水辺を学ぶ ヨット講座

小松一憲のヨット講座 オリンピック出場4回、2004年アテネオリンピック日本選手団監督

Lesson5 クローズホールド(風上航)

風上に向かって切りあがる、クローズホールドの走りを学びます。

(1)クローズホールドにおける、風とセールの関係

ヨットの帆走名称

 艇の種類にもよりますが、多くのヨットが風上に対して約45度の角度まで切り上がって進むことができます。

 このとき、艇は斜め前方から風を受け、セール(ブーム)は艇の斜め後方に向かって展開されます。セールに向かって風が吹く方向を、風上サイド、または上サイド(かみサイド)と呼び、風を受けたセールの裏方向を、風下サイド、または下サイド(しもサイド)と呼びます。これはクローズホールド以外の走りでも使いますので、頭に入れておいてください。

 また、斜め前方から風を受けるため、ハル(艇体)は風下サイドに向かって押されるように傾斜(ヒール)します。傾斜し過ぎると艇はバランスを崩して横転してしまいますから、写真のように乗員が風上サイドのデッキに体を乗り出し、体重を使って傾斜の度合いをコントロールします。これを、ハイクアウトと呼びます。

風向き

(2)クローズホールドにおける姿勢の取り方

 微風で艇がヒールしないかぎり、乗員は風上サイドに座ってティラーとメインシートを手に持ちます。映像のように風があって艇がヒールしやすいときは、乗員はデッキから体を出すような姿勢を取り、ティラーから離れた位置でも舵取りができるよう、ティラーエクステンションを使います。

 走る目標を定めたら、舵は正対(真っ直ぐの位置)させ、風の強弱、波の影響などに合わせて微調整していきます。ティラーエクステンションを体の方向に引けば、艇は風下サイドへ向かい、押せば風上サイドへ向かいます。

動画 クローズホールドの走行(861KB)

(3)ハイクアウトの仕方

 風が吹いて艇のヒールが強くなったら、体をデッキの外に乗り出してハイクアウトし、艇のバランスを整えます。ハイクアウトをしてもヒールがきついときは、メインシートを緩めてセールを少し開いた状態にして風を逃がすほか、ティラーエクステンションを押してバウを少し風上サイドに向けて走ります。

 風を逃がしたり、バウを少し風上サイドに向けたりすると、それまでのヒールが急に変化するので、その動きに応じてハイクアウトの量を調整して艇のバランスを崩さないようにしてください。この動作は、練習を通じて体感できるようになっていきます。

動画 ハイクアウトの走行(822KB)