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矢掛町B&G海洋センター:平成3年(1991年)開設。県内の海洋センターでは初の温水プールを導入。町は健全財政で知られ、海洋センターも効率的な運営によって人口1万6000人の町にあって毎年4万人以上の利用者を記録し続けている。
昭和15年(1940年)生まれ。健全財政を確立した前町長を引き継ぎ、堅実な行政運営を継続。今年度からは、縦割りだった保健福祉とスポーツ事業を一体化した「100人健康スクール」の実施に力を入れている。
住民の高齢化が進む状況を踏まえ、4年前ほどから健康づくりを町の重点施策に掲げている矢掛町。現在、その一環として全町民を対象にした「100人健康スクール」が実施されており、そのプログラムの1つである水中ウォーキングが海洋センターの温水プールで行われています。
「100人健康とは、数え切れないほどたくさんの住民参加という意味で、普段から健康に関心のある老若男女を応援する、さまざまな活動プログラムが用意されています」
町づくりで大事なのは、こうしたソフト事業であると語る山野町長。プログラムに参加した住民すべてが何らかの満足度を肌で感じながら、行政との関わりを意識してくれるからだそうです。
「ハード事業の場合、家の前の道が整備されて恩恵を感じた人でも、遠く離れた場所にできた橋や道路に対しては、なかなかメリットを実感してくれません。
しかし、健康診断が良い例ですが、教育や福祉、環境などに関するソフト事業は、対象者すべてが個々に行政との関わりを感じながら高い満足度を示してくれます。ですから、どのようなソフト事業を展開するかによって住民の意識も変わります」
100人健康スクールでも、受講者は最初に必ず体力測定を受け、年間を通じたプログラムの進行に沿って体の変化をチェックしていきます。そのため、行政との関わりを保ちながら個々に受講の成果を実感していくことができます。
健康増進や介護予防などのソフト事業を展開する場合、プログラムを指導するスタッフの確保が大切です。
「このような事業では、スポーツ指導員をはじめ保健士や理学療法士、栄養士などの連携が必要になってきます。ところが、海洋センターは教育部局で、保健士は福祉課といったように、実際にはそれぞれの持ち場が縦割り組織で分かれています。ですから、お互いに事業の共通認識を持った上で、大胆に横の連携を組まねばなりません」
そのためには、全職員の意識改革が必要であると指摘する山野町長。矢掛町の場合は、各部署の意見調整を4年かけて行いながら、100人健康スクールを実現したそうです。
「これは、小さな町だからできたことだと思います。都会だったら役所の組織が大き過ぎて調整に大変だったと思います。しかし、たとえば学校1つ取っても最近では不登校児や発達障害児の対応などで、どうしても福祉課との連携が求められてきています。ですから、部署間の連携、スペシャリストの連携は時代の流れなのではないかと思います」
今年度の100人健康スクールの募集では、予想を超える200人近い受講者が詰め掛けましたが、どうしても途中で止めてしまう人や欠席が多い人も出ています。
「100%順調に行かなくても仕方がありません。しかし、なぜ途中で止めてしまったのか、何回来てから欠席が多くなったのかなど、調べておきたいデータはいろいろあり、それを履行することで今後につながります。
町の健康診断にしても、100%の人が受診するとは限りません。しかし、もし今年が40%だったら、なぜその数字になったのかを分析して来年は50%にしようといった目標を置いて努力すべきです。それをしなければ、来年以降も同じような数字で推移していきます」
国が掲げている特定健診(生活習慣病予防健診)の受診率目標は65%。それに対する昨年度の全国平均は36%ほどで、岡山県全体では28.9%でしたが、矢掛町では40%だった一昨年度の反省を踏まえて努力目標を掲げ、昨年度は50%を達成することができました。
「4年間かけて役所内の意識改革を進め、いまでは各部署とも横の連携を図りながら町の健康づくりに励んでいます。ですから、次は住民の意識を少しずつ変えてきたいと思っています。これは健康づくりというよりも、住民参加の町づくりにつながります。
もはや、住民が何かを要望し、それに行政が対処するだけの時代ではありません。健康づくりが進んで医療費や介護給付費が減ったら、その予算をゴミ処理の無料化に回そうといった協働の町づくりをめざしたいと思います」
健康づくりの事業を通じて、住民と行政の一体感を作っていきたいと語る山野町長。大規模改修を終えた海洋センターは、さまざまな施策を打つ拠点の1つとして大きな期待が寄せられています。(※完)