水辺を学ぶ ヨット講座
小松一憲のヨット講座 オリンピック出場4回、2004年アテネオリンピック日本選手団監督
Lesson4 出艇の準備と乗艇
スロープを使った出艇の仕方や、乗艇時の服装について学びます。
(1) 乗艇時の服装
ヨットに乗る際は、昔から「晴れでも雨支度、夏でも冬支度」と言われています。濡れてもかまわない服装、濡れたり風に吹かれたりしても寒くならない服装を心掛けてください。靴に関しても、滑りにくく濡れてもかまわない運動靴やデッキシューズなどを選んでください。
写真のように、ウェットスーツやディンギーブーツを揃えることができたら完璧です。
また、ライフジャケットは必需品です。自分の体に合ったサイズを着用するとともに、腰ヒモやファスナーはしっかり結ぶようにしてください。
(2) スロープへのアプローチ
艤装した艇を船台に載せて運び、スロープを使って水面に下ろしてみましょう。
ここでは、比較的簡単にスロープから沖に向かうことができる、追い風を受けながらの出港を想定しています。
スロープまでの移動
艤装した艇を船台に載せて運ぶときは、必ずメインシート(セールの調整ロープ)をフリー(開放)にして、セールが旗めく状態(シバーと言います)にしておいてください。ラダーなどにメインシートを絡めたり、手でつかんだりしてブームの動きが阻害されると、旗めいていたセールが風をはらんでしまい、船台の上で艇が動いたり傾いたりしてしまいます。
バウ(船首)を風上に向けていると、セールはコクピットの中央に位置しながら小刻みに旗めきます(セールは風下に流れますが、このときコクピットはバウの風下になります)。 セールやブームがコクピットの真上にある状態(セールが閉じた状態)なら、船台の上に置かれた艇は非常に安定しています。
一方、艇が真横や後方から風を受けていると、セールはコクピットの外で旗めくために艇のバランスは悪くなり(セールが開いた状態)、風が強いときは艇が船台から落ちたり傾いたりするので注意してください。
写真:追い風を受けながらの出港。
後ろから風を受ける形なので、バウ(船首)は陸地の方を向き、セールは閉じた状態で沖に向かって旗めいています。
艇の進水
追い風を受けての出港なので、スターン(船尾)から水に浮かべていきます(向かい風の場合は、逆にバウからになります)。写真のように、十分な水深を取るまでラダーは跳ね上げた状態にしておき、センターボードも水中に下ろしません。
(3)乗艇の準備
浮力を利用しながら艇を船台から下ろしていき、船台から完全に離れて水面に浮いた状態になったら、メインシート(セール調整ロープ)がラダーなど他の艤装に絡んでいないかコクピット内を確認します。メインシートがラダーなどに絡んでいると、セールが風をはらんで傾斜(ヒール)したり勝手に走り出したりしてしまいます。
また、艇に乗り込んだときに自分の足や手に絡ませないためにも、コクピット内のメインシートの状態は確認しておく必要があります。
(4)乗艇
自分が乗り込める程度の深さまで艇を誘導し、セールが横風を受ける程度の位置までゆっくりとバウを沖に向けながら、一気に風上側から乗艇します。ためらったり、足を掛け損なったりすると艇はバランスを崩して傾斜し、その場で横転してしまうこともあるので注意してください。
(5)乗艇後の作業
艇に乗り込んだら、メインシートを足や手に絡めていないか確認し、ラダーのコントロールロープを緩めてラダーを下ろします。このとき、水深に注意してください。水深が浅いときは、下ろせる位置まででかまいません。十分な水深になってから完全に下ろしてください。
ラダーが下りたらティラー(舵柄)をしっかり握り、セールが風をはらむ程度までメインシートを引き込みます。すると艇は進み始めますので、ティラーを操 作しながら舵を切って沖に向かいます。このとき、一気にメインシートを引き込むと、艇は急発進してバランスを崩すので注意してください。セールの旗めきが収まる程度に引き込むだけで、艇は進み始めます。