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研修で得た体験と仲間の輪は、大きな財産です。〜第11回指導者養成研修に励んだ、選手経験を持つ参加者たちの声〜


第11回指導者養s成研修
 平成21年度の指導者養成研修が6月5日から7月9日にかけて沖縄で実施され、アドバンスト・インストラクター養成研修に45名、アクア・インストラクター養成研修に41名が参加しました。このなかには、カヌーやヨットの選手として活躍している人もいましたが、そんな彼らも改めて基礎からさまざまなスキルや知恵を習得し、海洋センター指導員としての第一歩を踏み出しました。マリンスポーツに精通しているアスリートたちにとって、この指導者養成研修はどのような体験になったのでしょうか。4週にわたって、4名の参加者から研修の感想や今後の抱負などをお聞きします。

第3話:11年目に叶った、指導者養成研修への参加 依田伸一郎さん(33歳):アドバンストインストラクター研修生/岡山市建部町B&G海洋センター/元国体カヌー選手

知らなかった母親の青春時代

依田 伸一郎さん
依田 伸一郎さん:アドバンストインストラクター研修生(岡山市建部町B&G海洋センター/元国体カヌー選手)
 ■ 依田さんは、平成17年に開催された、おかやま国体カヌー競技ワイルドウォーターカヤック・シングル競技に地元代表として出場し、優勝を果たしました。カヌー選手になった経緯を聞かせてください。

 ―高校まで水泳をしていたので、大学でも続けようと思いましたが、入った大学に水泳部がありませんでした。そこで、何をしようか考えていると、母の友人からカヌーを勧められました。

 実は、母とその友人は学生時代にペアを組んでカヌーの選手をしていたそうで、この時点まで私はそのことをまったく知りませんでした。そして、母の友人から指導者を紹介してもらうことができました。

 ■ カヌーに乗った最初の印象は、どのようなものでしたか。

 ―泳ぎに自信があったので、水面に出ることに関して不安はありませんでしたが、いきなり細長いレーシングカヌーに乗せられたので思うようにバランスを取ることができず、やきもきしました。しかし、練習を重ねて乗れるようになっていくにつれ、カヌーがおもしろくなっていきました。

 ■ 大学時代には、どのような目標を持って練習に励みましたか。

 ―オリンピックのような大きな目標は持ちませんでしたが、学生のなかで上位に入ることを目指し、関西インカレ3位、全日本選手権6位に入ることができました。

夫婦で国体優勝

指導養成研修でカヌーに乗る依田さん 指導養成研修でカヌーに乗る依田さん。学生時代から競技で活躍したものの、海洋センターに勤務してからは自然に親しむレクリエーション活動のカヌーにも関心を寄せるようになりました
 ■ 大学を出た後は、郷里の岡山県に戻って旧建部町の海洋センターに勤務するようになりました。どのようなきっかけでこの仕事に就いたのですか。

 ―神戸の大学に通っていたのですが、両親の意向もあって郷里の岡山県で仕事を探すことになりました。その際、おかやま国体でカヌー競技の誘致を考えていた旧建部町から声を掛けていただき、国体選手を育成する仕事を兼ねながら海洋センターで働くようになりました。

 ■ 指導者としての腕を見込まれた依田さんですが、実際には選手としても国体に出場しました。その経緯を聞かせてください。

 ―学生時代の私はフラットウォーター(平水面)の選手でしたが、国体選手の育成ということでワイルドウォーター(急流下り)も学ぶ必要がありました。そのため、自らワイルドウォーターの練習をしたところ、そのおもしろさに魅せられてしまったというわけです。

 ■ おかやま国体では、ご夫婦それぞれで出場し、ともに優勝しています。妻の聡子さんとはどのような出会いがあったのですか。

 ―家内は、中学時代までB&G建部町海洋クラブでカヌーに乗り、いろいろなジュニアの大会に出ていました。しかし、高校に入った時点で海洋クラブは卒業ですから、高校生になった家内が新たな活動の場を求めて私のところにやってきたのです。

 そのため、一緒に練習しながら地元の国体を目指していきました。平成10年に就職し、平成14年に結婚、平成17年に地元国体が開催された順になります。

 ■ 選手としては、夫婦でどのように意識し合いましたか。

 ―大会に出るたびに、お互いの順位を比べ合うなど、多少はライバル心もありました。地元国体のとき、家内の調子は右肩上がりでしたが、私はすでに体力のピークを過ぎていて不安もありました。ですから、家内に負けず優勝することができてホッとしましたね(笑)。

新たな価値の発見

心配蘇生の実習に励む依田さん
心配蘇生の実習に励む依田さん。今回の研修では、海洋センター活動に必要なあらゆる教科を学びました
 ■ 海洋センターではどのような仕事に力を入れていますか。

 ―カヌー教室や海洋クラブの活動などで、子どもたちを連れて川下りをするようになってから、競技とはまた違ったカヌーの楽しさを見出すことができました。カヌーに乗れば歩いていけない対岸の岩場にもアプローチすることができるし、人の近寄らない岸辺で亀が甲羅干ししていたり、蛇が泳いでいたりといった自然の姿を垣間見ることができます。

 これはとても貴重な環境教育だと思います。大人の私でさえ、自然のなかに包まれた自分に感動しますからね。こうしたことの積み重ねによって、海洋センターに勤めるようになってから、レクリエーション活動の大切さを痛感するようになりました。自然体験活動は、人間としての視野を大きく広げてくれます。

全国規模の交流に感動

海洋レクリェーションの体験実習 シュノーケリング 高校時代までは水泳の選手だったため、シュノーケリングで海に入ったときは仲間が自然に依田さんを頼って集まってきました(中央が依田さん)
 ■ 就職したのが平成10年ですから、今回の指導者養成研修まで実に11年もの月日が流れた計算になります。どのようなことから今年の参加になったのですか。

 ―就職した当初は、地元国体を控えていたため参加する機会がありませんでした。その間は、町役場にセンター育成士の資格を持つ職員が複数いたので、いろいろ協力してもらいながら業務をこなしました。

 また、2年前にも研修に参加するつもりで健康診断を受けたのですが、その結果、心臓に問題があることが分かって参加できませんでした。その後、治療をしてペースメーカーを入れるなどの処置を済ませたため、やっと今回参加することができました。活動の一部に制限があったものの、教官に配慮していただきながら晴れて研修を終えることができました。

仲間と談笑する依田さん
異年齢同士で生活を共にすることで、普段ではできない貴重な交流を体験することができました。依田さんは、「研修で得た仲間は大きな財産です」と語っていました

 ■ その研修の感想を聞かせてください。

 ―ビート板なんて単なる練習器具だと思っていましたが、これを使って子どもたちに速く泳げる気分を体験させるといった指導方法を教えていただき、とても感激しました。ただ練習するのではなく、気持ちの面で子どもたちをリードしていくことの大切さを知りました。

 また、日々の生活が楽しくて仕方がありませんでした。異年齢同士で共に暮らす部屋割りによって、普段体験できないさまざまな年齢層の人たちと情報交換することができて、とても有意義でした。

 また、県内各海洋センターとの交流は事あるごとに行っていますが、この研修を通じて全国規模の交流ができました。ここで知り合った仲間とは、末永く交流が続いていくと思います。これは同じ海洋センターで働く者としての大きな財産になっていくはずです。

 ■ お話、いろいろありがとうございました。今後の活躍に期待しています。