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北本 忍さん
1977年生まれ。兵庫県出身。武庫川女子大学カヌー部に在籍後、富山県体育協会に就職。
その後、富山国体500mシングル優勝。アテネオリンピック500mフォア9位、北京オリンピック500mペア5位などを経て、2009年ワールドカップ第1戦500mシングルで優勝。翌2010年には日本人として初めて世界選手権大会200mシングル3位銅メダルを獲得。アジア大会200mシングルでも優勝を果たし、現在、ロンドンオリンピックをめざして活動中。
北京オリンピック後は、なかなか練習が進まず思い悩んだ日もあったという北本さん。しかし、得意の200mシングルがロンドンオリンピックの種目に加わったことが励みとなり、アジア大会で金銀銅3つのメダルを獲得するなど、数々の国際大会で大きな成果を獲得。ここにきて、いよいよロンドンへの道筋がはっきり見えるようになってきました。
「アジア大会では、肩が外れてほとんど力が入りませんでしたが、そんなピンチを乗り越えて優勝できたことが、大きな自信になりました。国際大会に出るようになった当初は、体格の大きな外国人選手に圧倒されましたが、いまは世界のトップの人たちと同じステージに立って競い合うことが楽しくて仕方がありません。ですから、もうロンドンしか見ていません」
世界のトップレベルの選手と渡り合えるようになったのは、カヌー先進国ルーマニアからやってきたコーチの力が大きいと語る北本さん。コーチは、常に海外の情報を北本さんに伝えるほか、海外遠征を積極的に組んで外国の選手との交流を深めてくれました。今年の冬もハワイで合宿を張り、暖かい場所で万全の調整を行っています。
「昔は冬でも日本で練習していましたから、この環境の違いは大きいです。いまは得意の200mシングルに重点を置いているので、走る距離を重ねる練習よりも短い距離で一気にパワーを出す練習に力を入れています」
スキルの質が上がると練習で漕ぐ本数が減っていくそうですが、少ない本数でも座る姿勢や手首の角度など細かい指示がコーチから出されるので、「いまのほうが、かえって疲れますね」と笑いながら答えた北本さん。その笑顔を通じて、ロンドンオリンピックに向けた大きな意気込みが伝わってきました。
一昨年、北本さんはナショナルチームの仲間とともに山梨県の精進湖で開催された「B&G杯全国少年少女カヌー大会2009」(以下、B&G杯)を訪れ、模擬レースやカヌーポロの模擬試合を披露してくれました。
「東欧などのカヌー先進国に行くと、川沿いにたくさんのカヌークラブがあり、日本でいうスイミングクラブに通うような感覚で多くの子どもたちがカヌーの練習に励んでいます。海外遠征に行っては、そんな光景を見てうらやましく思ったものですが、精進湖で同じような光景を見ることができてとても感激しました」
当日は、北本さんの地元富山県からも多くの子どもたちが参加。北本さんは、1つ1つのレースに大きな声援を送りました。
「地元の富山で教えているカヌークラブも出場するというので、B&G杯の観戦を楽しみにしていたのですが、いつも練習でふざけているような子でも真剣な眼差しでレースに出ていたので、『どんな子でも、がんばるときはがんばるんだな』と思って感心させられました」
そんな子どもたちに触発されて、北本さんもナショナルチームの仲間と一緒に力いっぱい模範走行を実施。世界レベルの圧倒的な速さに、全国から集まった子どもたちから大きな歓声が上がり続けました。
子どもたちには、自分もそうであったようにいろいろなスポーツを経験しながらカヌーを好きになって欲しいと語る北本さん。さまざまな経験を通して、自分に合ったスポーツと出合って欲しいそうです。
「私は、いろいろなスポーツを楽しみ、特にバレーボールに励んでいました。しかし、大学に入ってカヌーと出合うことで、陸のスポーツとはまったく異なる水上スポーツの虜になりました。それは経験して比べてみて初めて分かることだと思います。
カヌーのどんなところが好きになったかと言えば、余計な雑音が入らない自然のなかで思い切り体を動かすことの爽快感にほかありません。練習を終えて、ゆっくりと川面を漕ぎながら風に当たるときの気持ちは最高です」
北本さんは、そんなカヌーの魅力をより多くの子どもたちに体験して欲しいと語ります。
「陸のスポーツと違って、カヌーは日常的に乗る機会がなかなかないので、体験試乗会などを開いても、恥ずかしがったり怖がったりする子も少なくありません。ですから、そんな子の背中をちょっと押してあげる大人の努力が必要です。
ほとんどの子は、いったん水の上に出てしまえば、それまで臆していた気持ちを忘れて楽しく乗り始めます。チャレンジの先には、喜びが待っているわけです。ですから、大人の皆さんには、子どもたちを水の上に誘う工夫をいろいろ考えていただきたいと思います」
ちょっと背中を押してあげれば、多くの子どもたちが楽しく漕ぎ出すカヌー。そのなかから、世界をめざす後輩がたくさん出てくることを、北本さんは楽しみにしているそうです。(※完)