事業内容を知る 「子ども第三の居場所」

第6弾 地域と連携することで活動が枝葉のように広がる 北広島拠点編
2024.02.07 UP

日本財団助成事業

「子ども第三の居場所」を開所し、運営を始めたものの、地域への周知や理解、協力を得ることが難しいと感じることがあるかもしれない。今回は地域とコミュニケーションを図り、円滑な運営を行う北広島拠点・北海道北広島市児童活動センター『さとっぴー』の事例を紹介する。

銀行跡地を有効活用して子どもの居場所に

銀行跡地を有効活用して子どもの居場所に

銀行跡地を有効活用して子どもの居場所に

『さとっぴー』は旧北洋銀行の店舗を改修し子ども第三の居場所へ生まれ変わった施設である。ATM機能はそのまま残しているため、地域の人が訪れる好立地にある。大きな窓からは子どもたちが遊ぶ姿や活動風景が見え、ATMの利用者や、道行く人が手を振ってくれることもあるという。また、子どもたちも外に出たときには、近隣の人に挨拶するようにしており、地域とのコミュニケーションも生まれている。

  • 子ども第三の居場所内で遊びを楽しむエリア

    子ども第三の居場所内で遊びを楽しむエリア

  • 同施設内で学習と生活のリズムを習得するエリア

    同施設内で学習と生活のリズムを習得するエリア

開所にあたり「子ども向け・大人向け両方向のPR」を行うが……

北広島市役所 子ども家庭課 大西岳さん

北広島市役所 子ども家庭課 大西岳さん

子ども第三の居場所の開設・運営に携わり、子ども支援の窓口にもなっている北広島市子ども家庭課の大西さんに、開設時の拠点PR方法についてお話を伺った。
大西さん「開所前のプロモーションは大きく“子ども向け”と“大人向け”両方向に実施したんです。子どもの権利条例を持つ北広島市は、子どもの意見を聞くことを尊重しているので、子ども向けのPRに関しては、地域の小学校に欲しい遊具や備品のアンケートをとりました。施設名称の投票も行い、子どもたちによって『さとっぴー』の愛称に決まりました」

小学校の校長先生から『さとっぴー』の愛称を考えた児童たちへ、感謝状が贈られた

小学校の校長先生から『さとっぴー』の愛称を考えた児童たちへ、感謝状が贈られた

このような周知活動を行ったことにより、生活リズム等に課題を抱える子どもの利用に関しても令和5年9月時点で14名、令和6年1月時点では定員20名に達し、開所前のプロモーション活動に、一定の効果があったと考えられる。

一方、大人向けの広報活動については、住民説明会、施設の内覧会、市の広報誌などでPRを行ったが、住民説明会の参加者は少なく、内覧会も町内会の参加者は少なかった。そのため、銀行跡地に何かができるのは知っているが、内情は詳しくわからない、という状態で、地域における認知度は低いものであった。

西の里地域たすけあい会議で周知と協力依頼

  • 西の里地域たすけあい会議の様子

    西の里地域たすけあい会議の様子

  • 説明時に使用したスライド

    説明時に使用したスライド

開所時、地域への周知がまだ十分でなかった『さとっぴー』は、開所から3か月ほど経った頃、市と民生委員やさまざまな団体の代表などが地域とつながり、課題を話し合う「西の里地域たすけあい会議」で子ども第三の居場所の説明や協力依頼を行う機会を得た。
会議に出席し、施設の概要や地域との関わり方の展望を説明。西の里地域たすけあい会議の構成員や西の里地域の持つ資源をさとっぴーとつなぐことはできないかと提案した。その結果、『さとっぴー』の活動への理解を深めてもらうことができただけではなく、出席者から「大人や高齢者と一緒に過ごす時間を作ったらどうか」「ボランティア登録ができたらいい」「子ども食堂に興味がある」「見学したい」など、積極的かつ能動的な意見も聞くことができた。

このように地域への説明を重ね、理解を得たことで、月に1回開催されている子ども食堂へのボランティアや食材の寄付、子ども向けマネーと食育講座、花火工場や農業体験施設の見学(一部予定含む)など、地域産業の協力を得ながらの活動も増えている。

  • 子ども食堂のボランティア

    子ども食堂のボランティア

  • 冬休みに開催された子ども向け講座「マネーとミルクの学び」

    冬休みに開催された子ども向け講座「マネーとミルクの学び」

さらに、「西の里地域たすけあい会議」で出会った人を通じて、地域の人や物、さまざまな特技を持つ高齢者など、地域資源の発見にもつながり、実際に子どもたちに書道を教えてもらうイベントを開催するなど、地域との関係を深めている。

  • 書道の先生と一緒に書初め大会(2024年1月6日)

    書道の先生と一緒に書初め大会(2024年1月6日)

  • 大会後、拠点内に展示された子どもたちの作品

    大会後、拠点内に展示された子どもたちの作品

西の里地域たすけあい会議や地域とさらなる連携に向けて

「西の里地域たすけあい会議」は、現在、高齢者を中心に地域の課題やニーズを掘り起こし、地域の助け合いやサービスで解決を図る会議だ。『さとっぴー』側からのみならず、たすけあい会議としても、今後は、子どもから高齢者、障害を持つ方や生活困窮者、子育て世代など、さまざまな人を巻き込み、高齢者視点に加えて、子どもを真ん中に置いた視点も合わせて地域づくりを進めていきたいという。「西の里地域たすけあい会議」と『さとっぴー』が連携および協力していくことで、この先、地域全体で子どもを見守りながら、心地よく過ごせるよう、多方面からの視点での地域づくりに期待ができそうだ。

さとっぴー通信12月号

さとっぴー通信12月号

また、「西の里地域たすけあい会議」との連携に加え、ホームページや月1回発行している「さとっぴー通信」、Instagramなどで、随時、情報や活動内容などを発信し、地域とも繋がり続けていく。

さとっぴー拠点マネージャー・木幡夕希さん

さとっぴー拠点マネージャー・木幡夕希さん

そして、日々の運営の中では、「子どもを注意深く見守り、適切な声かけをすることで、実際に利用している子どもの保護者からの口コミで利用が広がった例もあります」と、センター長の木幡さんはいう。さまざまなPR施策だけでなく、毎日、丁寧に子どもたちと向き合っていることも、『さとっぴー』の認知を広める要因の1つと言えそうだ。

まとめ

『さとっぴー』は、開所前の説明等に加え、早い段階で、地域の課題などを話し合う、西の里地域たすけあい会議に出席し説明する機会を得たことも功を奏し、市や学校、利用する子どもたちの保護者、企業など、地域との関係構築を円滑に進めている拠点の好事例だ。
今後も地域とつながり、地域資源を発見・活用し、地域に愛される持続可能な施設を目指すべく、今、まさに枝葉のように活動を広げ、進化を続けている。

『さとっぴー』インスタグラム

『さとっぴー』インスタグラム

「子ども第三の居場所」のお問い合わせはB&G財団 子ども支援課(TEL:03-6402-5311 mail:kodomo@bgf.or.jp)までご連絡ください。

家庭環境や経済的理由などさまざまな事情により、家で過ごすことが困難な子どもたちが、放課後から夜間までの時間を過ごすことができる拠点として整備を進めている「子ども第三の居場所」。全国199か所(2024年1月末現在)に設置され、全国への更なる開設を目指す。

B&G財団は、引き続き子ども第三の居場所の設置自治体を募集しています。ぜひ、お気軽にB&G財団 地方創生部 子ども支援課(TEL:03-6402-5311 mail:kodomo@bgf.or.jpまでお問合せください。ご応募をお待ちしております。

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