連載企画

注目の人:全国の海洋センター・クラブで活躍する方や、スポーツ選手など、B&G財団が注目する人にインタビューをしています。

No. 105

海洋センターを地域おこしの拠点にしていきたい

2014.11.20 UP

~時代の変化に応じて施設の有効活用に励む、高岡市福岡B&G海洋センター~

地域で唯一の上屋付温水プールとして親しまれながらも、暖房設備がないため冬場の休業を余儀なくされていた、富山県の旧福岡町B&G海洋センター。しかし、利用者の強い要望が続いたため、高岡市との合併を機に平成22年、B&G財団の助成と合併特例債を利用して施設の全面改修に着手。暖房設備を備えた通年型の温水プールが完成すると、従来から通っていた地域の子供たちに加えて水中ウォーキングに励む高齢者が多くなり、体育館でも「カローリング」などに親しむ中高年の姿が増えていきました。
今回の注目の人では、「少子高齢化の時代になってもニーズの変化に応じながら、地域おこしの拠点にしていきたい」と意欲を示す、現:高岡市B&G海洋センター・スタッフの皆さんに、これまでの経緯や今後の展開について語っていただくとともに、最終回の第4話では高橋正樹市長に市民の健康づくり事業に向けた抱負をお聞きいたします。

プロフィール
● 高岡市福岡B&G海洋センター

平成2年(1990年)、旧福岡町で開設。体育館、上屋付温水プールに加え、その後、敷地内に艇庫を設け、近隣のダム湖などでカヌー活動も展開。平成17年に高岡市と合併してからは現名に変更され、その後、施設の老朽化が著しくなったため、平成19年に体育館の外壁およびフロアを改修。また、平成22~23年にかけてプールの全面改修を行い、屋根の固定化や館内の暖房化を実現。これによって利用者が増大し、地域の健康づくり拠点としての活用が期待されている。

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第3話時代に応じた施設の活用をめざして

少子化の波には負けたくない

 全面的な上屋の建て替え改修を行い、暖房設備を整えて通年型のプールに生まれ変わった高岡市福岡B&G海洋センター。冬場でも安心して水に入れるようになったことから、水中ウォーキングに励む高齢者の利用が増えましたが、その一方で同海洋センターは開設以来、今日に至るまで子供たちの水泳教室にも熱心に取り組んできました。

 「『遊・Uクラブ』では、25メートルを泳げることを目標にした『小学生らくらく水泳教室』を年間3回にわたって行っており、10メートルぐらいしか泳げなかった私の子も、この教室に通って一気に50メートル泳げるようになりました」(海洋センター・スタッフの辻浦さん)

 また、市内の保育園や幼稚園は団体利用で平日の午前中にプールを利用しており、『遊・Uクラブ』でも『幼児水泳教室』を夜の早い時間帯に開設。幼児を対象にした、一歩進んだ水泳指導に力を入れています。

 「「近くのダム湖に足を運んで楽しむ『カヌー教室』や体育館で行う『トランポリン教室』なども『遊・Uクラブ』では開いており、いろいろな種類の教室を設けながら体を動かすことの楽しさを子供たちに伝えています」(海洋センター・スタッフの倉満さん)

 幼児や小学生を対象にした活動を積極的に展開してきた海洋センター。ここにきて少子化の傾向を少しずつ感じるようになり、かつては定員オーバーが発生していた各教室も、最近はなんとかして定員が埋まるようなことも出るそうです。これも時代の波なのかも知れませんが、「少子化の波に負けず、地域の子供たちのために各教室の扉は大きく開いていきたい」と、辻浦さんも倉満さんも口を揃えていました。

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「小学生らくらく水泳教室」に参加する子供たち。低学年コースでは25mを泳ぎ切ることを目標に練習していきます

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ダム湖に足を運んでカヌーの練習に励む子供たち。さまざまな教室を企画して子供たちに体を動かすことの楽しさを伝えています

満車になった駐車場

少しでもカヌーを知ってもらおうと、プールでの体験教室も行っています
 

 子供の数が減少傾向にあるなか、球技のチーム練習などで海洋センターの体育館に通う成人の一般利用は比較的安定しており、高齢者の一般利用については卓球台が不足するなどの増加傾向が続いています。

 「少子化の波は受けていますが、高岡市では平成25年度に『スポーツ推進プラン』を策定し、『いつでも、どこでも、誰でもが』スポーツに親しむことができる環境を整え、それに伴いながら地域の活性化をめざしていく方針を立てました。市をあげてスポーツを大きなテーマとして捉えていくわけですから、海洋センターが担う役割も大切です」(倉満さん)

 現在、『遊・Uクラブ』では民間の指導者を全教室に配置して活動しており、その人たちは海洋センターの一部事業も手伝っています。こうした人的な協力を得ながら、海洋センターでは知恵を絞りながら積極的に新しい試みに取り組んでいます。

 「先日、ある団体が高齢者の社交ダンス大会を海洋センターで開催したところ、広い駐車場が満車になるほど人が集まったので驚きました。主催者にお聞きしたところ、高齢者の間で社交ダンスはとても人気があるそうで、ダンスぐらいの運動ならできるかも知れないといって始める人が多いようです。このようなイベントに場所を貸すところが少ないそうなので、こうした需要に応えることも大事であると思いました」

 体を動かしたいと思っている高齢者は想像以上に多いはずだと語る倉満さん。そこから一歩前に踏み出して何かを始めるきっかけづくりを応援することも、これからの海洋センターには求められていくのではないかと指摘します。

「自己整体と保健筋体操教室」に参加する成人の皆さん。「遊・Uクラブ」は、海洋センターを拠点にさまざまな教室を設けています
 

 「体育館は昼間の多くの時間に空いていますから、地域のお年寄りが集まってお茶を飲みながら雑談してくれても構わないし、そこで体を動かしたい気持ちが生まれてダンスの練習が始まってもいいと思います」

 現在、海洋センターでは、車輪で動くストーンを使ったカーリングの体育館バーションともいえる「カローリング」が中高年層の間で流行しています。最初は体育館に集うことが楽しみだった仲間の皆さんが、やがて何か体を動かそうということになって練習が始まっていったそうです。

 「海洋センターに人が集まって輪が広がっていくのであれば、スポーツだけでなく文化的なグループの活動があっても良いのではないかと思います」と語る倉満さん。これからの海洋センターには、スポーツや文化、そしてあらゆる世代を包括した地域交流の場としての役割が増えていくのではないかと述べていました。(※最終回(高橋正樹 市長インタビュー)に続きます)