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新鮮な感動を親子で分かち合うことができました!
〜「親子ふれあい体験セミナー」に参加した父母の声
 
B&G財団が毎年開催している、沖縄の海洋体験セミナー。通常は、子どもたちだけを対象にカリキュラムが組まれていますが、今年は初の試みとして親子2人で参加する「親子ふれあい体験セミナー」も企画。全国から20組の親子がマリンピアザ オキナワを訪れました。5日間の日程で、マリンスポーツや自然観察など盛りだくさんの活動メニューをこなした父母の皆さんは、このセミナーをどのように楽しみ、どのような感動を親子で分かち合うことができたのでしょうか。男女2名の参加者に、それぞれ感想を聞いてみました。
透き通った海をバックに笑顔の佐々木さん親子
(右は、体験セミナーを運営する田中リーダー)

父と子の絆が深まり、
留守を預かってくれた母を思う心も育まれました。

佐々木昭雄:宮城県/佐々木 大君(小3)のお父さん

モリを手に川に入る親子

 長男の大君が、学校から「親子ふれあい体験セミナー」の案内をもらってきたとき、お父さんの昭雄さんは、ちょっと驚いたそうです。
 「地元の海洋センターには、冬はスキークラブ、冬以外は柔道の稽古で通っているので、センターの職員とは顔見知りなんです。でも、日頃いろいろな話をしているのに、今回のセミナーのことは聞いたことがなかったので、えーっ、B&G財団ってこんなこともしているんだ! どうしてもっと早く教えてくれないの? なんていう気持ちになりました」
 親子で参加する企画は今回が初めてなので、これまで話題にならなかったのは仕方がないことです。昭雄さんは、案内を見た翌日にはセンターに電話を入れて、この事情を知ることになりましたが、その場で「ぜひ行きたいから財団に掛け合ってほしい」と頼み込みました。とりあえず、センターのスタッフは財団に参加募集の様子を聞いたそうですが、あくまでも参加者は抽選で決まります。きっと、昭雄さんは抽選が済むまで気が気ではなかったことでしょう。
 もっとも、参加したい衝動に駆られてしまったのも無理はありません。昭雄さんは大のアウトドア好きで、ほとんどの日曜日は大君や大君の妹を連れて山や川へ向かいます。特に川に行ったときは、手製のガラス箱で水中を探りながらモリを使ってカジカを獲るそうで、大君もたいした腕前になっているそうです。
 「私が子どもの頃は、テレビゲームなんてありませんでしたから、もっぱら川で遊んでいました。その楽しさを自分の子どもたちにも教えてあげたいんです。でも、妻が学校で『ウチの子は、お父さんと川でモリを突いて遊んでいます』なんて言うと、びっくりされるそうです。確かに私たち以外、モリを手に川に入っている親子の姿は見たことがありませんから、驚かれても仕方ありませんね」
 山や川でたくましく育っている大君ですが、昭雄さんには1つだけ大君に十分してあげていないことがあり、前々からそれが気になっていたそうです。
「海だけは家から遠いんですよ。そのため、海水浴や磯遊びは年に1回ぐらいしかできず、なんとかその埋め合わせをしたいと思っていたんです」
今回のセミナーに飛びついた大きな理由が、そこにありました。

同窓会をしよう!

 大君とともに意気揚々と沖縄の地を踏んだ昭雄さんでしたが、宿泊するマリンピアザ オキナワに到着したときは、少々心配事が頭をよぎりました。
 「親子別々の部屋になるとは聞いていましたが、実際に宿に入ると、わが子は大丈夫かなという気持ちが起きてしまいました。スキーの合宿などで他人と寝泊りする経験はしているのですが、4泊という長い生活の間で体でもこわしたらどうしようって思いました」

すっかり気持ちが通じ合った1組の皆さん
(右が 佐々木さん)


 それは、参加したどの親にも共通した心配事だったようです。特に、学校では同学年の子ばかりと接しているので、今回のセミナーのように小学3年生から中学3年生までが一緒の班になって寝泊りすることについては、親としては想像しにくい面があるものです。
 しかし、こうした環境に置かれると、子どもたちは大人が想像する以上にたくましく生活するものです。親を頼れないということは、子ども同士が互いに協力しなければ生活できないということになりますから、年長者が年少者の面倒を見たり、年少者が年長者に相談するという具合に、知らないうちに協調性や自主性が育まれるのです。
 昭雄さんの場合も、大君が知り合ったばかりの子どもたちと仲良く食事をしている姿を見て大いに安心したそうです。このように、普段、家や学校で見ることのない、わが子のたくましさをその場で知ることができるということは、親子で参加するセミナーならではの特長かも知れません。
 「参加した親の皆さんは、それぞれ私のようにわが子が元気で暮らす姿を見て、安心したようです。そのためか、親同士で泊まる部屋では大いに皆さんリラックスし、実にいろいろな話をしながら盛り上がりました」
話題は、各地方の暮らしぶりに関することが多く、なぜか子どもに関することは少なかったそうです。連れてきたわが子が問題なく生活していることを知った安堵感から、自然に大人同士で楽しめる話題になっていったのかも知れません。また、そのことも貴重な体験だったと昭雄さんは言います。
 「いろいろな地方の人たちと寝泊りする機会なんて、めったにありません。お互いに気持ちが通じ合い、『今度、皆で同窓会をしたいから、佐々木さん幹事やってよ』なんて言われちゃいました(笑)」

環境を守る気持ちが高まりました

マングローブ林のカヌー体験は最も楽しみにしていたものの1つ

 昭雄さん親子は、地元の海洋センターでカヌーを漕いだことがありましたが、人造湖がゲレンデだったため、今回の沖縄の海には感激ひとしおだったそうです。
 「同じカヌーでも、沖縄の海は最高に気分がいいものでしたね。時折、息子が見せる笑顔に、連れてきてよかったという実感が湧きました。特に、マングローブが生息している川をカヌーで上ったときは親子ともども興奮してしまい、先頭に立つべきガイドさんを追い越してしまいました(笑)。ただ、自然の中でカヌーを漕いでいると、子どもは好奇心が旺盛になるようで、息子も実にさまざまな動植物に目を向けていました」
 思う存分、カヌーを楽しんだ昭雄さんと大君でしたが、マングローブの根元に空き缶が流れ着いているのを発見したときの大君の反応が忘れられないと昭雄さんは言います。自然の中で精一杯生きている動植物を観察している最中に、人間が捨てたゴミを見つけてしまったことが、大君にとっては大きなショックだったようで、家に帰ってからも、しきりにこのときの話をしたそうです。
「マングローブの生息地に行ったことで、環境を守ることの大切さが息子の心のなかに芽生えたようでした。最近、ゴミの焼却熱を利用した温水プールに家族で行きましたが、その帰りにゴミの処理場を見たいと息子が言ったため、ゴミの分別作業や焼却作業などを家族で見学しました」
 大君の意識の変化に驚く昭雄さんですが、セミナーに参加した成果は他にもあったようです。
「息子は最初、沖縄に来たことではしゃいでいましたが、セミナーが後半になると家のことを思い出し、『こうしてボクたちが沖縄に来ることができたのも、お母さんが働いてくれているからだよね』と、母親に対する感謝の気持ちを言葉にしてくれました」
 父と子の絆も深まりましたが、それ以上に母を思う心が育まれたと昭雄さん。そんな貴重なことが学べるこのセミナーは、ぜひ末永く継続してもらいたいと、最後に熱く語ってくれました。

 

満面の笑みの田中さん親子

貴重な体験に娘は大喜び。
そんな姿を見て、母の私も童心に帰って楽しむことができました。

田中久江:茨城県/田中千亜希(小4)のお母さん

思わぬ展開で叶った夢

 長女の千亜希さんが学校からセミナーの案内を持ち帰ったとき、家族みんなの気持ちが一斉に沖縄の海へ向いてしまいました。そのため、お父さんと千亜希さんのお兄さん(小6)、そしてお母さんの久江さんと千亜希さんの2組に分かれて申し込むことになりました。
 「抽選になると聞いていたので、『どうせ当たらないよね』なんて家族で話をしていたのですが、お父さんとお兄ちゃんの組が当選したという知らせが届きました。千亜希は『そんなの、ずるい』と言って落ち込んでしまいましたが、抽選なんだから仕方がないよと言ってなだめるしかありませんでした」
 ところが、当選の知らせが届いてから思わぬことが続きました。まずは、仕事の都合でお父さんが参加できなくなり、それではとお母さんが代役を務めようとしたところ、今度は千亜希さんのお兄さんがケガで入院してしまったのです。
 「二度三度と参加者の変更をお願いするわけにもいかないと思い、今回はキャンセルしようと海洋センターに行ったところ、『千亜希ちゃんがいるじゃないですか』と職員の方から助言されました」
 一度はあきらめた千亜希さんでしたが、久江さんが持ち帰ったセンターからの助言に大喜び。出発ギリギリになっての参加となりましたが、晴れて千亜希さんは久江さんとともに沖縄の地を踏むことになりました。
 「以前、B&G財団が客船を使って子どもたちの体験学習を開催していると聞いていたので、すっかり今回も船旅だと思っていたんです。ですから、飛行機で行くと聞いて驚いてしまいましたが、いずれにしても普通の旅行では得ることができない体験学習のプログラムが組まれているわけですから、大いに期待しました。また、私も娘も沖縄には行ったことがありませんでしたから、テレビなどで見る沖縄の美しい海を楽しみにしました」

童心に帰って大いに楽しむ

想像した通り美しい沖縄の海

 想像した通り、美しい海に出会えた久江さんと千亜希さんでしたが、マリンピアザ オキナワに到着したときは少々あわててしまいました。
「二転三転しながら出発間際に参加することを決めたためか、事前に部屋割りなどの案内をもらっていませんでした。そのため、親子別々の部屋になると聞いて、これはいけないと焦ってしまいました。実は、2人の荷物を1つのケースに入れていたので、急いで仕分けしなければならなかったからです」
 しかし、親子別々に寝泊りすることに関しては、あまり心配はしなかったと久江さん。千亜希さんは普段から人見知りすることがなく、誰とでもすぐ仲良くなれる性格の持ち主だったのです。
 「むしろ、千亜希と一緒の部屋になった子どもたちに、迷惑が掛からなければいいなと思ったぐらいです。食事をとるのも遅いので少し気になりましたが、なんとかできていたようです。心配といえばその程度で、実際、娘は年上の子どもたちに遊んでもらいながら、毎日いろいろなプログラムを楽しんでいました」
 もし、親子が同じ部屋になったら、ついつい親が子どもの面倒を見てしまうので、体験学習という内容を十分に消化できずに終わっていただろうと久江さんは言います。また、あまり子どもたちの世話を焼かずに済むということで、参加した父母の間には普段得られない気持ちの余裕が生まれたそうです。
 「子どもたちは夜9時には消灯しますから、それから先は大人同士で楽しい時間を過ごすことができました。いろいろな地方の方々と輪になって話すという機会はめったにありませんからね。取り留めのない話題が多くて、なぜか子どもの話は少なかったのですが、むしろそのために日頃発散できないストレスが解消され、おしゃべりが好きだった若い頃に戻った感じでした」

他の旅行にはない貴重な体験

 すっかりリラックスできたという久江さん。千亜希さんとカヌーに乗ったときも、あれこれ2人で言い合いながらパドルを漕いで、童心に帰ることができたそうです。

親子や組の仲間同士で協力しあっての動植物探しでは会話が弾みました


 「もし、親がリードしながら子どもにカヌーを学ばせるという内容だったら、おそらく子どもばかりに漕がせてしまい、2人で力を合わせて漕ぐというコミュニケーションを楽しむ体験にはならなかったと思います」
 コミュニケーションということでは、さまざまな地方の親御さんたちと触れ合うことができた久江さんですが、千亜希さんも沖縄を離れる際には新しい友だちの名前が住所録に並びました。いくつかの方言も覚えて久江さんに自慢したそうですが、こうした広い地域から集まった子どもたちと親交を深めることができたのも、このセミナーならではの特長だったと久江さんは言います。地元を離れて遠くを旅するという意味では家族旅行や修学旅行も同じですが、旅の始めから終わりまで家の人や母校の仲間のみと行動していたら、千亜希さんのように知らない土地からやってきた子どもたちと、なかなか友だちになることはできません。
 「学校の教育はおろそかにできませんが、今回のようなセミナーに参加して、いろいろなことを体験学習するということも、ときには必要なのではないでしょうか。学校の授業、そしてこのような体験学習のセミナーそれぞれが、異なるアプローチの仕方を持って子どもたちを育てていくことが大切なのではないかと思います」
 さまざまな楽しい思い出とともに、たくさんの友人をつくることができた久江さんと千亜希さん。今度は、お父さんとお兄さんにも参加してもたいたいと、久江さんは語っていました。


 

 


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