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人と触れ合う喜びを、人生の糧にしていきたい 心豊かなスローライフをめざす、女優でB&G財団理事の岸ユキさん


岸 ユキ 理事注目の人
岸 ユキ 理事


 兵庫県芦屋市出身。神戸松蔭女子学院短期大学卒。西野バレエ団に所属しながら関西地区のテレビ、ラジオ出演を経て、21歳で女優デビュー。絵画活動にも励み、二科展入選のほか、2009年度「政経文化画人展」内閣総理大臣賞受賞。農林水産省、国土交通省関係を中心に公職も多数経験。現在、B&G財団理事。農業に関心が高く、休日には山梨県韮崎市郊外の農地で作物づくりに励んでいる。


 1969年、青春テレビドラマ「サインはV」で女優デビューした岸ユキさん。その後は、テレビや映画に出演する傍ら、二科展に絵画を出展するなどして多彩な創作活動を展開し、やがて農村を訪ね歩くテレビ番組のレポーターなどを務めたことで、農業に大きな関心を抱くようになりました。
 いまから18年前には山梨県韮崎市郊外の農地に家を建て、以後、休日のたびに夫婦で農作業に励むようになった岸ユキさん。目的は野菜作りだけでなく、近隣の人たちとの心を開いた交流にあるそうです。
 今回は、B&G財団の理事をはじめ数々の要職をこなしながら、週末には田舎でスローライフを楽しむ岸ユキさんにスポットを当て、仕事や暮らしに関する話題のほか、海洋センターで働く皆さんへのメッセージなどを語っていただきました。

最終話:身近な言葉で、B&Gプランを伝えよう

海から日本を見てみよう

写真:母屋の隣に建てられた作業小屋
母屋の隣に建てられた作業小屋。岸さん夫妻にとって、ここは農作業に使う道具が収められた夢の空間です

写真:農作業道具
作業小屋の棚にはスキやクワ、シャベルなどが整然と並べられていました。動力に頼らないので、農作業時にはこれらの道具が主役を演じます

 農作業を通じて生きる力を養い、作物が育った喜びを周囲と分かち合うことで人の輪を広げていく岸さん。こうした行動力は、さまざまな公職に就くことでも活かされていきました。

 これまでに岸さんが就任した公職を挙げると、「農林水産省村づくり塾百人委員会」、「環境省中央環境審議会水質部会」といった農業関係や環境関係の仕事に加え、「海上保安教育援助基金運営委員会」や、「海上安全船員教育審議会」、そして「海上保安庁友の会」など、海に関係する仕事も多く、現在はB&G財団理事にも就いていただいています。

 「いまから20年ほど前の話になりますが、当時の海上保安庁長官と対談させていただいたことがきっかけになって、海関係の公職をお引き受けする機会が多くなっていきました。

 この対談で、長官がとても分かりやすく海上保安庁のことを説明してくださったので、後日、興味が湧いて観閲式に足を運んでみたのですが、いろいろなことに感激してしまいました。

 まずは、船に乗っていた職員の皆さんです。海に出て潮風に吹かれているためか、爽やかな人ばかりで、ひと昔前の日本男児を見ているような印象を受けました。聞けば、海に出ると食べることが唯一の楽しみのため、船乗りは食にこだわる人が多いとのこと。農作物に関心のある私にとっては、とても親しく感じました。

 また、観閲式が行われた海域を整然と列を組んで進む多くの巡視船の姿を見て、大きな感動を覚えました。小学4年生のときに遠泳大会で沖に出て、幼いながらにも日本が海の国であることを実感したように、このときも日本が海洋国家であることを再認識することができました」

 観閲式に出席したことで、農業とは違った側面の日本が見えたと語る岸さん。自分がそうであったように、多くの人に海から国土を見て日本という国を考えてみて欲しいと述べました。

教育の原点

写真:竹の炭
竹の炭もたくさん保存されていました。炭で火を起こし、自然に水が湧き出ている場所をご存知なので、電気や水道といった生活インフラが急に止まっても、しばらくは生活できるそうです

写真:切り株
裏庭に並んでいた切り株にはムシロがかけられていました。これからはシイタケ作りを試したいそうです

 海上保安庁の仕事に関心を寄せた岸さんは、その後、旧運輸省関係の公職を多数引き受け、(財)日本海事広報協会の仕事を通じてB&G財団の理事にも就任していただきました。

 「理事職をお引き受けして今年で6年が過ぎましたが、この間、さまざまな事業に関わらせていただきました。特に、沖縄で指導者養成研修を見させていただいことが大きな印象として残っています。

 多くの皆さんがご存知のように、この研修ではあいさつを基本に規律ある生活のなかで、さまざまな勉強が行われていきます。学ぶものはバレエと異なりますが、礼儀と節度の大切さは共通しています。

 なぜ、これらが共通しているのかといえば、物事を教える組織、機関には必ず教育の原点が求められるからです。教育の原点とは、すなわち礼儀と節度であり、逆に言えばここから教育が始まると言えるのです。

 ですから、あいさつの大切さから入るこの研修をひと目見ただけで、『ああ、ここでは真剣に人を育てている』と実感することができました。

身近な人にPRしよう

 現在、B&G財団では岸さんに“B&G広報大賞”の審査委員長を務めていただいています。この賞は、各海洋センター・クラブが年間を通じて行った広報活動(テレビ、新聞、雑誌等への事業・イベント報告)を評価し、優秀な作品(番組、記事等)を表彰するものです。

 「広報大賞は、海洋センターで働く人たち、海洋クラブで活動する人たちが、自らの活動を他人に知っていただく事などPRすることの大切さを知る、とても良い機会です。ですから、この賞を生んだアイデア自体がすばらしいと思います」

 広報大賞をめざして出展される作品は、テレビで取り上げられたニュース映像や新聞などの切り抜き記事などですが、こうしたメディアへの露出もさることながら、普段できる身近なPRも忘れないでほしいと、岸さんは指摘します。

 「海洋センターに勤める人はB&Gプランを十分に理解していることと思いますが、このすばらしい精神を広めるためには、身近な人たちに伝える努力も大切です。

写真:農作業に励む岸さん
地元の人たちとの交流を楽しみながら農作業に励む岸さん。B&Gプランを広める鍵も、身近な人たちとの交流にあると語っていました

 テレビや新聞などで説明するには露出に限りがありますし、ついつい固い口調、背伸びした言葉になりがちです。でも、相手が身近な人なら気軽に話せるうえ、テレビのような時間的な制約もありません。

 背伸びをせずに、子どもや親、ご近所などに自分の言葉で自分の仕事を説明することが、広報の始まりなのではないかなと思います。意志の伝達に必要な最たる道具は言葉ですから、標準語にこだわらず、方言なども使っても良いのではないでしょうか。

 36年前に考え出されたB&Gプランを、これから先に伝承してくためにも、どんどん身近な人たちに身近な言葉で語りかけてほしいと思います」

 普段使う言葉には、大きな説得力が秘められていると語る岸さん。女優や画家、さまざまな公職に就いた豊富な経験をもとに、これからもいろいろな知恵を私たちに授けていただきたいと思います。(※完)