連載企画

注目の人:全国の海洋センター・クラブで活躍する方や、スポーツ選手など、B&G財団が注目する人にインタビューをしています。

No. 87

クルーズで育んだ友情は一生忘れない!

NO.87 クルーズで育んだ友情は一生忘れない!
NO.87 クルーズで育んだ友情は一生忘れない!

上:鈴木美香さん/下:谷中理矩さん

2013.04.03 UP

平成24年度 B&G「体験クルーズ」小笠原に参加した、2人のボランティアリーダーを紹介

37年にわたって続けられてきたB&G財団の体験クルーズ事業。この11年間は全国の小中学生を対象に、東京~小笠原間の航海を実施してきましたが、チャーター客船ふじ丸の売船に伴い、平成24年度をもって休止することになりました。
この、ふじ丸ラストクルーズで子どもたちの世話をしたいと名乗りを挙げた12人のボランティアリーダーのなかに、鈴木美香さんと谷中理矩さんの姿がありました。2人とも過去にメンバーやジュニアボランティアリーダーで乗船しており、自他共に認める"体験クルーズ"の大ファン。「だからこそ、最後の記念にボランティアリーダーとして参加したかった」と語る2人の熱い胸の内に迫ってみました。

プロフィール
●鈴木美香(すずき みか)さん

平成2年生まれ、群馬県出身。小学生の頃から、地元みなかみ町新治B&G海洋センターでカヌーやキャンプを楽しみ、中学2年生のときに母親の勧めでB&G「体験クルーズ」小笠原に参加。高校1、2年時にはジュニアボランティアリーダーを務め、社会人になって1年が過ぎた今回はボランティアリーダーとして乗船した。現在、大学病院に看護師として勤務。

●谷中理矩(やなか りく)さん

平成5年生まれ、茨城県出身。小学4年生のときから、地元B&G茨城八千代海洋クラブで活動。小学6年生、中学2、3年生のときにB&G「体験クルーズ」小笠原に参加し、高校1年生になってジュニアボランティアリーダーを務めた。今回は、ボランティアリーダーとして乗船できる最後のチャンスとして手を挙げた。現在、千葉大学教育学部生涯教育課程に在学中。

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第1話船に酔ってもリーダーになりたい!(鈴木美香さん その1)

洋上の星空に感激

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今回のクルーズで、ワークショップの相談に応じる鈴木さん。これまでにメンバーやジュニアボランティアリーダーとして、さまざまな経験を積んできました

 群馬県の美しい高原地、みなかみ町で育った鈴木美香さん。小学生になると、地元の海洋センターに足を運ぶようになり、カヌーやキャンプの活動を楽しみました。

 「比較的活発な性格でアウトドアの遊びも好きでした。ですから、そんな私なら1人で船旅に出しても大丈夫だと思ったそうで、中学2年生のときに母親からB&G『体験クルーズ』への参加を勧められました」

 学校の友だちも応募したため、一緒に行けるから不安はないと思った鈴木さん。しかし、乗船してみると同郷の友は別の組になってしまい、生活をともにする班には、まったく知らない子どもしかいませんでした。

 「さすがに最初は戸惑いましたが、知らない者同士で船旅をともにすることが、このクルーズの良さでもあるわけです。時間が経つにつれて周囲の人たちと打ち解けていき、9年経ったいまでも連絡を取り合う仲の友人もできました」

 クルーズは順調に進み、復路の晩にスポーツデッキで実施された「洋上星空観察会」は格別の思い出になりました。

 「みなかみ町の星空もきれいですが、スポーツデッキの照明を消したとたん、それを上回る美しい空が360度のパノラマで広がっていたので、ため息が出てしまいました。このときの感動は忘れられません」

 新しい友との出会いや美しい星空の思い出など、いろいろな宝物を得ることができた鈴木さん。しかし、その一方で、復路ではとても辛い試練が待ち構えていました。

忘れられないリーダーのやさしさ

 美しい星空に感激した鈴木さんでしたが、翌日になると天気が崩れ始めてふじ丸が大きく揺れるようになりました。復路でも少し船酔いしましたが、復路の揺れは大きく、活発な性格の鈴木さんでも勝てないほど気分が悪くなってしまいました。

 「ワークショップをしながら酔ってしまい、力が出なくなってどうしようと思いましたが、そのときリーダーがやさしく対応してくれたので精神的に落ち着くことができました」

 リーダーに支えられながら航海を続けることができた鈴木さん。このときの経験が忘れられず、高校に入ると、ジュニアボランティアリーダーを2年続けて務めることになりました。

 「船酔いした私をやさしく見守ってくれたリーダーに見習い、今度は自分がメンバーの子どもたちの世話をしてあげたいと思いました。また船酔いするはずだと思いましたが、それよりもリーダーを務めたいという気持ちのほうが勝っていました」

年下でも頼れる班長さん

 船酔い覚悟でジュニアボランティアリーダーに手を挙げた鈴木さん。メンバーの最年長は中学3年生なので、高校1年生で乗ったときはメンバーとほとんど変わらない歳でリーダーの役目をこなすことになりました。

 「中学3年生の班長さんとは一学年しか違いませんから、最初はどのように接したらいいのか不安もありました。ジュニアボランティアリーダーを務める人は、皆、同じような戸惑いを最初に感じるのではないでしょうか。

 しかし、逆に考えれば班長さんのような最年長者は自分とあまり歳が違わないのですから、ともに力を合わせるべきなのです。実際、私がジュニアボランティアリーダーを務めたときの班長さんは、とても頼りになりました。班長としての責任を感じてくれていたのだと思います」

 船酔いした自分を支えてくれた年上のリーダーに憧れてジュニアボランティアリーダーを務めたものの、班長になった年下の子の頼もしさも発見することができた鈴木さん。お互いに手を携えながらいろいろなことを経験するクルーズが、さらに好きになっていきました。(※続きます)

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小学生の頃からカヌーやキャンプに親しんできた鈴木さん。寄港地ではメンバーと一緒にバディを組んで活動しました

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楽しいデッキランチで一気に仲間の輪が広がります。今回もたくさんのメンバーと仲良しになりました