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北本 忍さん
1977年生まれ。兵庫県出身。武庫川女子大学カヌー部に在籍後、富山県体育協会に就職。
その後、富山国体500mシングル優勝。アテネオリンピック500mフォア9位、北京オリンピック500mペア5位などを経て、2009年ワールドカップ第1戦500mシングルで優勝。翌2010年には日本人として初めて世界選手権大会200mシングル3位銅メダルを獲得。アジア大会200mシングルでも優勝を果たし、現在、ロンドンオリンピックをめざして活動中。
子どもの頃からスポーツが大好きだった北本 忍さん。水泳やスキー、テニスと、いろいろな種目を楽しみましたが、なかでも小学3年生のときから始めたバレーボールに夢中になり、高校を卒業するまで部活を続けました。
そのため、地元の武庫川女子大学に進学した際もバレーボール部の門を叩きましたが、応対してくれた先輩からは厳しい返事が戻ってきました。
「プレーすることが好きでバレーボールを続けてきた私でしたが、思っていた以上に大学のレベルは高く、『楽しいだけでは無理、好きなだけではついていけない』と、きっぱり言われてしまいました」
そう言われたのに加え、あまり背が高くなかったことが気になってしまった北本さん。悩んだ末にバレーボールを諦め、ほかのスポーツ部をいろいろ見学するなかで目に止まったのがカヌー部でした。
「私にとって、バレーボール以外の種目はどれも初心者同然でした。そのため、中・高校時代から経験を積んだ新人が集まるいろいろなスポーツ部に比べ、大学から始める人が多いカヌー部はとても入りやすかったです」
新入生仲間と手を取り合って始めたカヌー。初心者ばかりのため、先輩たちもていねいに指導してくれました。
コツコツと練習を重ねてカヌーに乗れるようになると、すぐに試合が待っていました。初心者が多いことから、学連ではジュニアクラスという初心者だけを対象にした競技種目を設けていました。
「初心者を対象にしたクラスとはいえインカレのなかにも設けてあって、一般種目と同じように勝ち点が加算される仕組みになっています。ですから、私たち1年生も先輩方から大いに期待され、励まされました」
初心者でも試合に参加できて、母校のために勝ち点を稼ぐことができる。そんな環境に後押しされて練習に励んだ北本さん。その甲斐合って、インカレ・ジュニアクラスのシングルとペア両方で見事に優勝を果たすことができました。
「カヌーに乗れるようになるまでは自然のなかで遊ぶ感覚でしたが、勝つことの喜びを覚えてからはどんどん競技にのめり込んでいきました。幸いなことに、私たちの大学カヌー部は層が厚く、さまざまな選手がひしめいていたので、自分のスキルがレベルアップするたびに目標となる先輩が必ずいました」
次はあの先輩、その次はあの先輩と、目標にした選手のあとを追いながらしだいに成長していった北本さん。とうとう、4年生のときには国内選考を勝ち抜いてナショナルチームのメンバーに抜擢。カナダで開催された世界選手権大会に出場することになりました。
初めて出場した世界選手権大会は、外国の選手に圧倒されたまま終わってしまったと振り返る北本さん。しかし、その差を知ったことが次へのステップになっていきました。
「大学在学中、卒業後のことはほとんど考えていませんでしたが、世界レベルの試合を経験したことが励みにもなり、いざ卒業を迎えるとカヌーを続けたいという気持ちが芽生えていました」
北本さんは、誘いを受けた富山県体育協会に就職して住所も移転。卒業後に開催を控えた富山国体に向け、地元選手として練習に励みました。
「県代表の高校生たちと一緒になって、国体に向けて心を一つにしながら練習を重ねていきましたが、それはまさにインカレをめざして皆で一致団結したときとまったく同じ感覚でした」
学生生活を終えた後も、試合に向けて練習に励む喜びを得た北本さん。国体では成年女子フラットウォーターレーシング・カヤックシングル500mで優勝、同200mでも2位に入る活躍を見せました。
「国体で勝つことはできましたが、それは自信につながりませんでした。大学4年生のときに世界の壁を経験していたからです。しかし、大学時代に一緒に練習していた先輩がアトランタオリンピックに出場したことが、私を勇気づけてくれました。
私と同じ時間、同じメニューで練習した人がオリンピックに行くことができたのですから、ひょっとしたら私も努力すればオリンピックに行けるのではないかと思ったのです」
世界の壁は高いけれど、先輩の活躍を励みに自分も大きな夢を追ってみたいと思うようになった北本さん。国体が終わると、県の体協で働きながらオリンピック出場に向かって進んでいきました。(※続きます)