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育成士会が切り開いた、地域海洋センターの将来

地域海洋センターの指定管理者になった、山東B&G育成士会の活動

多くの自治体が経費削減に努め、市町村合併を通じて業務の再編に力を入れる昨今、これから先の運営・管理のあり方を巡って、さまざまな意見が出されている地域海洋センターも少なくありません。旧山東町B&G海洋センター(滋賀県)も、平成17年に3つの町が合併した米原市の管轄になってから運営・管理のあり方が見直され、「指定管理者を公募して、受け皿が見つからなかったら閉鎖もやむなし」の声も聞かれるようになりました。

 そこで危機感を募らせた有志の指導者や海洋センターの旧職員が、法人格の山東B&G育成士会を立ち上げ、市と交渉。その結果、同会が今年度から指定管理者として海洋センターの運営・管理に直接携わることになりました。まだ、いろいろな課題が残されているそうですが、新たなスタートを切った海洋センターの活動に、地域の人々は大きな期待を寄せています。


 米原市山東B&G海洋センター

琵琶湖の北東部に位置する旧山東町に、昭和58年(1983年)開設。町職員1ないし2名に加え、B&G指導者資格を持つ一般町民8名の有志によって、屋内プール、体育館の活動を展開。平成17年に周辺2町と合併して米原市になった後、今年度から以前のスタッフや有志8名の指導者による山東B&G育成士会が、指定管理者となって運営・管理に携わっている。
センター外観
第4話:手探りのスタート

試される手腕

プールでの活動一例 水中チャレンジゲームを楽しむ子どもたち。長年にわたって、海洋センターは地域における水泳の普及に力を注いできました
 海洋センターの事情に詳しい心強い常勤スタッフを迎え入れることができた、山東B&G育成士会。いよいよ今年4月から、指定管理契約に基づいて海洋センターの運営実務が開始されましたが、月日が過ぎるなかで細かい悩みも出てくるようになりました。

 「まず困ったのは、修繕の必要な個所がいろいろ出てきてしまったことです。大きな修繕の必要がない状態で施設を受け渡してもらったはずだったのですが、実際には細かい所で手を入れる必要が出てきてしまい、それが思わぬ出費になっています」

 体育館の天井に折り畳んで収納するバスケットボールのゴールポストも、指定管理に移行してから具合が悪くなってしまい、修理を見積りしたところ約30万円もかかることが判明。大規模な修繕に関しては市が相談に応じる契約になっていたので、さっそく交渉することにしましたが、日常的に発生する修理については自分たちで解決していかねばなりません。

カーリングゲーム いま、一番人気のあるゲームはユニカール(地上のカーリング)。もっと道具を揃えて普及に力を入れたいそうです
 「本来なら、余ったお金を積み立てておいて必要なときに使うといった知恵が出てくるところですが、運営経費に関しては年度末に清算して、余ったら市に返却しなければならない取り決めになっています。ですから、今後のために貯金しておこうという話は一切できません。

  また、修理に関する悩み以外にも、備品の買い替えといった問題も出てきています。ラケットにしてもボールにしても、古くなったら取り替えたくなるものです。人気が出てきているユニカールについて言えば、もっと道具を増やして普及に力を入れたいところです」

 体育館にしてもプールにしても、より多くの地域の人たちに利用してもらわなければ意味がありません。限られた予算をやり繰りしながらどのような運営管理ができるか、とても厳しい条件のなかで山東B&G育成士会の人たちの手腕が問われています。


再認識したい施設の公共性

剣舞 体育館で剣舞を習う子。海洋センターは、地域におけるさまざまなスポーツ・文化活動の拠点として広く利用されています
 あらかじめ分かってはいたものの、実際にやり繰りしてみて大変に感じたのが税金の支払いでした。事業を行う法人として活動している以上、山東B&G育成士会は法人税など必要な税金を支払わなければなりません。

 「税金の支払いを含めての予算になっていますが、法人税は大きな出費です。それが気にならないほど事業収益を上げることができれば一番いいのですが、現状でそれはとても望めません。利益を上げようと努力しても、中途半端に利益を出してしまうと税額が上がって自分たちの首を絞めてしまう結果にもなってしまいます。

 ですから、いまのところは赤字になるかならないかといった、ギリギリの経営が求められており、たとえ収益をほとんど出さなくても、いくらかの法人税は課せられます」

 利益を出したくても出せない状況にあるという、山東B&G育成士会。何らかの出費を抑えて、それを税金に回すというやり繰りが続けられており、金融機関への振込み手数料さえも節約したい気持ちになるそうです。

 「現在の利用規定を変えないかぎり、施設の運営で利益を出すことはほとんどありません。プールも体育館も公共施設として長らく無料の時代が続き、市制に移行するにあたって、やっと中学生以下100円(大人は200円)のプール利用料金が定められたところです。

 それでも、この有料化は大変でした。たった100円と思いがちですが、従来タダだったものが有料になるというだけで、多くの住民からクレームが寄せられたものです。

プール外観 米原市山東B&G海洋センターのプール施設。地元小中学校の水泳授業も担っています

 しかし、考えてみれば海洋センターのプールは昔から学校の授業で利用されています。もし、各学校が自前のプールで授業をするとなれば相当の経費が必要ですから、それに見合うだけの経費が運営予算に加味されてもいいのではないかなとも思います。

 体育館内のマルチルーム(多目的室)にしても、学校の美術展に利用されたり、自治会などで利用されたりしていますが、光熱費として時間あたり200円をいただいているに過ぎません。

 このようなことを整理していくと、いかに海洋センターが地域で大きな役割を演じているかが分かります。皆の公共財産として地域に根ざした施設になっているのです」

 公共性の高さを市は十分に理解してほしいと語る、山東B&G育成士会の皆さん。利益を上げることができないギリギリの経営を続けながらも、その活動自体は県連協などの協力を得ながら、どんどん活発化しています。(※最終話へ続きます)