水辺を学ぶ ヨット講座

小松一憲のヨット講座 オリンピック出場4回、2004年アテネオリンピック日本選手団監督

Lesson7 ランニング(風下航)

風下に向かう、ランニングの走りを学びます。

(1)ランニングの特徴

ヨットの帆走名称

 ランニングでは真後ろから風を受けて走るため、セールを艇の外、左右どちらかに向かっていっぱいに開きます。いわゆる帆掛け舟の状態にするわけなので簡単そうに見えますが、実はランニングとはヨットなかで一番難しい走らせ方です。 セールを艇の左右、どちらか一方に向かっていっぱい開くということは、艇の左右のバランスが非常に取りにくいということで、波を受けるたびにローリング(横に振れること)しやすくなります。

ローリングのためにセールを展開していない舷が下がると、ブームもその舷側に振れてきます。そうなると、セールの裏側(風を受けていない側)にも風が巻 き込んでくるようになり、その風圧でブームは反対舷に向かって勢いよく回転してしまいます。目一杯展開されていたブームとセールが、いきなり反対舷に向 かって回転するわけですから、艇は大きくバランスを崩し、うっかりすると乗員もブームに頭をぶつけてしまいます。

 これはワイルドジャイブという危険な現象で、ローリングによって起きるほか、風向きが変わってセールに裏風が入ったときや、舵を風下側(セールを展開している舷側)に切りすぎたときにも起きます。

セールと裏風の関係

その1

その2

艇の向きが振れるとセールに裏風が入る

その3

裏風を受けたセール(ブーム)が勢いよく反対舷に向かって回転する

(2)ランニング時の姿勢

 ワイルドジャイブを防ぐため、ランニングと言っても実際には真後ろではなく、いくらか角度をつけてセールも多少詰めた状態で走ることが少なくありません。

 それでも、注意していないとセールに裏風が入ってきますから、ランニングで走るときは注意が必要です。

 裏風が入り始めると、艇の前方に向かってしっかりふくらんでいたセールの端が、たわんできます。そんな状態になったら、セールがふたたびしっかりふくらみを持つまで 舵を風上側(セールを展開していない舷側)に向かって少しずつ切り、それに合わせてメインシートも詰めてください。この動作は、実際に海に出て経験を重ねることで習得することができます。

 また、ランニング時はいつでも動けるような状態で座り、ローリングに合わせて微妙に体の位置を変えながら艇のバランスを取るようにします。

いつでも動けるような体勢で

(3)ランニングの実践


 風が強いときは、ワイルドジャイブが危険なので、多少角度を持たせた走らせ方が無難です。ローリングに備え、いつでも動かせるようにして座り、ワイルドジャイブで頭をブームにぶつけないよう、なるべく頭は低く保ちます。
 舵は中央に保ちますが、ローリングや風向きの変化に応じて艇の向きを常に調整していきます。

 ランニングの走りをイメージしやすいよう、2点の動画を用意しましたので参考にしてください。

動画 ランニング航行その1(1.02MB)


動画 ランニング航行その2(551KB)