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No.003:北海道東神楽町 山本 進 町長 人口増を続ける「花のまち」 北海道東神楽町の取組
2017.05.16 UP

プロフィール 山本 進(やまもと すすむ)町長
1966年(昭和41年)生まれ。北海道弟子屈町出身。1989年に東神楽町役場へ入庁。町職員時代は、総務企画課やまちづくり推進課など、まちづくりの中心的業務を担う部署へ配属となり、東神楽町開基 100年記念事業の担当も務める。2012年に東神楽町長に就任し現在に至る(現在2期目)。
町の紹介 少子化、人口減少が進む現代において、2015年国勢調査の人口増加率で北海道内1位(10.1%)となった東神楽町。そのまちづくりと地域間交流について、山本進町長にお伺いしました。




後編:子供たちには様々な体験をしてもらいたい

生まれてくる子供が多いからこそ

- 子供たちの育成が東神楽町の課題の一つということですが、その対応について教えてください -

 東神楽町は、過去3回の国勢調査から北海道で子供の割合が一番高い町ということが分かっています。平成27年の国勢調査では0歳から4歳までの5年間の増加率が全国で5番目に高いというデータもあり、平成26年の出生者数は83人でした。生まれた子供が80人を超えたのは20年ぶりで、とてもうれしいニュースでした。やはり、生まれてくる子供が増えているということは、子育てしやすいまちとして機能している、まちづくりの成果が出ていることだと思います。ですから、生まれてきた子供の育成は大きな課題だと考えています。

 東神楽町には多くの子供たちが利用するB&Gのプールがあります。プールでは水泳教室などを行っていますが、特に夏に実施している「水中レクリエーション大会」には、毎年多くの子供たちが参加し、大変にぎわっています。平成26年には修繕助成をいただき、採暖室を設け、利用期間を延ばすことができましたので、子供だけに限らず健康づくりの場としても活用しています。

 私たちの町は、北海道の内陸部に位置していますので、寒さも厳しく、昔から水に親しむ文化はあまりありませんでした。町内には川もありますが、川遊びをするようなことはなく、泳げない子供が多かったと思います。ですから、夏の短い期間ではありますけれど、身近に通うことができるプールがあり、楽しく水泳を覚えることができるB&Gのプールは町にとって重要な施設です。

  • 東神楽町役場正面にある花壇は7月に見頃を迎えます

  • いつも子供たちの歓声が響く東神楽町B&G海洋センタープール

ホームステイで広がる北と南の相互交流事業

- 子供たちへの体験機会の提供では、東神楽町では鹿児島県の長島町と少年交流事業を実施されていますが、どのような事業なのでしょうか -

 実は、この事業のきっかけは「花」なんです。東神楽町は昭和40年代から『花いっぱい運動』を展開し、今では「花の町」として全国的にも有名になりました。そこで、この花を通じて違う地域と交流することはできないかと探していたところ、紹介していただいた自治体が鹿児島県の長島町でした。もともと、交流できるのであれば、子供たちの交流も行いたいと考えていましたので、東神楽町と全く環境の異なる南の地域で海があるという地域は好条件でした。長島町に交流についてお願いしたところ、快諾いただきましたので、早速、訪問いたしました。そこで宿泊したホテルの目の前にあったのが長島町B&G海洋センターの艇庫でした。正直驚きましたが、これもご縁だと思いました。

 そして、平成26年8月に東神楽町の27人の子供たちが5泊6日の日程で長島町を訪問する「ながしまサマースクール」が実施となり、少年交流事業がスタートしました。子供たちは、北海道ではあまり体験することができない海水浴やカヌーなどの"海"を中心としたプログラムを満喫しました。北海道は海水浴場が少ないですし、泳ぐことのできる期間はとても短い。天気も晴れていなければ、やはり寒い。また、海は漁業など生活の場でありますから、遊ぶというイメージはあまりないように思えます。ですので、子供たちにとって海での体験は、とても有意義なものだと考えています。

 長島町はブリの養殖日本一ということで養殖場の見学などもさせてもらいました。北海道といえばシャケですから、ブリはあまり食べませんので、その料理方法も知りません。また、タコを捕まえたり、岸壁から海へ飛び込んだりなど、体験させていただいた内容は、北海道では体験できないことばかりでした。宿泊はホームステイで、ホストの家族の方が優しく迎え入れてくれています。今年、小学校の卒業式で子供たちに今まで一番の思い出はと質問したところ、この少年交流事業を挙げていましたので、この活動は、子供たちにとって貴重な体験になっていることが分かりました。

  • 長島の海を満喫できる「ながしまサマースクール」

  • ブリや鯛、タコなどの調理体験にもチャレンジ

 そして翌年の平成27年12月に、長島町の子供たち20人が東神楽町を訪れる「ひがしかぐらウィンタースクール」を行いました。ここではやはり、長島町ではできないことを体験してもらおうと考えました。食べ物では、北海道名物のジンギスカンや、鮭のチャンチャン焼き、私もデザートとしてハニートーストを作り、みんなに食べてもらいました。しかし、今回の目玉は何といっても"雪"遊びです。長島町の子供たちは北海道のサラサラな雪を見たことがありませんので、歓声をあげながら雪に飛び込んでいくんですね。北海道の子供たちも雪で遊びますが、冬になれば雪はありますから、そこまではしゃぐことはしません。ソリやスノーモービル、雪上のバナナボートなど体験してもらいました。また、ホームステイ先のホストファミリーの皆さんも、個々にプログラムを考えてくれていまして、とても良い経験になっています。

 実は、交流事業は一度、別の地域と行ったことがあるのですが、うまくいきませんでした。このような事業は申し入れた自治体だけが子供を派遣するという、一方的なケースになってしまうことが多いのですが、まさに以前の事業は、私どもの一方的な派遣だけでした。今行っている少年交流事業は相互に派遣できていますので、双方の子供たちの成長につながっています。

  • 初めてのパウダースノー「ひがしかぐらウィンタースクール」

  • 雪遊びでは雪上のゴムボートに大歓声!

 また同時期に、国際交流にも着手しました。これは2013年に旭川空港と台湾桃園空港の直行便が就航したことをきっかけに、国際交流の話が持ち上がり実施しているものです。東神楽町では国際交流は行っていなかったのですが、これも一つのご縁だろうと考え、台湾の桃園市にある大園国民中学校と東神楽中学校で姉妹校提携をしました。東神楽中学校は吹奏楽が盛んで、全道大会に出場できるほどの力をつけてきまして、強豪校と呼ばれるようになってきました。ちょうど台湾でも吹奏楽が盛んになっていますので、吹奏楽による交流「東神楽中学校・台湾大園中学校 交流音楽会」を行っています。今年の12月に台湾の中学生がこちらを訪れ、来年の1月には東神楽中学校から大園国民中学校を訪問する相互交流を行います。

 私は、子供たちに色々な体験の機会を提供できるかどうかが、彼らの将来に大きな影響を与えると思っていますので、そのような環境を整える、機会を提供することは重要なことだと考えています。

  • 国際便も就航する旭川空港と東神楽町マスコットキャラクターの「かぐらっき~」

  • 吹奏楽を通じた国際交流「中学生台湾派遣交流事業」

成功が成功を生み出すプラス効果

- このような、成果を形にする"秘訣"を教えてください -

 実は、まだまだ課題はあります。子供たちが増えていますから待機児童対策もありますし、町内では国の実施する農地の大型化事業や北海道の実施する地域高規格道路、空港民営化などもあります。課題はたくさんあるのですが、すべてのパワーを前に進めることに使うことができ、一つの成功体験が、次の成功を呼び込む、成果を生み出すことに繋がっています。総じてうまくいかないケースは、マイナス的なことに足を引っ張られてしまう、その解決のために力を使わなければならないことが要因ではないでしょうか。そのようなことが起きないように、危機管理にものすごく力を使っています。マイナスが減ればプラスに転じる、そのような意識をもってまちづくりを進めています。北海道は小さな町も多いですけど、私どものような町はもっと頑張っていかなければならない。様々な地域の課題に対し、私たちの町がリードしていく、他の地域に影響を与えるという気持ちを持ち、行政と住民が一つになって取り組んでいます。


※完

(文:東條 剛之

公共機関をはじめ、スポーツ施設や図書館といった文化施設が隣接されており、学校帰りの小中学校生徒も友達とスポーツを楽んだり、本を読んだりと気軽に利用しています。また、多目的グラウンドとして使える義経公園や緑あふれる芝生広場など、自然を取り入れた環境も充実しています。