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島の新しい事業として期待をかけていた村の関係者は頭を抱えてしまいましたが、思わぬところで強力な味方が現れました。
「修学旅行が終わって間もなくすると、『あらためて視察に訪れたい』と、この学校から電話がかかってきました。事情を聞くと、『修学旅行から帰ってきた学生たちは、元気で挨拶をするようになり、授業態度も従来とは比較にならないほど熱心になりました。そのため、いったい島で何が起きたのだろうか? と関心を寄せる保護者や先生が大勢出てきたのです』とのことでした」
「ホームステイ先とは、“ご馳走などは振舞わず、いつもと同じ食事を出すこと”、“昼間は農作業や漁業など、家業を手伝ってもらうこと”といった約束を交わしていたので、どの家も学生たちを客扱いせず、我が子のように接してくれました。
そのため、わずか2日間の滞在とはいえ、終わってみれば多くの学生がホームステイ先と人間的な絆を感じるようになっていたのです」
「花を折って遊んだ学生に対しては、花を育てるためにどれほどの苦労が必要なのかを、家の人は涙を流して説明してくれました。実際、園芸農家は1年がかりで商品になる花を育てているのです。
また、勝手に家を出た学生が夜中に戻ってくると、家の人は寝ないで待っていてくれ、膝を交えて学校のことや家庭のこと、社会のことなど、さまざまな話題について朝まで語り合ってくれました」
そのような事情を知った先生方は、「ぜひ来年もお願いします」と修学旅行の継続を熱望。「もう受け入れられない」と拒否反応を示していたホームステイ先も、学生たちが変わってくれたことを知って、この申し出を快諾しました。
「島に滞在する間に、学生たちが大きく変わることはありません。フェリーに乗って島を離れ、長旅をして自分の家に戻り、そこで島の生活を振り返ることで、彼らなりに人間関係の大切さを悟っていくようです。最初に受け入れた学校が、再度、視察に訪れたことによって、そんな事の流れを私たちも知ることができました」
「ホームステイの修学旅行では、見ず知らずの家に泊まることで動揺する生徒も出てきますが、それを乗り越えることも勉強です。修学旅行は学ぶための旅であるべきで、社会に出る前にホームステイを体験することは、子どもが自立するための1つのステップになると思います」
普段、ほとんど家で会話をしなかったある生徒が伊江島の修学旅行から戻ると、ホームステイでお世話になった話を両親に細かく説明し、以後、会話の途切れない家庭になっていきました。
「他人の家にお世話なることは、子どもの教育にとって大きなプラスです。見ず知らずの家に入ると、誰でも気持ちを引き締めるものです。そして、自分の家ではこうだが、この家ではこうなのだと、いろいろな側面から相手を理解しようと努め、それが子どもの成長に大きく影響していきます。伊江島で行っているホームステイの修学旅行には、いま求められている教育の原点があるのではないかと自負しています」
最初の段階で壁に当たってしまったものの、利用者からの心強い支援を受けたホームステイの修学旅行。平成15年度にスタートして以来、島を訪れる学校の数は毎年、倍増していきました。(※最終回に続きます)
※イラスト:伊江村ホームページより