注目の人 平成19年度小笠原特集


平成19年度体験クルーズの様子
 30周年を迎えた記念すべき今年の体験クルーズは、無事終了することができました。今回は天候にも恵まれ、例年に比べて船酔いに悩む子の数もかなり少なかったと思います。メンバーたちは、楽しい思い出をたくさん作ったことと思います。

 そこで今月の注目の人は、メンバーたちの船の生活を支えてくれたボランティアリーダー4名、そしてジュニアボランティアリーダー全員のコメントを連載でご紹介したいと思います。



第3話:いろいろな場面で、子どもたちの力を借りました〜白井勇喜さん:3組ボランティアリーダー/大学生〜

白井勇喜さん1

 大学3年生(3月末現在)の白井勇喜さんは、第1話の原口さんとともに日本ライフセービング協会の学生部会の公募を通じてクルーズに参加してくれました。

 高校生のとき、海が好きで海岸のゴミ拾いをボランティアでしたことをきっかけに、ライフセービングの世界を知った白井さん。以後、どんどんライフセービングの虜になっていき、大学に入ってからは日本ライフセービング協会の学生委員会で活躍するようになりました。

  「海が好きなうえ、昔から子どもが大好きです。ですから、現在、就職活動を始めたところですが、環境・教育・スポーツの3つの要素が絡んだ仕事をしたいと思っています」

 クルーズで子どもたちの世話をする仕事には、まさにこの3つの要素が含まれています。ボランティアリーダーを体験することは、将来を考えたうえで大いに役立つと思ったそうです。

 「実は、今回が初めての船旅でした。そのため初日は船酔いしてしまいましたが、パシフィックホールで気分が悪くなってフラフラしている子どもの姿を見た瞬間、『ここで自分が倒れるわけにはいかない。酔っている場合じゃないぞ』と思って気持ちを入れ替えました」

 奮起して、気分の悪い子の介抱にあたった白井さん。すると、いつしか自分が酔っていることを忘れてしまい、以後、船酔いに苦しむことはなくなっていきました。

白井勇喜さん2 「組の子どもたちと接するときは、人見知りしている子をどのように皆の輪の中に入れてあげることができるか苦心しました。結局、子どもは子ども同士が一番。同じ部屋の明るい子にお願いし、意識的に話しかけてもらうことで解決していきました。

 また、寄港地活動ではライフセービングの体験プログラムを手伝いましたが、たくさんの子を一度に教えたことがなかったので、どのように皆をまとめていくかが自分にとっての課題でした。叱るだけではまとまらないし、かといってやさしくしていたら皆がバラバラに行動してしまいます。

 そこで目に止まったのが、年長の子や班長の子の存在でした。彼らに先頭になって動いてもらうことで、皆がそれについてきてくれました」

 子どもたちの力を信じながら、いろいろな苦労を乗り越えていった白井さん。日が経つにつれ、皆からは“ライフセーバーのお兄ちゃん”と親しげに呼ばれるようになっていきました。

 「また来年も乗りたいところですが、クルーズに参加したい学生ライフセーバーはたくさんいますから、私は辞退することになるでしょう。彼らには、このような体験を通じて視野を大きく広げてもらいたいと思っています」

 すでに、後輩に道を譲ることを考えている白井さん。いまは自分の行く末も考えなければならないことから、航海中は自然教育研究センターの古瀬講師などに就職のアドバイスを求めていました。何年かしたら、今度は社会人ボランティア、あるいは何らかの講師として乗船してもらえるかもしれません。




第2話:同じブロックの仲間と交流を深めることができました
〜脇田高洋さん:1組ボランティアリーダー/長島町B&G海洋センター(鹿児島県)〜

中村真理子さん1 銀行員を経て、高齢者介護の仕事をしていた中村真理子さん。現在は、いったん仕事から離れ、学習塾でアルバイトをしながら外国人に日本語を教える教師の養成講座を受けています。
 
 「いまなら比較的自由に時間が使えるので、この機会にどこか遠くに行けるボランティアの仕事がないかインターネットで調べていて、このクルーズと出合うことができました。これまで高齢者介護の仕事を通じてたくさんのお年寄りと接してきたため、いまは逆に子ども相手の仕事に関心がありました。また、私はダイビングが大好きなのですが、小笠原の海は未体験でした」

 クルーズに参加すれば、さまざまな体験が得られると思った中村さん。アルバイトで子どもたちに勉強を教えている学習塾の生徒も、実はメンバーと同じ小学4年生から中学3年生まででした。

 「塾は勉強の場ですから、そこにやってくる子どもたちの実生活の様子はよく分かりません。皆、ひたすらテキストやボードに目を向けているといった感じです。

 ところが、まさにクルーズは日々の生活を通じて子どもたちと接することになりましたから、塾では見ることのできない子どもたちの実像を垣間見ることができました」



中村真理子さん2 お腹が痛くなった子や船酔いの子の介抱、食事、就寝の世話などは、高齢者介護の仕事と内容的には違和感を覚えなかったそうですが、子どもたちが協力しあいながら生活を送る光景には、とても新鮮な感動があったそうです。

  「ひとことで言えば、メンバーの子どもたちは誰もが皆、やさしい心の持ち主だったということです。年長者は年少者の面倒をよくみていましたし、年少者も素直に年長者を頼っていました。

 食事の時間などでも、同じテーブルに食物アレルギーの子がいれば、『(食事内容を変える)カードを持ってきたか?』などと仲間が心配してくれていました。このような気配りを10歳前後の子がすることに、とても驚きました。塾では知ることのできない体験でした」

 寄港地活動では、子どもたちと一緒にシュノーケリングを楽しんだ中村さん。往路、船酔いで苦しんでいた子どもたちが海に入って元気で遊ぶ姿を見たときは、とてもうれしくなったそうです。

 「たいていの場合、海に来たら1種類ぐらいのマリンスポーツしか楽しみませんが、このクルーズではシュノーケリングやカヌー、それにライフセービングと、さまざまなアイテムを組んでいるので感心しました。いろいろな体験を通じて、今後、子どもたちは自分なりに海の世界を作っていくことと思います」

 1つに限らないさまざまな海体験は、子どもの成長に必ず役に立つはずだと語る中村さん。ご自身は、介護福祉士、潜水士といった資格を使いながら、いつかは障害者を対象にしたダイビングセラピーをしてみたいそうです。