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育成士会が切り開いた、地域海洋センターの将来

地域海洋センターの指定管理者になった、山東B&G育成士会の活動

多くの自治体が経費削減に努め、市町村合併を通じて業務の再編に力を入れる昨今、これから先の運営・管理のあり方を巡って、さまざまな意見が出されている地域海洋センターも少なくありません。旧山東町B&G海洋センター(滋賀県)も、平成17年に3つの町が合併した米原市の管轄になってから運営・管理のあり方が見直され、「指定管理者を公募して、受け皿が見つからなかったら閉鎖もやむなし」の声も聞かれるようになりました。

 そこで危機感を募らせた有志の指導者や海洋センターの旧職員が、法人格の山東B&G育成士会を立ち上げ、市と交渉。その結果、同会が今年度から指定管理者として海洋センターの運営・管理に直接携わることになりました。まだ、いろいろな課題が残されているそうですが、新たなスタートを切った海洋センターの活動に、地域の人々は大きな期待を寄せています。


 米原市山東B&G海洋センター

琵琶湖の北東部に位置する旧山東町に、昭和58年(1983年)開設。町職員1ないし2名に加え、B&G指導者資格を持つ一般町民8名の有志によって、屋内プール、体育館の活動を展開。平成17年に周辺2町と合併して米原市になった後、今年度から以前のスタッフや有志8名の指導者による山東B&G育成士会が、指定管理者となって運営・管理に携わっている。
センター外観
第1話:手弁当で支えた、海洋センターの活動

わが町にプールがやってきた!

プールで泳ぐ子どもたち 山東B&G育成士会が市から指定管理を受けることができたため、今年も例年と同じようにプール開きを迎えることができました
 いまから24年前の昭和58年、滋賀県の旧山東町に念願の地域海洋センターがオープンしました。施設ができて特に喜んだのは、プールを持たない地元の中学校でした。さっそく、生徒たちは水泳の授業を海洋センターで始めるようになり、その後、小学校も自前のプールを閉鎖して、海洋センターを利用するようになりました。専従スタッフによって常に最適なコンディションに保たれている海洋センターのプールは使い勝手が良いうえ、小学校のプールを使わなければ、町としても経費の削減につながったからです。

 「小中学校が授業で使うようになって子どもたちに海洋センターの存在が広まったこともあり、一般利用の時間でも大勢の子どもたちで賑わうようになりました。ここ数年は少子化の影響が出て利用者数は頭打ちですが、オープン直後のピーク時には年間1万人ほどがプールを利用していました。また、体育館ができたおかげで、バレーボールやバスケットボールなどの地域スポーツも盛んになっていきました」

 そう振り返るのは、旧山東町時代に町の職員として海洋センターの運営に携わったことがあり、現在も山東B&G育成士会の専従職員として海洋センターの副所長をつとめている方です。旧山東B&G海洋センターは、しっかりと地域スポーツを支えていきました。

活動を支える有志たち

 町の人の一般利用に関しても、学校の授業として利用される場合も、海洋センターでは利用料金を徴収しませんでした。そのため、なるべく運営経費を抑える努力が求められました。

 「海洋センターは住民のための公共施設として位置づけられ、運営経費はすべて町が負担しました。ほとんど利益が出ない施設を末永く利用するためには、出るお金を減らす必要があります。

水泳教室の様子 ジュニア水泳教室で練習に励む子どもたち。こうした活動を止めることはできないということで、山東B&G育成士会が結成されました
 そこで、町では常勤職員を1名ないし2名に抑え、あとは有志を募って活動のサポートをお願いすることにしました。従来からスポーツ少年団などで指導にあたっていた人たちに声をかけて8名の有志を確保し、海洋センターで指導できるようにB&Gの指導者資格を取ってもらったのです。

 この方法は、町の財政を踏まえて当時の教育委員会が考えたものですが、実に賢い発想だったと思います。8名の有志は町の特別職として契約を結び(2年の任期で更新)、年間1万円の給金が支給されました」

 8名の指導者は、当時、誰もが40歳代の働き盛りだったそうです。仕事で忙しい年代ですが、事情があって更新を辞退した人はこれまでに2名しか出ていません。皆、献身的に海洋センターの活動を支えてくれました。


 「年間1万円の給金ですから、ほとんどボランティアの世界です。それも、現在の指定管理に移る直前には、日給2,000円がイベントの手伝いなどで支給される程度の契約に変えられていましたが、誰一人としてグチを言いませんでした。

 結局、皆、スポーツが大好きで、なんとかして海洋センターという地域の財産を守ろうとしたのです」


施設閉鎖の危機

ビーチバレー 体育館の利用も活発です。米原市山東B&G海洋センターは、地域スポーツの拠点として大いに機能してきました
 旧山東町時代に考案された海洋センターの運営方式は、平成17年から市制に移行してからも、いったんはそのまま受け継がれましたが、翌18年になると事態は変わってしまいました。平成19年度からは、市の職員を配置せず、指定管理者を公募する話が持ち上がったのです。しかも、公募で受け皿が決まらなかったら、施設の閉鎖もやむなしの声が出ました。

 この事態を深刻に受け止めたのは、有志の指導者たちでした。

 「指定管理の話を聞いて以来、私たち指導者は何度も会合を開いて海洋センターの将来について話し合いましたが、『施設が閉鎖されたら、いままで築いてきた地域スポーツの根が断ち切れてしまう』『指定管理者を公募して、地域の事情を知らない業者が受けたら、利用者が混乱するかも知れない』などと、誰もが口を揃えて不安を訴えました」

 そこで打ち出されたのが、指導者自らが指定管理者に名乗りを挙げて、施設の運営・管理を行う案でした。

 市を説得するには、それなりに環境を整えなければなりません。指定管理を受けるためには法人を組織しなければならず、管理委託費を試算する必要もあります。

 しかも、その作業は時間との戦いでもありました。公募が始まってしまうと、他の業者が選ばれてしまう可能性もあるため、その前に市と交渉をする必要があったのです。(※続きます)