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プールの有効利用で、地域の健康を守りたい〜30年以上にわたって水泳の普及に努めている、府中市B&G海洋センター(広島県)〜


注目の人
府中市
B&G海洋センター・クラブ
(広島県)


府中市B&G海洋センター:昭和52年(1977年)、第1期海洋センターとして市内を流れる芦田川沿いに艇庫と屋内温水プールを開設。
おもに水泳教室事業に力を注ぎ、FSC(府中スイミングクラブ)の名で数々の大会に出場。これまでに、JOCジュニアオリンピック10回出場、B&G財団の「ウォーターマラソン」に5年連続参加。
水泳のほかにも、指導者会が中心になってカヌーの普及活動にも励んでおり、平成17年度にはプールの一部バリアフリー化を含む大規模改修を実施した。


 広島県東部に位置する内陸のまち府中市に、第1期海洋センターとして屋内温水プール、艇庫が開設されたのは昭和52年(1977年)のことでした。 「第1期ということもあって海洋センターについて知らない人が多く、『ここは内陸で水との縁が少ないから、プールを作っても関心が集まらないのではないか』と言う人もいました」と石山 巌、現センター所長。
  ところが、スタッフの努力によって、しだいに水泳教室の事業が地域に定着。水泳に熱心な大越利夫さんが勤務するようになってからは、全国大会で活躍する選手を輩出するようになり、地元のメディアからも注目されるようになっていきました。
 「これからは、高齢者の健康づくりや幼児教育などにも積極的にプールを利用していきたいです」と語る大越さん。平成17年度に大規模改修を行い、バリアフリー化を進めた新たなプールにはいま、さらなる期待が寄せられています。

最終話:新たな事業をめざして

学校との連携

写真:プールのスタート台で泳ぎを指導する大越さん
地元の小学校で水泳の指導にあたる大越さん。スタート台を使って泳ぎの姿勢を説明しています

 選手と一緒に市長を表敬訪問するなどしながら、地域に水泳への理解を広めてきた大越さん。その活動の輪は海洋センターの外にも拡大し、昨年度からは地元の小学校に講師として出向いて水泳の授業をサポートしています。

 「多くの先生が授業で水泳をどのように教えていいか悩んでおり、カリキュラムをこなすために苦労しています。そのような声を耳にしたため、こちらから学校に出向いて授業の進め方についてプレゼンテーションをさせていただきました」

 大越さんは、どのようにしてカリキュラムを進めたらいいか具体的な指導内容を提案するとともに、海洋センターの活動に取り入れている水辺の安全指導なども紹介。先生方の意見を聞きながら話を進め、最終的には大越さんたち海洋センターのスタッフが外部講師として学校のプールに出向いて、子どもたちを直接指導することになりました。

写真:バタ足の練習をする子どもたち
海洋センター・スタッフの指導のもとで、バタ足の練習に励む地元小学校の子どもたち。昨年度に続き、今年度も同校から水泳指導の依頼を受けています

 「私たちはプロの指導者なのだから、生徒全員が泳げるまで教える気持ちで行ってこいと言って大越君たちを送り出しました。後日、子どもたちから『楽しかった』、『がんばることができました』などと書かれた感想文が数多く届き、先生方からも、『いままでできなかったことをしてもらえた』、『どのように教えたらいいのか、よく分かりました』といった評価をいただくことができました」と石山所長。

 大越さんたちの授業は地元のテレビがニュースで取り上げたため、それを観た他の小学校からも高い関心が寄せられました。また、実際に授業を行った学校では、今年度も続けて行うことが決定。先生方から大きな期待が寄せられています。

 「昨年実施した際、先生方は私たちが指導する様子をつぶさに見学しながら、『この場合は、こういう声かけで教えるわけですね』などと、いろいろ質問してくださいました。先生方には、この経験で学んだことを他の学校に異動した際にも活かしていただけたらうれしいですね」

 このような授業を通じて、少しでも水泳の底辺を広げたいと語る大越さん。学校の先生方が水泳に関心を寄せてくれたら、それはとても大きな力になっていくはずです。


写真:椅子に座って体操をする高齢者の皆さん
海洋センターで「転倒・寝たきり予防プログラム」に参加する高齢者の皆さん。時代の流れに即して、高齢者向けの教室が増えつつあります

写真:障害者向けトイレ、シャワー室
平成17年の大規模改修で実現した障害者向けのトイレ、シャワー室。このほか、プールに向かう階段を斜路に変更するなど、さまざまなバリアフリー化が図られました

大規模改修後のテーマ

 活発な活動を展開する海洋センター。平成17年度にはプールの一部バリアフリー化を含む、大規模改修を行いました。

 「バリアフリー化を進めたのは、特に今後増えるであろう高齢者の利用を考えての対策です。これまでは青少年向けの事業が中心になりがちでしたが、少子高齢化が進む社会の変化に海洋センターも柔軟に対応していかねばなりません」

 海洋センターでは、すでに10年前から水中ウォーキングを取り入れた腰痛予防コースを展開。長年の成果は著しく、『プールに通って健康を取り戻した』、『風邪を引かなくなった』といった高齢者の声が後を絶ちません。

 「プールに通う効果が口コミで広がり、いまでは医者から『海洋センターのプールに通え』とアドバイスされるお年寄りもよく見かけます。このような状況があるため、バリアフリー化を含む大規模改修ができて本当に良かったと思っています」

 JOCジュニアオリンピックに何度も出場するほか、地元の小学校に出向いて水泳の授業をサポートするなど、常に地域の関心を集めてきた府中市B&G海洋センター。石山所長はじめ大越さんたちスタッフは、大規模改修によって生まれ変わった施設に、さらなる事業展開の夢を託して日々の仕事に励んでいます。(※完了)


写真:佐野君と大越さん
JOCジュニアオリンピック選手として活躍する佐野駿平君(手前)と、長年に渡って佐野君の成長を見守り続けている大越さん

プールに通って水泳以外のこともたくさん学びました。JOCジュニアオリンピック選手:佐野駿平君(中2)

取材当日は、昨年のJOCジュニアオリンピック春季大会50m平泳ぎで8位入賞を果たした佐野駿平君も練習に来ていましたので、いくつか質問させていただきました。

いつ頃から、どんなきっかけで水泳を始めたのですか。

 保育所に入ってから、姉や兄に連れられて海洋センターに通うようになりました。最初は競泳というより、体づくりが目的でした。

競泳が好きになっていった理由は?

 小学生になってタイムを取るようになると、同じ年齢でたくさんのライバルがいることが分かり、皆に負けないように記録を伸ばしていくことがおもしろくなりました。また、コーチがとても熱心に教えてくれるうえ、大会に出ると大勢の人が応援してくれるので、やり甲斐を感じていきました。

練習がきついと思うことはありませんか。

 辛いと感じることはありますが、コーチや仲間に励まされると元気が戻ります。だから、水泳を通じて人と触れ合うことの大切さを学びました。FSCでは礼儀を重んじており、幼い頃からあいさつをしっかりするように教わりましたが、大会に出るようになってその意味が分かるようになりました。あいさつができなければ、知らない人と話をすることができないからです。また、テレビを観ていても北島康介選手をはじめ有名な選手、コーチは皆、礼儀正しいですから、自分もそうしなければ良い選手になれないなと思っています。

将来の目標を聞かせてください

 まずは、ジュニアオリンピックで良い成績を出したいです。そして、中学を出たら大学をめざして勉強をしながら国体に出場できたらいいなと思います。その先のことはあまり考えていませんが、小学生のときに憧れた先生がいたので、できれば教育関係の仕事に進みたいと思います。

 水泳の練習、そして勉強に大いに励んでください。お話ありがとうございました。