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委員会を立ち上げた理由をこう説明する、美濃部武彦さん(同委員会会長)。いまから3年前、美濃部さんの呼びかけに応じた26名の住民によって委員会の活動が開始されました。
「それまでは当たり前のように利用していたので、川端の素晴らしさが分かりませんでしたが、エコツアーのガイドを務めるようになってから、しだいに我が故郷の良さに気がついていきました」
そう語ったのは、今回の取材でガイドを引き受けてくれた福田千代子さんでした。福田さんはごく普通の主婦ですが、家事の合間を縫いながらボランティアガイドとして活躍しています。
自ら受け入れ態勢を整えたおかげで、福田さんのように地元の人々が我が故郷についていろいろ知るようになっていき、大切な水文化を守り伝えていく意識も高まりました。その結果、26名のボランティアスタッフで活動を始めた委員会も、現在は協力者を含めて70名に拡大。皆、日々の生活を送りながら交代でガイドを務めています。
昨年、エコツアーに参加した人の数は約3,000名。委員会の活動は1月から3月までの冬場は休止するので、毎日10名以上の人が針江の里を訪れている計算になります。最近では、ヨーロッパやオーストラリアから来る人もいるそうです。
ちなみに、現在行われているエコツアーのメニューは、90分コース(参加料1人1,000円)と、3時間コース(参加料1人2,500円)があり、参加料は川端や水路の保全・整備に充てられています(詳細が記されているホームページは、「針江生水の郷委員会」で検索してご覧ください)。
「最近では、小中学生の体験教育の場としても針江が注目されるようになりました。訪れた子どもたちは、川に入って小魚を追い、野に咲く花を摘んでは、図鑑を片手にいろいろ調べて楽しんでいます」
この試みが開始されると、美濃部さんは川に入る子どもたちの顔つきを見てとても驚いたそうです。
「それまで、おとなしそうにしていた子も、いったん川に入ると顔つきががらりと変わって活発に行動するようになります。子どもたちにとって水に入るということは、砂遊びと同じように本能的な遊びなのでしょう。人間と水とは切っても切れない縁で結ばれているのです。そのことが、よく分かるようになりました」
こうした光景を脇で眺めていた地元の子どもたちにも、大きな変化が現れました。楽しそうなので、自分たちも率先して水遊びをするようになったのです。
水に入るという本能的な遊びを、ふたたび取り戻した針江の子どもたち。それは、エコツアーから派生した、思わぬ副産物でした。
「子どもたちは皆、水遊びを通じて活発な性格になってきたのではないでしょうか。エコツアーを通じて、さまざまな人と接する機会が増えたことも一因かと思います。お年寄りに関しても、エコツアーが始まってからは積極的に他人と会話を楽しむようになりました。琵琶湖の奥に位置するため、他の地域との交流がそう多くなかった針江ですが、ここ3年で住民の意識はとても開放的になりました。
結局のところ、住民は誰でも針江が好きなのです。その針江の良さを求めて他の地域から多くの人が訪れるようになったので、とてもうれしいのではないかと思います。それが証拠に、エコツアーのルートにある家々では、こぞって庭先や玄関にたくさんの花を並べるようになりました。これも、針江の湧水で育った美しい花を見てもらいたい、ひいては美しい郷里の姿を見てもらいたいという気持ちの表れだと思います」
「今年のゴールデンウィークには多数の来訪者が予想されたため、ガイドが不足するのではないかと心配しましたが、皆が手分けをしてお客さんの世話をしてくれました。また、針江では昔から地域ぐるみで定期的に水路の掃除をしていましたが、エコツアーが始まる前は面倒に思っていた人も少なくありませんでした。ところが、最近ではどの家も率先して出てきます。皆で協力し合う関係が、自然に根づきつつあります」
古くから伝わる水文化の素晴らしさを再発見したことで、大きく変わった住民の意識。「ここにきて、忘れかけていた共同社会の姿が蘇りつつある」と、美濃部さんはうれしそうに語ってくれました。
※次回は、自らも川端のある家で育ったという高島市の海東英和市長にお話を伺います。