コミュニティモデル事業の2年を振り返って ~熊本県湯前町~


2015年度から「海洋センターを活用した地域コミュニティの再生に関するモデル事業」に取り組み始め、丸2年が経過しました。

今回は湯前町の担当 工藤 陽平さん(AD12回)にこの事業を振り返ってもらいました。

 

「B&G海洋センターを地域コミュニティの拠点に…」をスローガンに始まった「海洋センターを活用した地域コミュニティの再生に関するモデル事業」(以下「モデル事業」)に取組み、早くも3年目を迎えました。

 

2年前までの海洋センターと言えば、ある程度決まったスポーツ愛好者や競技団体の練習会場、そして子ども達の憩いの場という状況でした。施設としても建設から30年が経過し、老朽化も進んだ中で、固定した事業で展開していました。

 

2015年から始まったモデル事業で、まず取り組んだのがロビーの拡充です。

 

2015年までの4年間、担当者として海洋センターの事務所に勤めていましたが「窓口の暗さや交流の場であるロビーが寂しい…」と感じていたからです。また、「せっかく尋ねて来られた方を繋ぎ止める場所が欲しい」という思いもあり、ロビーの拡充に着手しました。

 

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旧ロビー(上)と事業計画用に作成したイメージ図(下)

旧ロビー(上)と事業計画用に作成したイメージ図(下)

 

新しくなったロビーでくつろぐ子どもたち

新しくなったロビーでくつろぐ子どもたち

 

2016年度にはキッズスペース、新しくなった更衣室には授乳スペースとおむつ交換台を設置しました

2016年度にはキッズスペース、新しくなった更衣室には授乳スペースとおむつ交換台を設置しました

 

これまではロビーは少人数の休憩スペースでしかありませんでしたが、ロビーの拡充により憩いの場でありながら教室や体験の場へと、利用形態が大きく変わりました。

 

モデル事業に取り組む前の高齢者向けの教室といえば保健センターが会場でしたが、海洋センターの居住性が向上したことから、今では海洋センターで定期的に開催されるようになりました。

 

しかも、これまでは担当部署が企画運営していた教室も、各地区の老人会が主体となって行われるようになり、住民自ら健康づくりに取り組むようになりました。

 

それにつられるように「もっと参加したい」という要望も増え、地区ごとに仲間が集まり、教室を開催するグループも増えてきています。

 

行政が企画・広報・実施をしていた事業も徐々に住民主導で開催されるようになり、より多くの高齢者の方が海洋センターを拠点とした活動に参加しています。

 

ロビーに設置したテレビで映像を観ながら運動をする参加者

ロビーに設置したテレビで映像を観ながら運動をする参加者

 

2017年度からは保健福祉課の事業として「いきいきB&Gクラブ」が新たにスタート!

 

「いきいきB&Gクラブ」は生活機能低下改善の実施と要介護状態を防ぐことを目的とし、短期集中的に運動機能や認知機能及び口腔機能を改善するために講師を派遣する教室となっています。初回は運動能力の測定を実施し、今後は週に一回のペースで医療機関や地域包括支援センターの協力を得て、毎週テーマに沿った講師の方にお越しいただき多様な教室を予定しています。

 

海洋センターは憩いの場としての活用だけに止まらず「運動をしたいけれども何をすればいいか分からない」「どこに行けば自分の身体のことを知れるの?」といった方々への要望に応えるため、トレーニングルームを整備。教室でも活用すると共に個人利用者向けにも開放しています。

 

中でも、モデル事業1年目で導入した「体成分分析器」は身体の筋肉量を両手脚、胴体の5つの部位で確認することができ、カロリー処方を行うことが可能です。自身の身体を数値化することで目に見える結果として示すことが可能になり、日頃からスポーツに親しまれている方は勿論ですが「これから運動を始めたい」「目標が欲しい」という健康づくりを始められた方々への海洋センターを利用するきっかけとなるデータを示すことが出来ました。

 

お互いの測定結果を示し合う参加者の皆さん

お互いの測定結果を示し合う参加者の皆さん

 

一緒に体力測定も行います

一緒に体力測定も行います

 

健康診断のような精密な結果は提示できませんが、個人の身体の全体的なバランスや、一日に必要な運動量とカロリー調整値が目に見えることで、結果を楽しみに教室に参加されるようになりました。

 

また、これまで指導者としても様々な世代の方から相談を受ける場面で、具体的な回答が出来ませんでしたが、運動処方など参加者個人にフィードバックすることで活用が促進されています。

 

世代間の交流を目指した2016年度。「海洋センター = 体育館・プール」というイメージを変えることにも取り組みました。

 

憩いの場としての機能を充実させるために「珈琲教室」を開催。器材の貸出を実施するなど文化活動にも活用いただいています。

 

また、ロビーに設置した大型テレビでは町出身の選手が出場した駅伝大会や郷土芸能の模様を収めた動画を保存・上映するなど、集いの機会を創出してきました。

 

また、赤ちゃんサークルでの「ヒメトレ」(骨盤体操等)やICTを活用した配信教室等、新しい取り組みにより、多くの方や組織との連携に繋がり、担当者として交流の多い2年間になりました。

 

赤ちゃんサークルで拡がるトランポリン

赤ちゃんサークルで拡がるトランポリン

 

熊本市のフィットネスジムと繋がる配信教室

熊本市のフィットネスジムと繋がる配信教室

 

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珈琲教室の様子

珈琲教室の様子

 

住民の方々の交流も深まっていますが、運営側としても、外部の方々との繋がりや行政内での横断的な取組のきっかけづくりにもなりました。今後も熊本大学の学生さんや地域医療関係の方々、地域イベントの実行委員会の方々等、これからも協働で事業を行うことが出来るのをとても楽しみにしています。初めてのことばかりで戸惑うことも多い2年間でしたが、この2年間で得た成果は地域においても貴重なものだと確信しています。

 

モデル事業の中で地域リーダーの担い手を育成してきましたので、3年目の今年は早速、活用して事業を実施していきます。徐々に地域住民の皆さんが、自らのために参加するコミュニティの形成に繋げるとともに、これまでに形成されたグループが更に発展できれば幸いです。

 

簡単にこれまで取り組んできた事業を紹介しましたが、この2年間で感じていたことは「楽しい!」ということです。もちろん既存の事業を抱えながらの運営でしたので、大変なことも多くありましたし、担当者としてできることの限界やこちらの都合でしか動けない場面もあり、至らない点も多々ありました。しかし、思い描いたことをここまで形にでき、地域住民の方が希望されていることをお手伝いできるという機会は、このモデル事業を通じてしか体験することが出来なかった事です。そういった意味でも非常に充実した、「楽しい」2年間でした。

 

2017年度からは「地域おこし協力隊」のバックアップをいただき、2馬力で事業展開に取り組んでいくこととなりました。大変心強い味方ができましたので、これまで形成してきたコミュニティを「自立」へと発展させると共に、大学生や地域団体・住民の皆さんとの協働により地域の自然環境を活かしたSUP体験会、2016年度に作成したカロリーマップ活用を目的としたウォーキングイベントを実施するなど、新たな地域資源の活用にも取り組んでいきます。

 

この2年間で、多くの方々との繋がりが増え、施設の在り方、担当職員としての在り方までも変わりつつあります。3年目。これから迎える「変化」が非常に楽しみです。

 

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事業部 事業課

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