シーカヤックマラソンへの出場を伝えられたのは、大会の四週間程前。本来私はスラローム・カナディアンの選手。カヤックで、しかも長距離レースへの出場というのは想定外。さすがにカヤックではカナディアンほど優れた技術を持つ訳でもないし…。救いは、ただ真っ直ぐ漕ぎさえすれば良いということ。成績を求められている訳ではないということもあり、短時間決戦のハーフ部門(16km)で完走を目指すことにした。
金曜日、奄美に到着。貸し出ししてもらったシーカヤックはポリ艇。完全無欠のレクリエーション艇で、重量はレース用シーカヤックの2倍、30kg。少し試乗しての感想は「驚くほど進まない…」。これは本当にハーフ部門にしておいて良かった、とホッとする。
日曜日、大会当日は大潮の引き潮に加え、台風の影響で風が強く波浪警報が出ており、激流下り専門の私には絶好のコンディション。雨交じりの曇り空で、体温上昇も抑えられそう。そうは言っても1時間を超えて休みなく漕ぎ続けた経験は皆無。心拍数をコントロールしながらオーバーペースだけは避けることにする。目標心拍数を140にセット。
強風とうねり・波によりスタート地点前で脱艇する選手もいる中、9時40分スタート。艇は重いものの、うねりの上下動を利用することでスピードを稼ぐ。心拍数は既に設定の140を超え、170前後。混雑するスタート近辺を抜けた後、心拍数を162に安定させ、艇の伸びを重視した高速巡航に切り替える。予定より大幅にペースは速いが、スピードを落とせば艇の重量で余計に体力を奪われてしまう。ハイペースを維持しながら、エネルギー切れを起こす前にゴールしてしまおうと決めた。
奄美大島から加計呂麻島への海峡横断は、「川のように流れている」との主催者の話であったが、特に感じることなく渡りきる。加計呂麻島に渡るとコースは湾内の静水が主になり、重量級の艇は全く進んでくれない。休むことないパドリングの連続で、顔も体もひどく火照る。手を使わずに水が飲めるパックを用意していたので、給水しながら漕ぎ続けた。
ラストは加計呂麻島から奄美大島へ横断する航路。風と細かい波の連続で艇が直進してくれない。ラダーの使い方が分からないため、下ろさなかったのが失敗か。直進より修正ストロークの連続で最も時間を失った区間だった。
ゴールの古仁屋港には1時間40分で到着。3位だった。漕力があれば、どれほど不利な状況でも勝てるはず。そう思うとまったく自分の力不足だと思った。初のシーカヤックマラソンは、私にとって屈辱的な成績で終わった。
出場を聞かされたときは、自分の専門分野でもないしのんびり完漕すればいいと思っていたけれど、現地ではついついムキになってしまい、結構一所懸命になって楽しんでしまった。
|