水辺を学ぶ ヨット講座

小松一憲のヨット講座 オリンピック出場4回、2004年アテネオリンピック日本選手団監督

Lesson2 セーリングの原理

風上に向かって進むヨット

 ヨットは、どのように風を使って走るのでしょうか?

 風に押されて走ることは容易に想像できますが、これでは風下方向だけしか進むことができません。

 実際には、風上に対して約45度(性能の良い競技艇は、それ以上)の角度まで進むことができ、風上に向かって右斜め45度の方向に進んだら、今度は左斜め45度の方向に進むといった、ジグザグの進路を取ることで、最終的には風上に位置する目的地に到達します。

ジグザクの進路

揚力の原理

  なぜ、風上約45度の角度まで進むことができるのかといえば、ヨットのセールが飛行機の翼と同じような仕事をするからです。

動画 (1.89MB)


 これは、湾曲面に風が当たった際、揚力と呼ばれる力が生じるためで、風が強い日に傘が舞い上がってしまうのも湾曲面を持つ傘が揚力を発生させたために起きる現象です。 湾曲した翼の上面を流れる空気は、下面に比べて速度が増して気圧が下がります。翼は、上下の面に生じたこの気圧差によって浮かび上がろうとするのです。

飛行機の翼

飛行機は翼が発生する揚力を利用して上昇することができます

セールへの応用

 飛行機は翼の揚力を利用して上昇しますが、ヨットはセールに生じた揚力を利用して風上方向へ進みます。そのメカニズムについては、ヨットとセールの位置関係を真上から見ながら解説した、下記の動画をご覧ください。

動画 (2.11MB)


 湾曲面を持つセールに風が当たると「揚力A」が生まれ、これはヨットを横に押し流そうとする「抗力B」と、ヨットを前進させる「推力C」に分けて考えることができます。
 ディンギーには、横流れを防ぐためにセンターボードという可動式の指し板が用意されており、風上に向かって走る際にセンターボードを水中に出すことで、横流れ、すなわち「抗力B」を低減させることができます。そのため、「推力C」の力が発揮されることになって、ヨットが前に進むのです。

 なお、風上に向かう角度が45度以上になると、「抗力B」の力が「推力C」を上回るようになるため、ヨットは思うよう進めなくなってしまい、セールも風をはらみにくくなって湾曲面が崩れ、羽ばたくようになってしまいます。これはストールと言って、飛行機でいう失速の状態にあたります。

ディンギーのセンターボード

ディンギーのセンターボード

いろいろなセーリングの方法

 ヨットは、風上や風下に進むほかにも、舵を切ったり風に対するセールの開き具合を調整したりしながら、さまざまな方向に走ることができます。
注)それぞれの走らせ方については、後のレッスンで細かく紹介します。

クローズホールド(風上航)

いま述べてきた、風上約45度まで切り上がって進む走らせ方です。横流れする力を強く受けるため、ヨットは風下方向へ押されてヒール(傾斜)しながら走ります。

アビーム(横風航)

風を真横に受けながら進む走らせ方です。横に流される「抗力B」が少なくなるため、スピードを出すことができます。

ランニング(風下航)

風を真後ろから受けて走る方法です。横流れの力を受けないのでヒールはしませんが、艇が左右に振られるローリングが発生して、舵さばきが難しくなります。また、風に押される力のみで揚力が利用できないため、スピードはあまり出ません。

クローズリーチ、クォータリング(クォータリー)

クローズホールドとアビームの中間位置で走ることをクローズリーチといい、クローズホールドより少ないヒールで走ることができます。また、クォータリングは船尾斜め方向から風を受ける走らせ方で、ランニングよりローリングを抑えることができます。

名称

ヨットの帆走名称