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No.006:静岡県掛川市 松井 三郎 市長 海洋センターを多目的化し、市民に健康と活力を提供
2017.08.08 UP

プロフィール 松井 三郎(まつい さぶろう)市長
1946年生まれ。70歳。掛川市青葉台に在住。
掛川西高校 卒業
早稲田大学政治経済学部政治学科 卒業
静岡県 勤務
旧大須賀町 出向
旧大須賀町助役 就任
静岡県 帰任
静岡県議会議員 当選(当選2回5年9カ月間)
掛川市長 当選(当選3回:3期目)



後編:希望が見えるまち・誰もが住みたくなるまち掛川

掛川市は、静岡県の2大都市である静岡市と浜松市の中間に位置し、新幹線掛川駅を有するなど広域交通拠点として発展しているほか、豊かな自然環境や多くの歴史文化資産に恵まれ、お祭りが盛んなまちとしても知られています。同市の総合計画では、市の将来像に「希望が見えるまち・誰もが住みたくなるまち掛川」を掲げ、新しい公共モデルの創設を見据えた「協働のまちづくり」を推進しています。今年度は、「仕事づくり」や「子育て支援」を重点課題とした施策を進めるとともに、交流人口の増大や移住・定住の促進につなげるため、市の魅力を国内外に発信するシティプロモーションにも注力しています。今回は、海洋センターとの連携や、市の特徴や伝統を生かした、新たなまちづくりの工夫などについて、松井三郎掛川市長にお話しを伺いました。

「世界農業遺産」認定の茶や歴史的伝統を市の誇りに

- 掛川市の特産はやはり「お茶」でしょうか? -

 掛川市は、日本有数の茶処として知られ、「お茶のまち」として、皆様に認識していただいております。また、お茶の伝統的栽培方法「静岡の茶草場農法」が平成25年5月に世界農業遺産に認定され、全国茶品評会深蒸し煎茶の部において、10年連続で「産地賞1位」を獲得しました。今後の掛川茶のキーワードは「美味しい」「健康」「環境」の3つであると考えております。「美味しい」は全国茶品評会で産地賞の受賞を続けることにより、掛川茶が日本一美味しいお茶であるということです。二つ目の「健康」は緑茶の効能をしっかりと活用し、情報発信していくこと、そして、3つ目の「環境」は世界農業遺産「静岡の茶草場の農法」の伝統を守り、受け継ぎ、経済と両立する形で保全されている自然環境の価値を伝えていくことです。

 また、平成27年には、掛川茶をローマ法王に献上させていただくなど、国内はもとより世界にも情報発信し、掛川茶のブランド力のさらなる向上に努めています。

- 歴史的なまちの魅力もあるようですね -

 掛川市の人口は12万人弱ですが、江戸時代には藩が市に二つ置かれていたほか、掛川城、横須賀城、高天神城という、かなり大規模で有名な城や城跡が三つも残っております。こうした城は、戦国時代に名をはせた、武田、徳川、今川らの武将らが「このまちを拠点としたい」と挑み造られたものであり、特に武田は「海」を持つ領地を占領したいと考えていました。

高天神城は、「高天神を制するものは遠州を制する」といわれた山城で、武田と徳川が激しい奪い合いを繰り広げた地であります。徳川の支配下になった高天神城を、武田が奪い、その後、徳川は高天神城を囲む六つの砦を造り、高天神城を奪い返そうとするなど、激しい戦いが繰り広げられました。また、横須賀城は、徳川家康がこの高天神城を攻略するために造った城であり、高天神城の攻略のため、立派な城を造り攻勢をかけたわけです。

 まさに当時は、武田、徳川、今川の三武将がいろいろ知恵と戦略を出して掛川の城の争奪戦をしていたのです。

- 歴史と伝統がある市だけに「祭り」も盛んと聞きますが -

 また、掛川市には、江戸時代から歴史と伝統を誇る祭りがたくさんあります。2005年4月1日に、旧掛川市、大東町と大須賀町の1市2町が合併して、現在の「掛川市」となりました。まず、旧掛川市の中心街では、掛川祭が毎年10月に開催され、3年に1度は掛川大祭となります。来年の2018年が大祭にあたり、「大獅子」が城下を練り歩きます。また、南部にある横須賀城の城下祭りで、江戸天下祭を継承している唯一の祭りで「祢里」と呼ばれる山車の曳き回しが行われる遠州横須賀三熊野神社大祭があります。この山車は一本柱万度型といわれ、周辺に花飾りなどがあり、江戸城に入って将軍に拝謁できた、唯一の山車となっています。城に神輿は入ることが出来ますが、一本柱ということで、それを寝かすことができるようになっているのです。山車が残っているのが、この掛川の横須賀の祭りになります。当時の老中をつとめていた横須賀藩の藩主が江戸天下祭の祭り文化を伝えたとされています。

 また、南部の大東には「潮騒橋」という大変素晴らしい姿をした橋があります。掛川市と隣市の菊川市を流れる一級河川である菊川から海へ流れ出る河川に架けられたもので、平成7年8月に開通しました。太平洋岸自転車道の一つである県道浜松御前崎自転車道線の橋として、自転車と歩行者専用の橋になっています。平成7年度第8回静岡県都市景観賞優秀賞も受賞しています。

「かけがわ茶エンナーレ」が文化芸術活動のシンボルに

- 茶産地の特徴を生かしてどのような文化活動が行われているのでしょうか? -

 掛川市では、今年度、日本有数の茶産地を舞台にした地域芸術祭「かけがわ茶エンナーレ」というイベントを初めて開催します。期間は、10月21日から11月19日までです。このイベントは、掛川市が世界に誇る「茶・茶文化」と「アート」を融合させた芸術文化祭で、市民と地域と芸術家が協働して、掛川市を舞台に芸術作品の展示やパフォーマンスなどの多彩なプログラムが展開されます。

 国内外で活躍する芸術家20人+1組が、掛川駅周辺の市街地に優れた現在アート作品を展示してもらうほか、市内6つのエリアで、市民・団体・地元芸術家が中心となった、地域芸術イベントも開催します。掛川市は茶の生産が主要産業ですので、茶文化を中心に据えつつ、様々な文化芸術活動をする、文化の香りの高い掛川になるように、イベントを開催していきます。

 そのかけがわ茶エンナーレに向けて、茶にまつわる伝統美を紹介しようと、熱海市にあるMOA美術館の協力をいただき、7月15日から8月27日までの間、掛川市二の丸美術館に、MOA美術館からお借りした「黄金の茶室」が展示されています。これは戦国時代に豊臣秀吉が贅の限りを尽くし「金ずくめ」の茶室を造ったとされ、当時、正親町天皇を招き入れ接待を行ったとされています。秀吉の最後の砦である大坂城が落城した際に、黄金の茶室は消滅したものの、それをいろいろな資料に基づき復元されたものが、今回、掛川市二の丸美術館で展示されています。

「シティプロモーション」課を新設し、市の魅力を創生発信!

- 掛川市の魅力を今後どのようにアピールしていきますか? -

 市の情報発信手段として様々なことが考えられますが、30年前のやり方を顧みると、広報誌を配るというぐらいしか方法がありませんでした。現在は、いろんな情報発信の機能をフル活用し、掛川をご理解いただき、より多くの方々に訪問していただけるよう、可能な限りの情報を市民や全国、そして世界へと発信したいと考えています。そのため、市では今年度、「シティプロモーション課」を新設し、様々な手段により情報発信を行っております。その一環として、『輝くかけがわ応援大使』という、市の魅力や情報を国内外に発信していただける方々を、世界で50人、国内で50人の計100人を目標にお願いしており、現在26人の方に『大使』に就任していただきました。

市の情報を発信していただく一方で、世界の応援大使には、世界各地から良い情報が入手できれば、掛川に届けていただけるという、メリットもあります。この世界で活躍する応援大使の第1号が、バチカン市国のモンテリーズィ枢機卿です。このほかにも世界的に有名な歌手であるスキップ・マーティン氏や、パラリンピックメダリストの山本篤さんなどにも『大使』になっていただいております。今後は、さらにいろいろな方に『大使』になっていただき、市の応援団として活躍していただきたいですね。

- 市内にゆかりのあるスポーツ選手で活躍されている方はいらっしゃいますか? -

 国内外で活躍している選手として、まず、スノーボードの三木つばきさんがいます。掛川の海洋クラブで以前、カヌーを漕いでいました。現在中学2年生で、冬になると国内外のプロスノーボーダーの大会に出場しています。既に、スノーボードの世界では、大変素晴らしい成績を収めていますが、今度の韓国の冬季オリンピック、ピョンチャン大会には、年齢制限により、残念ながら出場が叶わないそうです。

 また、パラリンピックでは、走り幅跳びで銀メダルを取得した山本篤さんがいます。現在、山本さんは掛川に住んでいませんが、高校まで掛川で生活をしていました。

 その他にも、掛川B&Gで海洋性スポーツを始め、セーリング競技OP級ナショナルチームに選出された中学生や世界柔術フェスティバルで優勝した中学生や陸上100mで全国大会に出場する小学生など、若い選手が大勢活躍していますので、今後が楽しみです。

 ※完

(文:宮嵜 秀一

前編:海洋センターの有効利用で「生涯お達者市民」を増やす!


静岡県掛川市にある総合体育施設、東遠カルチャーパーク総合体育館さんりーなに隣接する掛川市B&G海洋センター。体育館の他、北側には艇庫があり大池調整池を使用した海洋性レクリエーションが楽しめます。
体育館は一般貸出可能。艇庫は体験会・教室・イベントを行っております。

大須賀海洋センタープールは、長さ25メートルのメインプールと、子供専用の小さなプールを兼ね備えており、7月~8月の間ご利用いただけます。(詳細は施設にお問い合わせください)

大東海洋センターは、市を流れる菊川の河口にあります。総合運動場(野球場、多目的広場、テニスコート、わんぱく広場、プール)に隣接しており、周辺には地中海風の温泉リゾート施設「大東温泉シートピア」や菊川に架る「潮騒橋」もあります。また、南に広がる遠州灘ではマリンスポーツを楽しむ若者で賑わいをみせます。