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すべての住民に健康の喜びを知ってもらいたい〜海洋センターを活用しながら健康増進事業に取り組む岡山県矢掛町〜


注目の人
矢掛町
B&G海洋センター
(岡山県)


矢掛町B&G海洋センター:平成3年(1991年)開設。県内の海洋センターでは初の温水プールを導入。町は健全財政で知られ、海洋センターも効率的な運営によって人口1万6000人の町にあって毎年4万人以上の利用者を記録し続けている。


 徹底的に無駄を省いた行政運営によって、健全財政の道を歩み続けている岡山県矢掛町。図書館などの公共施設も効率経営のもとで高い利用率を維持しており、平成3年に開設された矢掛町B&G海洋センターの温水プールも、人口1万6000人の町にあって毎年4万人以上の利用者を集めて活況を呈しています。
  「スポーツ施設という先入観を捨て、これからの海洋センターでは住民の健康増進といった福祉関連事業も積極的に展開していきたい」と語る山野通彦 町長。これには、自ら膝痛を克服してトライアスロン大会に出るほど元気になった武 泰稔 教育長も大いに賛同。町ではいま、健全財政をにらんだ医療費、介護費の低減をめざし、あらゆる住民を対象にした「100人健康スクール」という健康づくり事業を推進しています。
 今回は、「健康のありがたさを住民に伝えたい」と語る武教育長を第1〜2話でご紹介し、第3〜4話で「町の将来を支える健康増進事業に期待を寄せたい」と語る山野町長をご紹介いたします。

第3話:施設の有効利用をめざして

写真:山野通彦 町長

語り:山野通彦 町長

昭和15年(1940年)生まれ。健全財政を確立した前町長を引き継ぎ、堅実な行政運営を継続。今年度からは、縦割りだった保健福祉とスポーツ事業を一体化した「100人健康スクール」の実施に力を入れている。

写真:海洋センター周辺を清掃している地元小学生たち
海洋センターの周辺をボランティアで清掃する地元の小学生。矢掛町の公共施設は、多くの住民に支えられながら効率的な運用が続けられています

写真:スポーツ少年団の結団式であいさつに立つ山野町長
スポーツ少年団の結団式であいさつに立つ山野町長。海洋センター誘致の際は町の担当職員として何度も東京に足を運び、温水プールの必要性をアピールしました

省きたい無駄

 徹底して無駄のない行政運営に励み、健全財政の町として知られている岡山県矢掛町。図書館や文化センターといった町内の公共施設においても効率的な運用が続けられ、高い利用率を維持しています。

 「この町では、昔から節約が浸透しています。ですから、公共施設を作る際も住民から過度な要求が出ることはありません。図書館や文化センターの利用率が高いのは、身分不相応に大きな建物を建てず、地域の人たちが使いやすい手頃な規模に抑えたからだと思います。大きな図書館を利用したいときは、車で30分のところにある倉敷市や福山市といった都会に行けば良いのです」

 役割分担を考えて無駄を省くことで、公共施設の健全運営を図ってきたと語る山野町長。海洋センターも、人口1万6000人の町で温水プールは年間4万人もの利用者で賑わっています。

 「海洋センターができた平成3年当時、町には社会体育施設がありませんでした。どうしたいいか町内でいろいろ協議するなかで、『それならB&G財団にお願いしてみたらどうか』という意見が出て、町をあげて誘致に力を入れました」

 当時、町の職員として海洋センター事業に関わり、誘致にあたって何度も東京に足を運んだ山野町長。具体的に、どのような施設をつくったら町のためになるのかを考えるなかで浮かんだのが、温水プールの必要性でした。

温水へのこだわり

写真:上屋温水プールで遊ぶ子どもたち
県下の海洋センターでは初めてとなる上屋温水プールが実現。オープン以来、年間4万人ほどの利用者で賑わい続けています

 海洋センターを誘致した当時、矢掛町の近隣市町ならびに、すでに開設されていた県内の各海洋センターに温水プールはありませんでした。そのため、ここに温水プールを作れば町外の利用者もかなり呼び込めることが予想され、冬でも利用できることから年間を通じた運用によって多くの集客が期待できます。町の関係者は、そのような構想のもとで温水プールにこだわりました。

 「貴重なプールを小さな町に作っていただくのですから、運用実績を上げて期待に応えなければなりません。私たちは公共施設に贅沢は求めませんが、運用面で必要なものは考えます。目的があって作る公共施設なのですから、利用する手立てを打たねば単なるハコ物に終わってしまいます」

 平成3年、そんな思いが叶って県下の海洋センターでは初めてとなる上屋温水プールが誕生。月曜の定休日以外は夜10時まで開く運営努力を続けながら、毎年ほぼ横一線で年間4万人前後の利用者数を記録し続けています。

 また、そんな同町の取り組みが注目され、以後、岡山県内に開設された全ての海洋センターに温水プールが導入されました。


これから歩むべき道

 人口1万6000人の町で、年間4万人の利用者で賑わう海洋センターのプール。これは、ひとえに最初の段階で温水化にこだわった成果でしたが、これから先は時代の変化に応じて多様な利用形態が求められていくと山野町長は考えています。

写真:水中ウォーキング教室の模様
水中ウォーキング教室に集まった成人利用者の皆さん。海洋センターでは、スポーツだけでなく健康を目的としたソフト事業も積極的に展開しています

 「幸いにも、これまでは温水プールというハード面の力で利用者を集めてきましたが、今後はソフト面の充実がより一層求められていきます。なぜかと言えば、住民の高齢化が進むなかで、健康増進や介護予防に関するプログラムが求められていくからです」

 スポーツとして泳ぐだけでなく、水中ウォーキングのような健康を目的としたソフト事業を積極的に導入していかねばならいと語る山野町長。それは矢掛町に限らず、全国の海洋センターに問われている共通のテーマだと言います。

 「私たちの町では、4年ほど前から健康づくりを町の重点施策として取り組んでいます。大きな目で見れば、住民の健康増進事業は医療ならびに介護給付費の削減につながり、ひいては住民が負担する国民健康保険料の低減にもつながります」

 健康増進事業は行政、住民双方にとってメリットがあると語る山野町長。時代の流れを受けながら、海洋センターも新たな役割を担っていくそうです。(※続きます)