水辺を学ぶ ヨット講座

小松一憲のヨット講座 オリンピック出場4回、2004年アテネオリンピック日本選手団監督

Lesson9 セーリングのいろいろなパターン

アビーム(横風)など、風上、風下航以外の走らせ方について学びます。

(1)アビーム(横風航)について

 真横から風を受けるアビームは、もっともスピードが出る走りです。セールの張り出し角度は、クローズホールドより開いた状態になり、ヒールもクローズホールドよりは緩めになります。

 風に押されて艇が横流れする度合い(リーウェイと言います)もクローズホールドより少なくなるため、状況に応じてセンターボードを少し引き上げ、水流の抵抗を抑えることができますが、まずはセンターボートを完全に挿したまま走り、アビームの感覚を身につけてください。

名称

アビーム

アビームの走り(1.15KB)

(2)クローズホールドでヒールがきつい場合

 細かく分けると、クローズホールドとアビームの間に、クローズリーチという走りもあります。

 クローズドホールドよりスピードは出ますが、風上に対する上り角度は緩くなる一方、風に押されて横流れする度合いは減るので、ヒールは緩くなります。そのため、風が強くてクローズホールドで走るとヒールがきつい場合は、多少バウを風下に落とし、セールも多少開いて、クローズリーチの走りを選びます。

 風上の目的地に向かう場合、クローズホールドで風上に対する角度を稼ぐか、あるいは角度は稼げないものの、クローズリーチでスピードを稼ぐか、どちらかの道を選ぶことになります。前者の場合、タッキングの数は少なくて済みますが、後者は多くなります。

動画 アビームからクローズリーチにかけての走り(826KB)

(3)クォーターリーの走り

 追い風を受けて走るランニングでは、ワイルドジャイブの危険性があることをレッスン7で述べましたが、ランニングとアビームの中間位置にあたるクォーターリーで走ると、ワイルドジャイブの危険性は減り、ローリングも少なくなって安定した走りが得られます。スピードも、ランニングに比べてかなり速くなります。

 クォーターリーの場合、進行方向やセールの開き具合は、ランニングとアビームの中間になります。バウの向きはランニングより多少風上方向、セールも多少閉じることになります。

 風下に目的地がある場合、ランニングではジャイビングの回数が少ない最短距離で走ることができますが、風が強く波が荒いときはローリングの多い不安定した走りになります。その一方、クォーターリーではジャイビングの数は増えますが、スピードのある安定した走りが得られます。

動画 クォーターリーの走り(924KB)