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沖縄の研修が私を育ててくれました 〜町の教育長として海洋センター事業に期待を寄せる、旧センター育成士の板垣良二さん:小平町B&G海洋センター(北海道)〜


旧センター育成士の板垣良二さん:小平町B&G海洋センター(北海道)注目の人
板垣 良二 教育長


 昭和27年(1952年)生まれ、北海道留萌郡出身。小平町教育委員会に就職後、旧センター育成士として地元海洋センターの運営に励み、カヌー、カッターの全国大会で何度も優勝を遂げるなど、海洋クラブの指導者としても活躍。現在は町の教育長を務めながら、海洋センター事業の発展に期待を寄せている。


 北海道西北沿岸に位置する小平町。ここを流れる小平しべ川の河口には、北海道で2番目に建設された海洋センターの艇庫や体育館が並んでいます。板垣良二さんは、そんな歴史ある施設の運営に旧センター育成士としてオープン当初から携わり、現在はB&G指導者有資格者として全国初となる教育長を務めながら、事業の発展を見守っています。
 「沖縄の指導者養成研修でいろいろなことを学び経験したおかけで、海洋センターの業務を拡大していくことができました。この研修が私を育ててくれました」と語る板垣さん。指導者として仕事に励んだ経緯や今後の展望について、いろいろお聞きしました。

第2話:現場で汗をかいた日々

夜の研修時間

現在は「ゆうゆうそう」という名の施設に変わっている、旧青年の家 現在は「ゆうゆうそう」という名の施設に変わっている、旧青年の家。写真左手に見える海岸に下りていくと海洋センター艇庫があります
 北海道で2番目に開設されたこともあって、道内各地から訪れる大勢の来場者で賑わうようになった小平町B&G海洋センター。1日に240名も詰め掛けることもありましたが、板垣さんたち海洋センターのスタッフは、いろいろな努力で対応していきました。

 「宿泊できる青年の家が近くにあったので、泊りがけの研修メニューにカヌー体験を入れる学校が少なくありませんせんでした。このような団体は人数が多いですから、当日の混乱を防ぐための下準備が必要でした」

 いかに滞りなく当日のメニューをこなしていくか、他のスタッフたちと何度も検討したという板垣さん。いろいろな知恵が絞られたなかで、もっとも効果を上げた対策がありました。

 「宿泊研修の場合は、カヌー体験の前の晩に青年の家に利用者が宿泊します。ですから、夜のうちに事前のレクチャーを済ませておくことを思いつきました。『夜の研修時間』を設けてカヌーやヨットを青年の家に持ち込み、パドリングの仕方や帆走理論などを前もって教えたのです。

 もちろん、翌日の朝にも通常メニューと同じように水面に出る前のレクチャーを行います。ですから、それが前の晩の再確認になって、皆、スムーズに体験活動を楽しむことができました」

 前の晩から対応する手間が増えるものの、余裕を持って当日のスケジュールに取り掛かることができたと語る板垣さん。こうした努力の積み重ねによって、団体利用が確実に増えていきました。

出前カヌーさきがけ

海洋センターの近くにあるキャンプ施設 海洋センターの近くにはキャンプ施設もあり、キャンプ研修のなかにカヌーの体験メニューが組まれることも少なくありません
 小平町では、海洋センターの開設に合わせて町の海洋性スポーツ普及を掲げました。そのため、板垣さんたちスタッフは地元の子どもたちへの対応にも力を入れていきました。

 「この事業についても、いろいろな知恵を出しながら進めていきました。B&G指導者としては2期上の先輩職員も海洋センターの担当になっていましたので、2人で意見を出し合いながら試行錯誤を繰り返しました。

 そのなかで大きな成果を上げたのが、海洋センターばかりに頼るのではなく、3カ所あった学校のプールと1カ所あった町営プールの活用でした。現在、さまざまな海洋センターで『出前カヌー』や『プールのOPヨット』が実施されていますが、まさにそれらと同じ発想で、『移動マリンスポーツ教室』という名のプログラムを発案したのです。プールでカヌーやヨットに乗るアイデアは、おそらく私たちが最初だったのではないかと思います」

 海に面した小平町ではありますが、当時、山間部に住む子どもたちはあまり海まで来て遊びませんでした。「それなら、こちらから出向いてカヌーなどに乗せてあげよう」と考えたことが、発想の原点だったそうです。

忙しいけれど充実の日々

海洋センター艇庫の浮き桟橋から水面に繰り出す子どもたち 海洋センター艇庫の浮き桟橋から水面に繰り出す子どもたち。ここは河口に面しており、波の穏やかなときは堤防を越えて海に出ることもできます
 プールを使ってカヌーやヨットを体験する「移動マリンスポーツ教室」は町内で評判となり、B&G海洋クラブ設立の原動力にもなっていきました。ただし、団体利用に対応する「夜の研修時間」もあるため、板垣さんは多忙を極めました。前回、夏休みに我が子をどこにも連れていってあげられなかったというエピソードを紹介しましたが、仕事の忙しさは夏休みも他の月の平日も変わりはありませんでした。

 「普段でも、7時ごろまで現場仕事を続け、それから9時、10時までデスクワークをこなす日が少なくありませんでした。しかし、忙しいなかにも充実感があって、振り返れば楽しい日々に思えます。

 また、仕事を終えて一杯やるときの楽しさは格別でしたね。遅くなったときは、海洋センターの体育館で運動マットを布団代わりにして寝たものです(笑)」

 仕事の原動力がどこにあったのか尋ねると、「海洋センターの仕事に大きなやり甲斐を感じていたことに尽きる」と答えた板垣さん。どんな仕事でも、そこにやり甲斐を見つけることさえできれば、忙しくても楽しくなるはずだと語っていました。

 「海洋センターの事業を通じて、地域住民の体力向上や健康増進、子どもたちの健全育成といったことを考えれば、そこに大きな責任を感じます。それが日々の仕事のやり甲斐につながっていきました。逆に言えば、海洋センターで働くことによって、こうした事業の大切さを知ることができました。また、そのことが、いまある私の原点になっています」

 やり甲斐を見つけて仕事に励む板垣さん。その熱意は海洋クラブの指導にも向けられていきました。(※続きます)