水辺を学ぶ カヌー講座

持田雅誠のカヌー講座 11年連続カヌー日本代表 アトランタンオリンピック日本代表

Lesson8 エスキモーロールに挑戦!

Chapter23 エスキモーロールに挑戦してみよう!

 Lesson7の「リカバリー」はできるようになったでしょうか?しかし、カヌーをやっていると、リカバリーが間に合わずに沈(転覆)する事がしょっちゅうあります。冷たい湖や、流れの速い川で沈すると、体が冷えたりケガをする恐れがあります。そうならないように、脱艇せずに沈から起き上がるのが、エスキモー ロールです。
 ここでは、エスキモー ロールの中でもすばやく起き上がれて使いやすい、ショート ロール(スウィープ ロール、スクリュー ロールとも呼ぶ)を身につけてみましょう。
 また、エスキモー ロールをする時にはスプレーカバーというコクピットを覆うカバーをしないと、カヌーに水が入ってきてしまいます。

ショート ロールのフォーム(右側から起き上がる場合)

1:胸がバウデッキにつくくらい、思い切り前傾する。
2:パドルを左のカップリングに沿わせ、左手は腰の横、右手はバウデッキの前の方に持っていく。
3:右手首を内側に大きく折る(猫の手のような形にする)。そうすることで、ブレードの内側が左斜め横に向くので、確認すること。

ショート ロールの動き(右側から起き上がる場合)

1:まずは右側に沈してみる。
2:右手のブレードを水面に出す。この時必ず手首を内側に折って、「猫手」にしておく事!
3:スウィープと同じく、前から半円を描くように、水面でパドルを動かす。スウィープのように体をひねるだけではなく、ひねりながら体を後ろまで倒して良い。とにかく体を大きく使おう!
4:スウィープをすることで抵抗が生まれるので、それをきっかけにして右ヒザを持ち上げ、カヌーを起こす
5:パドルの抵抗を利用して、カヌー → 腰 → 左肩 → 最後に頭 という順番で起き上がる。

ポイント
  • Chapter22のスウィープ リカバリーと動きは同じ。
  • ブレードはなるべく長い間水面で動かすようにする。
  • なるべくブレードに頼らないで、ヒザの動きでバランスを回復すること。
  • 頭を水から遠ざけようとして高い位置にもってくると、逆に安定が悪くなる。「頭は最後」と覚えておこう!
  • スウィープと同じように、しっかり体をねじる。
  • 復元力が足りないときは、最後に体を後ろに傾けてスターンまでブレードを寄せる。

動画 ショートロール前から (1.16MB)


動画 ショートロール横から (1.44MB)


動画 ショートロール上から (685KB)


エスキモー ロールの練習方法

 エスキモー ロールは、パドルに手ごたえがある間にヒザの返しでカヌーを起こすテクニックです。一番多い間違いは、パドルに全体重をかけてしまって、力ずくで起きようとすることです。水は地面やコンクリートとは違い、しっかりとつかむ事はできません。上半身から力を抜き、ゆっくりと大きく動かして、ヒザの返しで起き上がりましょう。
 初めはパドルを持たないで、プールの壁や桟橋のはじっこ、または友達のカヌーの先端を持って、カヌーをヒザで起こす練習をしましょう。あくまでも、手の力を使って起き上がるのではなく、ヒザの返しで起き上がります。

動画 エスキモー ロールの練習方法 (1.29MB)

Chapter24 ドロー ストロークで横移動

 これまでのフォワードやリバース ストロークでは、カヌーを前後に進めました。実は、カヌーは真横にも進むことができます。フォワードのように力強く、速く漕ぐ事はできませんが、プールのように狭いところで小回りを効かせるには便利な技術です。

ドロー ストロークのフォーム(右側へ進む場合)

1:体を腰から右にひねって、上半身が右を向くようにする。
2:右手を大きく右真横に伸ばす。ブレードの内側がカヌーの方を向くようにする。
3:左手は体の左側ではなく、右側に持ってくる。パドルがしっかりと立つように、頭より高い位置に置く。

ドロー ストロークの動き(右側へ進む場合)

1:大きく右側に伸ばしたブレードを、ネックまでしっかり水面に入れる。
2:そのままカヌーの近くまでブレードを引き寄せる。
3:カップリングの近くまで寄せたら、ブレードを上方向に引き抜く。
4:手のひらがカヌーの真正面を向くようにパドルを持つ。
5:1~3を繰り返す。

ポイント
  • カヌーをピタっと平らにする。傾けたり、グラグラさせない。
  • 上半身を安定させて、動かさないこと。
  • 胸が前を向いているのではなく、右に向くように体をしっかりひねる。

動画 ドローストローク (1.12MB)


動画 ブレードの動き (1.4MB)

Chapter25 スカーリングで横移動

 ドロー ストロークでは一回ごとに水からブレードを抜いていましたが、スカーリングはブレードを水から抜かず、なめらかなうごきでカヌーを横移動させるテクニックです。
 ブレードの動かし方が特殊なため少し難しいですが、次回のLessonで行うバウ ラダーやバウ ドローの動かし方と似ているので、ここで練習しておくと、この先ハイテクニックを覚えるのが楽になります。単純にブレードを引いたり押したりするのではなく、斜めに動かすテクニックです。

スカーリングのフォーム(右側へ進む場合)

1:体を直立し、腰を右にひねって上半身が右を向くようにする。
2:右手を伸ばしてブレードをヒザの横に入れる。ブレードの内側が艇に向くようにし、艇に対して平行にする(ブレードの左端が前、右端が後ろを向く)。
3:左手は体の左側ではなく、右側に持ってくる。パドルがしっかりと立つように、頭より高い位置に置く。

スカーリングの動き(右側へ進む場合)

1:艇と平行にしてヒザの横に入れたブレードを「後ろに開く」(前=左端を艇に近づけ、後ろ=右端を艇から遠ざけた状態)。角度は艇に対して45°位にする。
2:後ろに開いたブレードを、斜め後ろ(艇から遠くへ)に引いていく。
3:後ろまで引いたら、艇に引き寄せる。その時ブレードはコクピットの後ろにくる。
4:コクピットの横にあるブレードを「前に開く」(前=左端を艇から遠ざけ、後ろ=右端を艇に近づけた状態)。角度は艇に対して45°位にする。
5:前に開いたブレードを、斜め前(艇から遠くへ)に引いていく。
6:前まで引いたら、艇に引き寄せる。その時ブレードはコクピットの前にくる。
7:1~6を繰り返す。

ポイント
  • カヌーをピタっと平らにする。傾けたり、グラグラさせない。
  • 上半身を安定させて、動かさないこと。
  • 胸が前を向いているのではなく、右に向くように体をしっかりひねる。

スカーリングの練習方法

 スカーリングはブレードの動かし方が特殊なので、まずはカヌーに乗らず、プールの壁や桟橋などからブレードを水に入れ、動かし方の練習をしましょう。  また、艇が動くのは3と6の時ではなく、2と5の時というのも分かりにくいところです。まずは陸上で練習してみて、手ごたえをつかんでみましょう!

動画 スカーリング (1.33MB)


動画 ブレードの動き (868KB)