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B&G体験クルーズ特集

年上者の意見を聞く大切さを知りました
 3月26日(日)〜3月31日(金)に実施された、平成17年度B&G体験クルーズにスポットを当て、リーダーやボランティアリーダー、ジュニアボランティアなど、子どもたちの船上生活を陰で支えてくれたスタッフへのインタビューを連載でご紹介します。

海洋セミナーでは班長を経験

林くん
体験セミナーを通し、マリンスポーツや子どもたちとの触れ合いに興味を持ったという林君
 小学生の頃から、旧B&G東京海洋センターで水泳の練習に励んでいた林伸吾君。6年生のときには、同海洋センターが企画したカヌー体験教室「カヌーピアザ江東」に参加してカヌーの楽しさも知りました。
 「残念ながらリバークルーズ(川下り)には参加できませんでしたが、カヌーを通じて水泳以外のマリンスポーツにも興味を抱くようになりました」

 そのため、林君は「カヌーピアザ江東」に通っていた年の夏に実施された、沖縄のB&G海洋セミナーにも参加。カヌーのほか、ヨットやシュノーケリングなど、さまざまなマリンスポーツを楽しみました。
  「海洋セミナーでは、見ず知らずの年齢の異なる子たちと一緒に生活しますから、最初はとても緊張しましたが、マリンスポーツを楽しむなかで自然に打ち解けることができ、友だちもたくさんできました」

 楽しい思い出ばかりとなった海洋セミナー。中学2年生のときに、小笠原への体験クルーズに参加する機会を得ましたが、そのときは班長という大役を引き受けることになりました。
 「体験クルーズでも班はやはり違う年齢の子で構成されていますから、年少の子ばかりに気を配っていると、年長の子に目が届かなくなってしまい、最初のうちはとても苦労しました」
  いろいろな学年の子を1つにまとめる難しさを知った林君は、自分なりに工夫しながら班長の仕事をやり抜きました。

「年少の子に関しては、各部屋長にお願いして、なるべく部屋ごとのグループでまとまって行動するように心がけました。その一方、年長の子についてはコミュニケーションタイムや自由時間などに声をかけて集まってもらい、スケージュルの確認を一緒にしながら交流を深め、ついでに同じ部屋の年少者の様子なども聞くようにしました」

土井先生
メンバーとレクリエーションを楽しむ土井先生

 こうした体験を通じ、林君は子どもの世話をみることにも関心を寄せるようになり、中学を卒業するまでにレクリエーションの研修会を受講して子どもと遊ぶノウハウも学びました。

 「今回のクルーズでは、東京都レクリエーション協会の土井先生が講師として乗船されましたが、先生が子どもたちと接するときの豊富な対応力は、とても勉強になりました」

 林君がクルーズで得たものは、まだまだほかにもたくさんありました。





お祖父さんの言葉

 中学を卒業した後も、海洋セミナーや体験クルーズに強い関心を寄せ、いつもB&G財団のホームページを眺めていたという林君。ジュニアボランティアという今回の仕事も、ホームページを通じて知り、自分のためになるはずだと思って応募したそうです。

 「今回、もっとも大変だった仕事は、船酔いした子の世話をすることでした。気分が悪くなると、多くの子が自分の殻に閉じこもろうとしてしまいます。ですから、船酔いした子に対しては、なるべく話かけて口を開いてもらうよう心がけました。なんとか会話ができるようになれば、それは元気が出てきた証拠ですから、次に、しゃがみ込んでいた体を立ち上がらせるよう努めました」

 立食パーティーの際、林君は壁に寄りかかって座り込んでいる子を見つけると、すかさず声をかけて立ち上がるよう励ましていましたが、これも自分で考えた策だったそうです。

 「子どもたちを世話することも勉強になりましたが、自分にとってもっとも為になったのは、仕事を通じた年長の人たちとの交流でした。このような経験は、普段の学校生活ではなかなか得ることができませんから、クルーズの1日1日が勉強の連続でした」

 メンバーとしてではなく、スタッフの一員として働いた経験は、とても貴重な財産になったという林君。仕事の面において比較的身近な存在だったボランティアリーダーの活躍には、特に刺激を受けたそうです。

ジュニアボランティアの仲間たち
同じジュニアボランティアの仲間たちと

 「年長の人の行動を見ていて、なるほどと思う場面がたくさんありました。たとえば、あるボランティアリーダーが廊下で通りかかった子に『君、名札がついてないよ』と、目と目を合わせながら注意しているのを見かけました。その子は、『しまった!』という顔をして部屋に飛んで帰っていましたが、この経験によってその子は二度と名札を忘れることはなかったのではいかと思います。

 振り返ってみると、自分がしていた名札の確認は、集合場所に集まった大勢の子どもに向かって声を張り上げるだけのものでした。これでは、誰に向かって注意しているのかよく分かりません。子どもたちにしても、自分が名指しされたわけではありませんから、聞き流してしまう恐れがあるのです」




 林君が勉強になったのは、年長者の行動ばかりではありませんでした。年長者の話にも、極力耳を傾けるように心がけたそうです。
 「ジュニアボランティアとして乗船したとき、いつも祖父から言われていた『必ず為になることが1つはあるはずだから、年長者の話はよく聞け』という言葉を胸に刻みましたが、実際、その通りでした」

 事が起きたら、1人だけでなんとかしようとせず、いろいろな人の意見を聞いたうえで自分なりの筋道を探る。クルーズを通じて、そんなことを学んだと林君。お祖父さんの言葉は一生忘れられない宝物になったそうです。


海の生き物と接していきたい

海野先生
メンバーに説明をする海野先生

 林君は、海洋セミナーや体験クルーズを通じて海の自然についても大きな関心を抱くようになり、現在は海洋生物学を専攻できる東京都立大島南高等学校に通っています。

 「学校は相模湾の伊豆大島にあるので、都内の自宅を離れて寮生活をしています。親は心配しているようですが、授業は楽しくて仕方ありません。ウミウシやエビなど小さな海洋生物が大好きで、将来は研究を重ねて生物の先生になりたいと思っています。ですから、今回のクルーズで海野先生の講演を聞くことができて、とてもうれしかったです」

 寮での集団生活については、海洋セミナーや体験クルーズの経験があるので、まったく不安はないとのこと。毎日、同じ志を持つ仲間とともに大好きな海を見ながら勉強に励んでいるそうです。

 「研究の仕事とはいえ、海がフィールドですから体が資本です。海野先生にしても立派な体格をしています。ボクは、幸いにも海洋セミナーなどを通じてマリンスポーツに親しむことの大切さを知り得ましたから、これからもどんどん海で体を鍛えていきたいと思っています」

 いつかは、リーダーとしてクルーズに参加したいと語っていた林君ですが、ひょっとしたら海野先生のように講師として乗船をお願いするようになるかもしれません。


※Jrボランティアとは…
 Jrボランティアとは、B&G小笠原体験クルーズに参加したことがある、高校生(15歳から18歳まで)のスタッフです。自分の乗船経験を生かし、組リーダーを補助しながら参加者同士やリーダーとの交流促進を図ります。
  今年度の体験クルーズから導入されました。




第5話

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