連載企画

注目の人:全国の海洋センター・クラブで活躍する方や、スポーツ選手など、B&G財団が注目する人にインタビューをしています。

No. 101

県や地域の枠を乗り越えて、幅広い事業の展開をめざしたい!

上から:久喜市栗橋、松伏町、下野市国分寺

2014.06.18 UP

~海洋センター間の連携事業を進める、2県3カ所の地域指導者会~

日頃の事業活動において、他県や近隣の海洋センター同士が連携するケースはそう多くありませんが、埼玉県松伏町B&G海洋センターと同県の久喜市栗橋B&G海洋センター、そして栃木県下野市国分寺B&G海洋センターでは、それぞれの地域指導者会が中心になって、平成22年からカヌー教室や水辺の安全教室などで事業の連携を進めています。
「センター同士が手を組むことで人手に余裕が生まれ、異なるアイデアも出るようになるので、個々に行う場合に比べて事業の幅が広がります。また、こうした様子を見て、協力し合いたいと相談に来る他のセンターも出てくるようになったので、連携の輪はさらに拡大していくと思います」と語る、久喜市栗橋B&G海洋センター指導者会会長(B&G全国指導者会副会長)の川島正光氏。今回の注目の人は、川島氏を含む3センター指導者会の皆さんに、連携を始めた経緯や課題点、今後の展望などについてお聞きしました。

プロフィール
● 久喜市栗橋B&G海洋センター

昭和63年(1988年)開設(体育館・プール)。健康・福祉、文化を重視したまちづくりを進める拠点として機能しており、転倒・寝たきり予防プログラム「元気アップ教室」などの健康づくり活動に力を入れている。

● 松伏町B&G海洋センター

平成元年(1989年)開設(体育館・プール)。中央公民館と併設されており、周辺には全天候型テニスコートや野球場がある松伏記念公園、ならびにサッカーなどができる多目的競技場を設けた松伏総合公園があって、町の健康づくり推進に活用されている。

● 下野市国分寺B&G海洋センター

昭和58年(1983年)開設(体育館・プール)。野球場やテニスコートを有する運動公園のなかにあって小中学校も周辺に控えていることから、各種サークルや児童生徒の利用が多く、地域スポーツの中心的な役割を担っている。

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第3話新たな仲間の誕生

深まる協力関係

 「障がい者カヌー&水辺の安全教室」の開催を通じて、地域や県の枠を越えて協力し合うことができた、埼玉県松伏町、久喜市栗橋、そして栃木県下野市国分寺の各海洋センター。障がい者支援団体の要望に応えた松伏町、カヌー器材を提供した久喜市栗橋、B&G特派員の取材をきっかけに流れるプールの利用ノウハウを伝えた下野市国分寺と、それぞれに役割を担いながら教室の開催を成功させたことで、3つの海洋センター、ならびに各指導者会の協力関係はさらに深まっていきました。

昨年7月、「地域の特色のある事業」として3つの地域指導者会によって実施された「水辺の安全教室 in 栗橋小学校」。指導者同士が、お互いに指導技術のレベルアップを図ることができました

 「久喜市立栗橋小学校では、これまで4年生を対象に水辺の安全教室を実施していましたが、昨年、他の学年でもしてほしいという希望が出されました。しかし、そうなると栗橋海洋センターの指導者や地域指導者会だけではとても人手が足りないので、今度はこちらから松伏町にお願いして教室の指導を手伝ってもらうことになりました」

 そう語る、久喜市栗橋海洋センターの松田さん。すると、「障がい者カヌー&水辺の安全教室」を取材しながら手伝ってくれた下野市国分寺海洋センターの近藤さんも、指導者として協力してくれることになりました。

 こうして十分な指導体制が整ったことから、久喜市栗橋海洋センターは安心して小学校の希望を受け入れることができ、昨年の7月に、2、4、5年生360人を対象にした大がかりな「水辺の安全教室 in 栗橋小学校」を開催(全11教室)。また、3つの地域指導者会による合同企画が評価され、「地域の特色のある事業」として日本財団の助成を受けることになりました。

これぞB&G魂!

下野市国分寺海洋センターを拠点にしている総合型地域スポーツクラブが主催したカヌーリバーツーリング。B&Gしもつけ国分寺指導者会をはじめ、久喜市栗橋、松伏町の各海洋センターもが友情参加してくれました

 「水辺の安全教室 in 栗橋小学校」が実施された際、松田さんは、「障がい者カヌー&水辺の安全教室」のときと同じように、B&G特派員を務める明和町B&G海洋センター(群馬県)の島田 聡さんに取材を依頼。後日、島田さんはB&G特派員ブログに次の感想を述べました。

 「今回の水辺の安全教室は、なんといっても複数のセンターの指導者会が協力し合って一つの事業を行うという、大変すばらしい例だと思いました。最近は、どの市町村でも人員や予算が削減されており、厳しい条件の中で事業を展開していかなくてはなりません。ですから、これからは自治体を超えた協力体制が求められていくのではないかと思います。これぞB&G魂! 素晴らしい!」

 取材を通じて、地域や県の枠を越えた海洋センターならびに指導者会同士の連携に大きな共感を得た島田さん。この出会いを機に、島田さんも近藤さんと同じように仲間の輪に入っていくことになりました。

 「『水辺の安全教室 in 栗橋小学校』から2カ月後の9月に、下野市国分寺海洋センターを拠点にしている総合型地域スポーツクラブがカヌーリバーツーリングを行い、松伏町と久喜市栗橋からも何人かの指導者が応援に駆けつけましたが、その際、島田さんもB&G特派員として取材に訪れながら、参加者の指導にあたってくれました」

 「島田さんは、取材に来たものの指導者の血が騒いだのでしょう(笑)」と語る、下野市国分寺海洋センターの近藤さん。当日は、『B&Gしもつけ国分寺指導者会』が中心になって事業を進めましたが、松伏町や久喜市栗橋の指導者会、ならびに島田さんが手伝ってくれたおかげで、十分な人手を確保することできました。

期待を寄せる今後の展開

 こうしてリバーツーリングは無事に終了しましたが、久喜市栗橋海洋センターが地元の小学校で出前カヌー教室を行った際にも、他の2つの海洋センター、ならびに指導者会が応援に駆けつけて人手不足を解消しており、気がつけば、昨年は3つの海洋センターの事業それぞれにお互いの力を貸し合いました。

 「3つの海洋センターに加え、リバーツーリングで手伝ってくれた島田さんのいる明和町海洋センターとも、今後はお互いの事業で協力し合う関係が生まれていくのではないかと期待しています」

 そう語る、久喜市栗橋指導者会の川島さん。川島さん自身は、今年6月にリニューアルオープンを迎えた茨城県の五霞町B&G海洋センターから、記念式典として水辺の安全教室の実施を依頼されたため自ら講師を申し出て、久喜市栗橋、松伏町、下野市国分寺の各指導者会の連携事業として引き受けることになりました。

 また、松伏町では近隣の幸手市B&G海洋センターから、「カヌー教室の指導者が足りないので手伝ってほしい」という要請を受けて、昨年から指導者を派遣しています。

 3つの輪が4つ、5つに増えていきそうな指導者仲間の協力関係。仲間を手伝うために自分の仕事を休まなければならないこともあるそうですが、誰もが積極的に連携したいと口を揃えていました。(※最終話に続きます)

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明和町B&G海洋センターで幼児アクアリズムの指導に励む島田さん。B&G特派員として栗橋小学校の水辺の安全教室や下野市国分寺のカヌーリバーツーリングを取材しながら、異なる地域や県の指導者同士の連携に共感してくれました

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今年6月14日には、久喜市栗橋のB&G指導会が五霞町B&G海洋センターのリニューアルオープンを記念して、水辺の安全教室を実施。県をまたいで事業協力に励みました