本文へ 財団法人ブルーシー・アンド・グリーンランド財団 サイトマップ
HOME B&G財団とは プレスリリース イベント情報 全国のB&G リンク集

すべての住民に健康の喜びを知ってもらいたい〜海洋センターを活用しながら健康増進事業に取り組む岡山県矢掛町〜


注目の人
矢掛町
B&G海洋センター
(岡山県)


矢掛町B&G海洋センター:平成3年(1991年)開設。県内の海洋センターでは初の温水プールを導入。町は健全財政で知られ、海洋センターも効率的な運営によって人口1万6000人の町にあって毎年4万人以上の利用者を記録し続けている。


 徹底的に無駄を省いた行政運営によって、健全財政の道を歩み続けている岡山県矢掛町。図書館などの公共施設も効率経営のもとで高い利用率を維持しており、平成3年に開設された矢掛町B&G海洋センターの温水プールも、人口1万6000人の町にあって毎年4万人以上の利用者を集めて活況を呈しています。
  「スポーツ施設という先入観を捨て、これからの海洋センターでは住民の健康増進といった福祉関連事業も積極的に展開していきたい」と語る山野通彦 町長。これには、自ら膝痛を克服してトライアスロン大会に出るほど元気になった武 泰稔 教育長も大いに賛同。町ではいま、健全財政をにらんだ医療費、介護費の低減をめざし、あらゆる住民を対象にした「100人健康スクール」という健康づくり事業を推進しています。
 今回は、「健康のありがたさを住民に伝えたい」と語る武教育長を第1〜2話でご紹介し、第3〜4話で「町の将来を支える健康増進事業に期待を寄せたい」と語る山野町長をご紹介いたします。

第1話:スポーツとの再会

写真:武 泰稔 教育長

武 泰稔 教育長

昭和15年(1940年)生まれ。公立小中学校教諭、校長、モスクワ日本人学校教諭、岡山県教育庁勤務などを経て、平成17年度から矢掛町教育委員会教育長。膝痛を克服してフルマラソンやトライアスロンに挑戦した経験から、海洋センターを核とした生涯スポーツ事業に期待を寄せている。


社会に出てから猛勉強

写真:駅伝大会で挨拶に立つ武教育長
住民参加の駅伝大会で挨拶に立つ武教育長。さまざまな教育関係の職を経て、平成17年からは郷里に戻って教育委員会の仕事に励んでいます

 終戦直後の少年期を郷里の矢掛町で過ごした武教育長。体が大きかったことから、兼業農家を営む家の仕事を大人並に手伝いました。

 「飼っていた牛を川原に連れていって、草を食べさせることも大切な仕事でした。また、そのような時、仲間と草野球に夢中になってしまい、牛が田んぼの稲を食べていることに気づかず、厳しく叱られたこともありました(笑)」

 活発な少年時代を過ごした武教育長。中学・高校時代には、柔道やバスケットボール、テニス、サイクリングと、手当たりしだいにスポーツを楽しんだそうです。

 「当時は、スポーツが好きで勉強は大嫌いだったのですが(笑)、親が勧めるままに何となく教員になってしまいました。しかし、中学校社会科の教員になってからは教員の魅力を実感し、とても勉強したくなりました。教育の現場に立って、こうしたらいいと思うことが全て本に書いてあるので、それならしっかり本を読んで知識を身につけようと思ったのです」

 30歳頃を境に、教員をしながら猛烈に勉強するようになった武教育長。35〜37歳にかけてモスクワの日本人学校で経験を積んだ後、40歳で大学院に入って教育経営を専攻。その後、岡山県教育庁職員を経て小学校の校長を務めました。

 そして、定年後は福武教育振興財団で岡山県内の先生方に教育研究の助成をする仕事に従事しましたが、平成17年、健全財政を進めていた矢掛町の前町長から強い要請を受けて財団を辞め、郷里の教育長に就任しました。


走る喜び、泳ぐ楽しさ

 根っからスポーツ好きだった武教育長は、大学に入ってから登山に熱中。社会人になってからもさまざまな山に挑み続けましたが、トレーニング不足から20代半ばで膝を痛めてしまいました。

 「歩くのもままならないほど膝の具合が悪化したので、スポーツはすべて諦めてしまいました。すると、50歳頃になって『このままでは生活習慣病になる。もっと体を動かして体重を減らしなさい』と医者から忠告されてしまいました」

 武教育長は、スポーツジムを勧められて通うことに。膝に負担が掛からないように、長いスパンで体重を下げるメニューを作ってもらって努力を重ねると、しだいに効果が表れました。

 「体重が下がるたびに少しずつ足が軽くなり、体を動かすごとに筋力がついて膝が痛くなくなっていきました」

 しだいに走ることができるようになり、数年後にはジョギング大会に出場するまでに回復。
やがて何度かハーフマラソンの大会に出た後、とうとう59歳の秋にはホノルルマラソンに挑戦。見事に完走して大きな自信を得ることができました。

写真:矢掛町恒例のハーフマラソンを元気に走る武教育長
矢掛町恒例のハーフマラソンを元気に走る武教育長。このときは1時間50分で走り切りました

 「極めつけは、ホノルルマラソンから戻った後にプールで水に入ったときの体験でした。力を抜いて浮かぶだけで、無重力の空間にいるような何ともいえない心地良さを感じました。そのため、60前の手習いでしたが基本から水泳を習い始め、毎日プールに通って数カ月後には3キロぐらい泳げるようになりました」

 そうなると周囲が黙っていませんでした。勤めていた小学校のPTAや同僚から、定年退職の記念にロードレーサー(競技用自転車)がプレゼントされ、皆からトライアスロンの大会に出ることを勧められました。

 「退職した夏に倉敷市で大会があったので出場してみたら、なんと60歳以上のクラスで2位になることができました。入賞できるなんて思っていませんでしたから、メダルを授与されたときには感無量でした」


スポーツの環境を整えたい

 定年退職後、財団勤務を経て矢掛町に戻った武教育長は、文部科学省の研究委託を受けて学校評価の研究に努めるほか、不登校や学力不足の児童対策などに力を発揮。また、膝痛を克服した自らの経験をもとにスポーツ事業にも強い関心を寄せました。

 「中学の部活は学校教育ですが、矢掛町ではそれをなんとか社会体育に位置づけられないか考えました。小学生のスポーツ少年団から中学高校の部活、そして社会人、高齢者までを含んだ、一貫性のあるスポーツ環境を地域に整えたいと思ったのです」

写真:海洋センターの温水プール
地域スポーツの拠点として武教育長が期待を寄せている海洋センターの温水プール。人口1万6000人ほどの町で年間4万人もの利用者で賑わっています

 その思いを胸に、県内外のいろいろな地域スポーツクラブを視察して歩いた武教育長。現在、事業化に向けた検討を進めるなかで、海洋センターに大きな期待を寄せています。

 「私どもの海洋センターは、派手な事業はしていませんが、さまざまな年齢の住民ニーズに上手く対応しながら収まりの良い運営を続けています。そのため、1万6000人ほどの町で年間4万人ものプール利用者を数えており、まさに地域に根差した生涯スポーツの拠点として機能しています」

 自らも海洋センターに通って水泳を楽しんでいるという武教育長。年齢を問わず誰もが利用できる海洋センターは、地域スポーツを考えるうえで欠かせない存在になっているそうです。(※続きます)