連載企画

注目の人:全国の海洋センター・クラブで活躍する方や、スポーツ選手など、B&G財団が注目する人にインタビューをしています。

No. 91

世界に羽ばたく子を、わが町で育てたい!


2013.08.14 UP

海辺の活動、競泳選手の育成に励む、志賀町富来B&G海洋センター

B&G全国ジュニア水泳大会で常に優秀な成績を収めている石川県チーム。その一翼を担っているのが、池端久泰選手(2009年度最優秀選手)や日髙雅子選手(2012年度最優秀選手)を輩出している、志賀町富来B&G海洋センターです。
施設がオープンする際に愛称を公募し、小学生が考えた「フレア」(フレッシュアップ・クラブの略)という呼び名がつけられた同センター。1998年に事業を始めて以来、多くの住民に親しまれながら地域の健康づくりや子供たちの水泳指導に励んでいます。
今回は、こうした活動を二人三脚で支え続けている2人の指導員を連載で紹介するとともに、最終第4話では、海洋センターに寄せる期待を小泉 勝 町長にお聞きいたします。

プロフィール
● 志賀町富来B&G海洋センター

旧富来町時代の平成10年(1998年)、屋内温水プール施設として開設。愛称を公募し、「フレア」という名で住民に親しまれ続け、平成17年に2町合併よって志賀町となってからも子供たちの水泳教室から高齢者の健康づくり事業が熱心に続けられている。
また、B&G富来海洋クラブも昭和61年(1986年)に開設。手作りの艇庫を拠点に、カヌーやOPヨット、キャンプなどの活動が盛んに行われている。

● 谷場 宣彦さん(右)

1974年生まれ、旧志賀町出身。民間スイミングクラブを経て、海洋センターの開設に合わせて旧富来町役場に就職(現:志賀町教育委員会)。以後、海洋センター職員として各種水泳教室の指導にあたっている。

● 戸野 陽介さん(左)

1976年生まれ、旧富来町出身。旧富来町役場に就職し、海洋センターに赴任(現:志賀町教育委員会)。以後、谷場氏とともに海洋センターの運営にあたる一方、海洋クラブの指導にも励んでいる。

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第2話効果を上げた消防署との連携

プールで学んで海を体験

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元気よく海に漕ぎ出す子供たち。プールだけでなく、海の遊びもたくさん体験します

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シュノーケリングも人気アイテムの1つ。「プールもいいけれど、海も楽しい!」

 偶然に再会した戸野さんの勧めを受けて、民間のスイミングクラブから海洋センターに転職した谷場さん。高校時代の後輩と手を携える新たな仕事に、大きな期待を寄せました。

 「子供の頃、私はよく海に潜って遊んでいたため、スイミングクラブに勤めていたときから、いまの子供たちにも海に親しんでもらいたいと思っていました。ですから、後輩の戸野から転職を勧められた際は、海洋センター、クラブの仕事なら水泳だけでなく海辺の活動もいろいろできると思いました」

 海洋センターに通う子供たちには、プールで水泳を習うだけでなく、海洋クラブの活動に加わって海遊びも体験して欲しいと語る谷場さん。その思いから、水泳の選手コースで練習に励む子供たちも海で遊んで自然の大切さを知る活動を体験しています。

 「海洋センターの事業は常に海洋クラブとリンクしており、水泳教室に参加した子供たちを対象にしたカヌー体験会や水辺の安全教室を開いています。水泳を習う子なら水に親しむ気持ちがあるわけですから、カヌーなどの海遊びや水辺の安全知識などにも関心を寄せてくれます」

 現在、谷場さんが選手コースを指導し、海洋クラブの活動は主に戸野さんが担当していますが、子供たちがより多くの活動を体験できるように、2人が情報を寄せ合いながら日々の計画を立てています。

教えられたり教えたり

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消防署の指導で救命救急を習う子供たち。講習が終わると立派な修了証書がもらえます

 海の活動にも励む水泳教室の子供たち。4年前からは、水辺の安全教室に地元の消防署を招いて救命救急の講習を行っています。

 「最初は、役場の職員研修で救命救急の講習を消防署にお願いしたのですが、水泳などで水に親しむ以上、子供たちにも学んでもらおうということになりました。昨年は水泳教室の子だけでなく、町内すべての小中学生を対象に40人を上限で参加を募り、30人の子が集まりました。消防署と連携した水辺の安全教室は全国でも珍しい試みだと思います」

 子供たちが受講することから、消防署の人たちも毎年いろいろと講習内容を工夫してくれており、2年前には寸劇を開いて遊んではいけない危険な場所を解説してくれました。

 「講習に参加すれば、小学生にも消防署発行の修了証書を出してくれるので、子供たちには大きな励みになっています。4年前から始めた講習ですが、多い子は3回も参加しています。

 救命救急は、とっさのときに対処できるよう手順に慣れておく必要がありますが、毎年のように繰り返し講習に参加していれば子供でも自信がついてくると思います」

 水泳教室に通う子の誰もが、AEDを扱うことができると語る谷場さん。速く泳ぐだけでなく、水辺の安全知識をしっかりと身につけたスイマーに成長してほしいと願っているそうです。

 「子供たちを対象にした講習を通じて、海洋センターと消防署はとても良い関係を築くようになりました。今年は、消防署の皆さんから水辺の安全教室の着衣泳を教えてほしいと言われたので、受講生として参加してもらいました」

 消防署と手を携えながら水辺の安全教室に力を入れる谷場さん、戸野さん。その一方、海洋センターの中心的な事業である水泳教室でも、次々に大きな成果が生まれていきました。(※続きます) 

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水辺の安全教室で実施している「着衣泳」。今年は消防署の職員も受講しました

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いろいろな道具を使って浮遊体験。いざというときは、身近な物でも役立ちます

写真提供:志賀町富来B&G海洋センター