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世代を越えて、海好き仲間の輪を広めたい 競技にこだわらず、さまざまな活動に励むB&G江の島海洋クラブ


注目の人
B&G江の島海洋クラブ


B&G江の島海洋クラブ:東京オリンピック5.5m級ヨット日本代表選手で、元江の島ヨットクラブ会長の松本富士也氏が中心となって平成17年7月に開設。ヨットのみならず、ライフセービングや自然観察など、さまざまな活動を展開。会員層も幅広く、現在、4歳から78歳までの老若男女40人が名を連ね、ビジター会員も受け付けている。
※松本富士也氏については「注目の人」バックナンバー007で紹介しています。

B&G江の島海洋クラブのホームページはこちら


 「ヨットのメッカ湘南にB&Gスピリッツを広めたい」。そんな思いを胸に、元江の島ヨットクラブ会長の松本富士也さんが中心になって、B&G江の島海洋クラブが設立されたのは、いまから5年前の平成17年のことでした。
  活動の拠点は、さまざまなヨット競技団体がひしめく江の島ヨットハーバーでしたが、松本さんたちが始めたクラブ活動は、きわめて競技色の少ないものでした。
  「レースだけがヨットではありません。私たちは老若男女を問わず海を楽しんでもらい、その輪のなかで未来を担う子どもたち育てていきたいのです」と、クラブ広報担当の佐山光義さんは語ります。
  今回は、多くのヨットで賑わう江の島ヨットハーバーを訪れ、同クラブが歩んだ5年間の足跡や現在の状況、今後の課題などについて教えていただきました。

第2話:いろいろな活動を楽しみたい

写真:江の島ヨットハーバー
江の島ヨットハーバーの利用申請を受けると、さっそくクラブの子どもたちがヨットで海に出ていきました

鍵になったヨット以外の活動

 「ヨット競技のメッカ、江の島ヨットハーバーを拠点にB&G海洋クラブをつくろう」。そんな合言葉でクラブづくりを始めた松本さんや佐山さんでしたが、スタートの段階で大きな壁に当たってしまいました。すでに数多くのヨット競技団体がハーバーに拠点を構えていたため、新規の利用申請が難しくなっていたのです。

 「ハーバーからは、『もう、ヨットだけの活動で場所を貸すことはできないから、ヨットに加えて何か特色のある活動をしてほしい』と言われました。私たちにしても、最初からヨットだけの活動は考えていませんでしたから、そう言われてかえって良かったと思いました」

 前回述べたように、クラブを立ち上げた松本さんにしても、松本さんの呼びかけに賛同した佐山さんにしても、頭に描いていたのは競技団体としての活動ではありませんでした。

 「競技だけではなく、全国のB&G海洋クラブが行っているような、さまざまな水辺の体験活動をしたかったのです。そのため、シュノーケリングやライフセービング、そして子ども対象のクラブでは珍しい外洋ヨットのクルージングなど、既存のジュニアヨットクラブではあまり見ることない活動計画を立て、『海を楽しみながら子どもたちを元気に育てたい』とハーバーに説明しました」

 その結果、利用申請は受理され、日本で唯一のオリンピックハーバーの一角にB&G海洋クラブのフラッグがはためくことになりました。

セーラビリティ江の島の協力

 新聞の告知で最初に集まったクラブメンバーは、子どもと保護者を合わせて40人。発足時から賑やかな陣容になりました。

 「多くの人が集まって高い期待が寄せられたため、B&G財団からいただく海洋クラブ用の配艇を待たずに活動を開始しました。すでに、同じハーバー内で松本代表が立ち上げたセーラビリティ江の島が活動していたので、彼らのアクセスディンギーを借りて海に出たのです」

 同じ江の島ヨットハーバーで、すでに2年前から活動を始めていたセーラビリティ江の島は佐山さんたちの大きな支えとなりました。

写真:ライフセーバーと子どもたち
地元の浜で活動するライフセーバーからレスキューチューブの使い方を学ぶ子どもたち。夏になると、こうして必ず海の安全を守る学習を行います

 「安定性の高いアクセスディンギーなら誰でも気軽に乗ることができますから、初心者の親子が集まった私たちのクラブでも頼れる存在になりました。B&G財団の配艇などによって自前のヨットが揃ったいまでも、月に1回はアクセスディンギーを借りてクラブ活動の輪を広げています」

 ハーバーの利用申請時に問われたヨット以外の活動についても、クラブ発足当初から積極的に力が入れられていきました。

 「地元の浜を守るライフセーバーに顧問の形でクラブ活動に参加してもらって安全指導をお願いするほか、地域で暮らす各分野の専門家に声を掛けながら、シュノーケリングや海辺の自然観察などの活動を進めていきました」

水の事故ゼロ運動に力を入れたい

写真:入江で潮溜まりの観察をする子どもたち
対岸の入江で潮溜まりの自然観察を楽しむ子どもたち。皆、自然の生き物には強い関心を示します

 競技団体がひしめく江の島ヨットハーバーで、さまざまな活動を展開していったB&G江の島海洋クラブ。しかし、活動メニューが増えるごとにさまざまな安全対策が求められていきました。

 「シュノーケルや海辺の自然観察では、活動場所の下見をしっかり行ったうえで、1週間前から天気予報に気を配りながら道具立てをしていきます。このようなアウトドアの活動では特に慎重な事前準備が必要で、実際に活動する際は複数のインストラクターが子どもたちと行動を共にし、その周囲を保護者が取り囲みながら安全に注意を払います」

 アウトドア活動には苦労も多いけれど、子どもたちが喜ぶ姿を見ると疲れが吹き飛ぶと語る佐山さん。子どもたちに人気があるのがシュノーケリングで、昨年まではクルーザーに乗って対岸の入江に向かい、アンカリング(錨泊)しながら皆で海中観察に励んだそうです。

 「事情があって今年はクルマで現地の入江に行きますが、シュノーケリングは常に一番人気の活動メニューです。道具の知識が求められるためか、一般には家族の遊びとして普及していないようですが、インストラクターがいれば誰でもすぐに海中散歩が楽しめるとあって、ほとんどの子どもが夢中になります」

写真:シュノーケリングを楽しむ子どもたち
クラブで一番人気のあるシュノーケリング。水温の低いときの活動を考慮して、クラブでは1人1人の子どもに合わせてオーダーメイドのウェットスーツを用意しています

 こうした事情を顧慮し、クラブでは1人1人の子どもに合わせてウェットスーツを作って有料(年間3,000円)で貸与し、成長に合わせて作り直していくそうです。

 「ヨットにしてもシュノーケリングにしても、大人たちの仕掛けがあって始めて子どもたちが安心して楽しめます。ですから、こうした活動を一貫して行える海洋クラブという組織は、地域にとってたいへん貴重な存在だと思います」

 子どもたちの笑顔を見るため、さまざまな活動の仕掛けに励む保護者、ボランティアの皆さん。今年の春から始まった「水の事故ゼロ運動」に共感した佐山さんは、「事故を起こすな」という心掛けを皆に伝えながら、クラブ内事故ゼロの歴史を積み重ねていきたいと述べていました。(※続きます)

(写真提供:B&G江の島海洋クラブ)