![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
楠本しのぶさんは、体育の専門学校を卒業後、十数年間にわたってスキーのインストラクターをしてきましたが、昨年、知り合いに勧められて、地元にある新宮市熊野川B&G海洋センターの職員になりました。
「スキーのインストラクターをしていたときは、夏場になるとスポーツクラブで子どもたちに水泳を教えていたので、海洋センターの仕事に戸惑いはありませんでした。しかし、これまでB&G体験クルーズに参加したことがなかったので、今回のボランティアリーダーの仕事には少し不安もありました。こんなに長い船旅なんて、初めての経験です。もし、私が船酔いで動けなくなってしまったら、肝心の子どもの世話ができなくなってしまいますからね」
幸い、楠本さんが船酔いで苦しむことはなく、クルーズ初日から2日目にかけては気分が悪くなった子どもたちの介抱に追われました。長年、スキーを教えてきた経験から、最近の子どもたちには積極性が欠けていることを感じていたという楠本さん。今回のクルーズでは、いろいろな場面で子どもたちの背中を押し、『自分からやってみよう!』という気持ちを引き出してあげたいと思ったそうです。
「船酔いした子には、『これは病気じゃないから安心して! 気持ち次第で元気になれるから、がんばって!』といって励まし続けました。なかには、物を食べてもすぐに吐き出してしまう女の子もいたのですが、声を掛け続けた結果、一生懸命にご飯を口にするようになって元気を取り戻したので、とてもうれしく思いました。自分が苦しさを乗り越えることができたら、苦しんでいる人の気持ちがよく分かる人間になってくれるのではないかと思います」
「やればできる!」という積極性の大切さを子どもたちに教えてあげたいと思った大きな理由は、楠本さん本人の体験のなかにありました。
「学生時代、スキーに興味を持ったときは、『あなたは和歌山県の出身で、子どもの頃から雪に馴染んでいないから、インストラクターになるのは難しい』と、スキー教室の先生に言われたことがありました。それでもスキーの仕事に携わりたいと思ったため、下手は下手なりにコツコツと練習を重ね、どうにか指導員の資格を手にすることができました」
「人間、誰でもやればできる」ということを、何らかのかたちで子どもたちに伝えたかったという楠本さん。船酔いを克服した子どもたちには、その思いがしっかり伝わったのではないでしょうか。
「ホエールウォッチングに出かけた際は、子どもたちの目の輝きに圧倒されてしまいました。もちろん、カヌーやライフセービングでも、皆、実に楽しそうでした。私は、そんな子どもたちの表情から、生きることのすばらしさを教えてもらいました」
地元に帰ったら、よりたくさんの地域の人たちにその感動を伝えたいと語ってくれた楠本さん。もちろん、また機会があればクルーズに参加して子どもたちと有意義な一週間を過ごしたいそうです。
秀村尚迪君は、小学4年生のときから地元、香川県の三木町B&G海洋センターでカヌーやヨットなどのマリンスポーツを楽しむようになり、特にカヌーが好きになったため、カヌーポロ部のある愛媛県の三好高校に進学。現在、寮生活をしながら勉強や部活動に励んでいます。
「小学6年生のときB&G体験クルーズに参加していたため、メンバーのOBに送られてくるジュニアボランティアリーダー募集の案内を昨年度もいただきました。新たに設けられた高校生にもできる仕事ということで興味が湧きましたが、前回は高校進学の準備に追われて参加できませんでした」
残念ながら昨年度は見送られましたが、ジュニアボランティアリーダーという仕事に関心を抱いた秀村君。今回は、案内が届くやいなや参加を決めました。
「メンバーで参加したときは、組リーダーがとても厳しく、5分前の集合などは徹底的に指導されました。でも、航海が進むにつれ、1人でも集合に遅れるとスケジュールに遅れが出てしまうことや、メンバーたちに船上生活をより楽しんでもらうおうとリーダーの方々が奔走していることを、小学生ながら理解するようになっていきました」
クルーズが終わって日常の生活に戻ったとき、リーダーにお世話になったことが忘れられない思い出になっていたという秀村君。今回、ジュニアボランティアリーダー募集の案内を手にしたときは、いよいよ自分が子どもたちの世話をする番がやってきたと思ったそうです。
厳しかった船上生活が後になって大きな思い出になったことから、ジュニアボランティアリーダーとして今回のクルーズに参加した秀村君は、意識的に子どもたちに厳しく接していきました。
「集合時間に関してはもちろんのこと、靴紐の結び方や衣服の着用など、気がついた点はどんどん注意していきました。ですから、航海中の僕は多くの子どもたちから嫌われていたのではないかと思います(笑)。
でも、子どもたちを導く上では、憎まれ役もときには必要なのではないでしょうか? 今回、このような仕事をしたことによって、普段、子どもたちと接している親や学校の先生の苦労がちょっと理解できたような気がして、とても勉強になりました」
一週間の船上生活を通じて、日ごとに子どもたちの成長が見て取れたという秀村君。ジュニアボランティアリーダーは、大変だったものの大いにやりがいのある仕事だったそうです。 (※続きます)