、勉強法にもひと捻りが必要になる。

岡野さん:元教員の学習指導員が、勉強を丁寧に教えてくれているため、子どもたちもそれに応えるように頑張っていると感じます。親御さんとの円滑なコミュニケーションのために、通訳さんも毎日必ず1名はいるようにしています。

日本語教師を招いてゲーム感覚で楽しく学べる企画は好評でした。子どもたちは学校でも勉強をしているので、ここでは、いかに楽しく学べるかを考えていくのが苦労する点といったところでしょうか。

これからの拠点の目標として、来日したばかりの子がここへ来ても、今いる子たちがサポートしながら、お互いに助け合っていけるような関係づくりができたらいいなと思っています。そして成長して、日本社会の一員として仕事に就いてくれたらうれしいですよね。

外国人を対象とした拠点だからこその課題

拠点のマネージャーである佐野一彦さんは、元々市の職員。多文化共生について長く担当していたこともあり、外国人支援においても経験豊富なスタッフだ。そのため、子どもたちの“今”だけではなく、その先にも目を向けている。

佐野さん:子どもが日本語を覚えるのはとても早いんです。苦労するのは、ブラジルの公用語であるポルトガル語をまだきちんと覚えきれてない年齢で日本にやって来た子どもや、いずれ国に帰ってしまう子ども。親とのやり取りはポルトガル語で難なくできるのですが、「書くことや読むこと」ができずにすごく困ってしまう。そのためこの拠点では、日本語や日本の生活習慣に加えて、母国語の読み書きも取り入れることで子どもたちの可能性を広げていきたい。

マネージャーの佐野一彦さん

サッカー教室を企画した理由とは

中央市拠点が開所してからまだ1カ月足らずにも関わらず、プロのサッカー選手を招いたサッカー教室という大きなイベントを企画したのはなぜなのだろうか。理由を聞いてみた。

岡野さん:現在は拠点施設の改修工事を計画しており、工事は終わるまで代替施設で運営しているため、施設内がちょっと狭い。思いっきり外で体を動かしてほしいという思いもあり、今回サッカー教室を企画しました。地域に根ざした活動を行っているヴァンフォーレ甲府さんへお願いし、ブラジル出身であるヘナト選手なら、子どもたちと言葉の壁もなくふれあえるのでは? ということと、外国の方が、日本で活躍して生活していく姿を見せてあげられるというのも大きなポイントでした。

抜けるような青空の下でキックオフ!

そんな思いが天に届いたのか、連日雨が続いたのが嘘のように、この日は晴天。青空には南アルプスの山々がくっきりと浮かびあがり、富士山もひょっこりと顔を出していた。雄大な自然に囲まれた広場に、長身のヘナト選手が登場すると、子どもたちはキラキラと瞳を輝かせ、とても興奮しているように見えた。その興奮を抑えきれず、ヘナト選手へ駆け寄りうれしそうに声を掛ける子どもの姿も。この日の参加者は合計13 名。小学校の低学年から高学年まで、年齢も性別も関係なく全員でボールを追う。

日本語で「よろしくお願いします!」と挨拶を済ませると、さっそくサッカー教室がスタート。ヘナト選手と共にレッスンを進めるのは、ヴァンフォーレ甲府の代表理事である長田圭介さんだ。「僕はポルトガル語が少ししかできないから、ヘナト選手が訳してね!」「君はどこの出身なの?」と、気さくに声を掛け、その場の緊張感を和らげながら子どもと選手の距離もどんどん縮めていく。「2人組になって~」という指令に、率先して選手と組んだ子もいたほどだ。

大人も子どもも一緒になって盛り上がった試合

練習も終わり、「最後は試合するよ!」と長田さんの声が響き渡ると、「試合! やった!」と子どもたちの声も弾む。なんと見学にきていた保護者や拠点スタッフも仲間に加わり、大人と子ども混合のごちゃまぜ試合がスタートした。誰もが真剣だ。ときには、ヘナト選手がゴールを狙うプレーを間近に見ることができたり、ゴールを守るヘナト選手に挑むことができたりと、普段体験できないようなことが繰り広げられ、広場には賑やかな声が常に響き渡っていた。

その賑やかな声の意味を証明するかのように、子どもたちの感想は希望に満ちあふれていた。「プロのサッカー選手になるのが夢なので、ヘナト選手に会えてうれしかった。そして、すごく楽しかった」「ヘナト選手が来てくれて、感謝の気持ちでいっぱい」「これから自分も頑張ろうと思った」と、喜びを爆発させていた。

ヘナト選手から子どもたちへ熱いメッセージ

  • ヘナト選手

    J2リーグヴァンフォーレ甲府のヘナト アウグスト選手

  • 拠点に飾った子どもたちの手書き SONHO(ポルトガル語で夢)

    拠点に飾った子どもたちの手書き SONHO(ポルトガル語で夢)

「このような機会はブラジルにはあまりなく、日本でできたので、とてもうれしく思いました。私も子どものときに、サッカー選手を近くで見たことがありとても興奮した記憶があるので、今回も子どもたちが喜んでくれていたらうれしいです。2~3人くらいサッカーがとても上手な子がいました。将来いい選手になるのではないでしょうか。どこにいても自分のいいところを出すようにしていくことがとても大切。親を尊敬し、どんな将来を目指していても、勉強を頑張ってほしいと思います」

まとめ

  

中央拠点の子どもたち全員が広場を走り回り、全力でサッカーを楽しんでいた。この日、小さな体に駆け巡った衝撃や胸の高鳴りは、今後の長い人生において大きな支えになることだろう。

家庭環境や経済的理由などさまざまな事情により、家で過ごすことが困難な子どもたちが、放課後から夜間までの時間を過ごすことができる拠点として整備を進めている「子ども第三の居場所」。3月末現在、全国213ヵ所に設置され、全国各地に更なる拡充を図ります。

B&G財団は、引き続き子ども第三の居場所の設置自治体を募集しています。ぜひ、お気軽にB&G財団 地方創生部 子ども支援課(TEL:03-6402-5311 mail:kodomo@bgf.or.jpまでお問合せください。ご応募をお待ちしております。

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