本文へ 財団法人ブルーシー・アンド・グリーンランド財団 サイトマップ
HOME B&G財団とは プレスリリース イベント情報 全国のB&G リンク集

海洋センターは、町民とキャッチボール対話をする場にしていきたい〜町長は海洋センターの初代育成士!青森県南部町:工藤祐直(すけなお)町長/南部町名川B&G海洋センター〜


工藤 祐直町長注目の人
工藤 祐直(すけなお)町長



工藤 祐直(すけなお)町長
1955年(昭和30年)生まれ。青森県南部町出身。大学卒業後、民間企業を経て青森県名川町役場に就職。海洋センター勤務となり、初代育成士として活躍。その後、農林課や企画課などを経て、平成12年に名川町町長に就任。
 平成18年、合併による新生南部町の初代町長に就任し、現在に至る。野球、アイスホッケー、少林寺拳法などを愛するスポーツマン。B&G財団評議員。


 青森県の南部町名川B&G海洋センターでは、平成12年以来、毎年、必ず沖縄の指導者養成研修に町職員を送り出していますが、その方針を打ち出したのは旧名川町の工藤祐直町長でした。工藤町長は、かつて自らも海洋センターの初代育成士として活躍。その経験から、大事な町の施設を活用するためには、十分な数の指導者を確保する必要があると痛感したそうです。

 現在14名を数える指導者は町役場の各部署に配置され、横の連携を取りながら海洋センターの利用を多角的に検討しているそうで、最近では保健士をB&G財団に派遣するなどして保健福祉の面からの施設利用にも力を入れています。「海洋センターは、町民とキャッチボール対話をする場にしていきたい」。そう語る工藤町長に、これまでの経緯や展望についてお聞きしました。

最終話:明日への取り組みに期待!

町づくりの3本柱

「町づくり達者村事業」を受賞 名川町時代、農業体験を軸としたグリーン・ツーリズムが評価され、「町づくり達者村事業」を受賞。町を代表して総理官邸に招かれ、当時の安倍総理に事業内容を説明しました
 海洋センターの教え子をはじめとする青年層から大きな支持を受けて当選した工藤町長。45歳の若き新町長がめざした町づくり構想のなかでは、海洋センター事業にも大きな期待が寄せられました。

 「町村合併によって南部町になった現在もそうですが、農業、教育、福祉が町づくりの3本柱だと考えています。農業は言うまでもなく地元の基幹産業ですから力を入れなければなりません。そして、他の2点について言えば地域を支える人づくりがテーマです。

 この町で生まれた子どもは親からしつけを受けて育ち、やがて学校を出て農業などの仕事に就き、病気をしたり歳を取ったりしたら地域医療、福祉のお世話になります。つまり、人生のサイクルを3つの柱で考えたわけです。

 また、この3本の柱から枝葉が分かれていろいろな町の政策が練られ、インフラなどが整備されていきます。ですから、3本の柱がリンクして大きな輪を形成していると言えるでしょう。その輪のなかで、海洋センターが担う役割は大きいです。3本柱のうち、教育と福祉に関わってくるからです」


幅広い教育をめざしたい

 工藤町長が考える教育とは、単に学校で勉強することだけでなく、社会体育や地域学習を含めたなかで、将来を託す子どもたちをどのように支援していくかという広い範囲に及びます。

自然観察に励む名久井小学校 地元の川で自然観察に励む名久井小学校の児童たち。同校の4年生は、「水辺に賢い子どもを育む年間型活動プログラム」に沿ってテーマ学習に取り組んでいます
  「現在、我が町ではグリーン・ツーリズムに力を入れており、全国各地から修学旅行も受け入れています。そこで問われるのは、『なぜIT時代に土いじりなのか』ということです。悲しいかな、現在は地元の農家の子でさえ土をさわらなくなってしまいましたが、私に言わせれば、土をいじっていろいろなことを考えてもらうことも教育なのです」

 土に触れることで自然の息吹を感じる子もいれば、作物をつくる畑の大切さを知る子もいるし、農業に感心を寄せる子も出てきます。明日を担う子どもたちに幅広い教育を施してあげたいと願う工藤町長。こうした発想のなかで、海洋センターには一歩踏み込んだ利用が考えられるようになっていきました。

 その1つが、現在、地元の名久井小学校が実施しているテーマ学習に見られます。同校では、日本財団の助成を受けてB&G財団が開発した「水辺に賢い子どもを育む年間型活動プログラム」を小学4年生の“総合的な学習の時間”に導入。海洋センターの協力を受けながら、町を流れる河川の生態調査などを行う環境学習を展開しています。


鍵を握る部署間の連携

「水辺に賢い子どもを育む年間型活動プログラム」 海洋センターのプールで着衣泳を体験。「水辺に賢い子どもを育む年間型活動プログラム」では水辺の安全学習にも力を入れています
 海洋センターの利用について、工藤町長は「社会体育の場としてだけでなく、地域の人たちを支えるさまざまな事業の拠点になり得る」と唱えます。

 「数年前、B&G財団が開発した『転倒・寝たきり予防プログラム』(日本財団助成事業)を見学し、すぐに私たちの海洋センターでも始めました。我が町でも高齢化率は高く、お年寄りの健康対策が求められていますが、その一翼を海洋センターに担ってもらいたいと思っています。

 また、この事業は福祉の面で考えた海洋センターの利用になりますから、これまでのように教育委員会だけの仕事ではなくなっていきます。ですから、今後は福祉や保健といった部署との連携がカギを握ると思っています」

 「転倒・寝たきり予防プログラム」の円滑な運営をめざして、工藤町長は保健課の職員を海洋センターに配置。その後は、B&G財団の職員派遣制度を利用して、保健士をB&G財団に派遣し、現在、財団の持つさまざまなソフト事業を学んでもらっていました。

 「これからの海洋センター事業を考えたうえで、B&Gプランを知る保健士がいることは大きな財産です。また、私は町長になってから毎年、必ず沖縄の指導者養成研修に職員を派遣してきましたが、いまでは同じ研修を受けた仲間とも呼べる職員が、いろいろな部署に分散していて、それぞれが横の連絡を取り合っています」

名川町時代の工藤町長 B&G財団に派遣された町の保健課職員とツーショット。健康福祉面での海洋センター利用を推進していく心強いスタッフになっていくことでしょう
 沖縄の指導者養成研修を受けて地元に戻った職員同士には、連帯意識が生まれていきました。指導者仲間の数は、現在14名。育成士会をつくって、日頃から連携を取っています。

 「育成士会で集まれば、海洋センターの話題だけでなく、皆、それぞれの部署の話題を出し合って情報交換をしています。これは、とかくタテ割りになりやすい役場の仕事の上で大いに役立っているようです」

 B&Gプランを理解する職員が大勢いて横の連携が計れていれば、「転倒・寝たきり予防プログラム」などの新規事業を展開する際も、部署間の調整が取りやすいと語る工藤町長。

 これからは、指導者の資格を持つ職員が次々に管理職になっていきます。将来、彼らがリーダーシップを取ってどんな事業を展開していくのか、工藤町長はとても楽しみにしているそうです。(※完)