水辺を学ぶ ヨット講座

小松一憲のヨット講座 オリンピック出場4回、2004年アテネオリンピック日本選手団監督

Lesson8 ジャイビング(風下航での方向転換)

ランニングで走りながら方向転換する手順について学びます。

(1)タッキングとの違い

 ランニングの態勢から、セールを展開する舷を変えて方向転換することをジャイビングと言います。クローズホールドから方向転換するタッキングと異なるのは、レッスン7でも述べたように、うっかりするとワイルドジャイブを起こしてしまう点にあります。

 タッキングでは、バウが風上に向いて、いったんセールが風をはらまない状態になってから、ふたたび風をはらんでいきますので、方向転換中にブームが勢いよく回転することはまずありません。

 しかし、ジャイビングは風下に向かって追い風を受けた状態、つまり常にセールが風をはらんだ状態で方向転換することになりますから、ブームは勢いよく回転します。しかも、艇の外に大きく張り出したセールを反対舷に移すわけですから、ブームが移動する距離も、クローズホールドの比ではありません。風が強いときは、艇のバランスに始終注意するよう心掛け、ブームが回転するときは 腰を屈め頭を低くして頭上を通過させます。

 写真は、舵を風下側に切りながらジャイビングの態勢に入ろうとしているところです。視線はブームの動きを捉え、体はいつでも動ける状態にしています。

ランニング

(2)ジャイビングの手順

1:ティラー(ティラーエクステンション)を引いて、バウを風下側(セールが展開している舷側)に、ゆっくり向けていきます。体は、いつでも動ける状態にしています。
2:バウが風下側に振れるにつれ、セールに裏風が入ってきます。ジャイビングに慣れてくると、シートを手でつかんで強制的にセールを反対舷側に送り出すことができます。この方法を取ると、回転しようとするブームの勢いを抑えることができます。最初は、微風の状況で練習してください。
3:セールの裏に風が完全に回り込むと、ブームは反対舷側に勢いよく移動するので、それに合わせて舵を持つ手を変えながら体も反対舷側に移ります。頭を低くして、ブームにぶつからないようにしてください。
4:セールが反対舷側で風をはらんだことを確認しながら、体を使って艇のバランスを整えます。
5:舵を中央の位置に戻し、新しいコースを保ちます。

ジャイビング

(3)ジャイビングの実践

 ジャイビングが上手くできるかどうかは、ブームが回転する際、いかに艇のバランスを保つことができるかにあります。風の弱い日を選んで練習を重ね、慣れるにしたがって風の強いコンディションを経験するようにしてください。

 ジャイビングの動画は2点用意しました。タッキングと異なり、方向転換といっても大きく舵を切ることはありません。少しバウの向きを変えるだけで、ブームは勢いよく反対舷側に回っていきます。ブームやセールの動き、乗員のポジショニングなどを参考にしてください。

動画 ジャイビングの動作その1(465KB)