スペシャル トップに聞く 私たちのまちづくり

No.002:山口県周防大島町 椎木 巧 町長 誰もが主役で幸せに暮らせる町づくりをめざして
2017.03.02 UP

瀬戸内の「ハワイ」として、その観光資源をもとに積極的な島おこしを行う山口県周防大島町。B&G全国サミットへの出席で上京の折に、椎木巧町長にまちづくりについてお伺いしました。

プロフィール 椎木 巧(しいき たくみ)町長
1948年(昭和23年)生まれ。山口県周防大島町出身。1966年に旧大島郡橘町へ入庁。旧橘町総務課長を経て、2002年に大島郡合併協議会事務局次長となり、大島郡4町の合併に携わる。2004年に周防大島町が誕生した後、総務部長、副町長を歴任。2008年に周防大島町長に就任し現在に至る(現在3期目)。B&G全国サミット 副会長。



第2話:島ぐらし感動体験と「瀬戸内のハワイ」でのカヌー

72名のB&G指導員に感謝!

- 町ではフラダンスが盛り上がっているそうですが、10年連続特A海洋センター表彰を受けた海洋センターの活動についても教えてください -

 海洋センターは旧大島町時代に整備していただき、合併前は旧町内の学校、子供たちが中心になって利用してきました。そして、周防大島への橋がかかり、整備事業で道路事情が良くなるにつれ、他の地域の方々にも利用してもらえるようになりました。

 こうした中で、10年間特A評価を受け続けられたということは、ひとえに修繕助成などを通じたB&G財団の大きなご支援の賜ものです。

  • 72名の指導者が、地域の子供たちへの海洋性レクリエーションや水辺の安全教室に尽力している

  • 今年のB&G全国サミットでは、10年連続特A海洋センターとして表彰された

 また、もうひとつには周防大島には72名のB&G指導員がいて、彼らが一所懸命事業に取り組んでいることが挙げられます。指導員には町の職員もおりますが、民間の方や役場職員OBの方もたくさんいて、彼らの協力なくして海洋センターの活動は成り立ちません。本当に感謝しなければいけないと思っております。

 プールの事業についていえば、町外に民間のプールやスイミングスクールがありますが、夏休みに海洋センターで行っているスイミング教室はとても格安で、若いインストラクターもいる(笑)という環境にあります。その意味もあって、特に夏場には町外の利用者も集めており、大いに活用させていただいています。

 体育館は全国でも平均的な利用度であると思いますが、今年になってコミュニティ機能付加改修を実施していただいたので、更に住民の利用を広げたいと考えています。今後は、高齢者の方々の健康づくりにも活用範囲を広げたいと思います。

 艇庫については、周防大島町は周りを海に囲まれていて海を体験する機会は多くあるのですが、私たちの時代と違って直接海に触れる機会が確実に少なくなっています。

 カヌーやOPヨットの利用は、海洋センターを整備していただいた旧大島町の学校が中心なため、そうでない地域の学校への普及を進めたいと思います。

  • 2016年1月には、長年の功績から同町の指導員・中谷清一郎さんが最上位のゴールド褒賞を受賞した

  • 大島商船高等専門学校練習船「大島丸」の協力を得て、町内外の家族が対象のキャンプ等も実施

ホームステイで島暮らしを体験。受け入れ家庭が工夫するプログラム

- 周防大島町では体験型修学旅行にも力を入れているとお聞きしました。どのような内容で実施されているのでしょうか -

 町では、広島商工会議所と広島湾の6自治体と一緒に体験型修学旅行の誘致を推進しています。年間3~40万の修学旅行生が広島市の原爆ドームを訪れて平和学習を行ったり世界遺産の宮島を見学して歴史を学んでいます。この修学旅行生を周防大島町に誘致し島の暮らしを体験する企画を始めており、現在、年間25校4千人の生徒を受け入れています。

 町にやってくる生徒さんたちのほとんどは関西や関東といった都会の学校からで、島の生活を体験してもらう一環として海洋センターにある約50艇のカヌーを使って海に出てもらっています。

 また、ホームステイ体験も特色になっていて、先日も埼玉県の高校から260名を受け入れ、70~80戸の受け入れ家庭に振り分けて島の日常を体験してもらいました。

 通常、生徒さんたちは1組3~4名で受け入れ家庭に分散し、それぞれの民家が考える家業を中心としたプログラムを体験しています。各家庭に分散してしまうと先生の目が届かない状況になるので、「それは心配」といわれる学校もありますが、ご理解をいただくよう説明をしています。

 実は先日、私の家でも女子生徒4名を受け入れましたが、彼女たちはホームステイ先が町長の家だと知って緊張していたと聞きました(笑)。

 その彼女たちには、私の家でミカンもぎと昼食づくり、釣り体験をしてもらいましたが、このように「ウチならミカンもぎが体験できますよ」、「ウチには船がないから防波堤で磯釣りをします」といったように、受け入れ家庭が工夫しながら体験の内容を考えています。

「瀬戸内のハワイ」大島の海が、子供を逞しくする

  • ホームステイの受け入れ家庭が、島暮らし体験に工夫を凝らす

  • 海洋センターから無人島へのカヌーの往復でも、子供の成長をみることができる


 そうしたなかで、先ほど述べたカヌー体験を行う学校もあります。海に出るので心配される先生もいるほか、底の見えない深い海が怖いと訴える生徒もいますが、インストラクターに教わりながら1時間ほど練習すると、多くの生徒が「瀬戸内のハワイ」のきれいな海でカヌーをガンガン楽しむようになります。

 島の海はロケーションにも恵まれていて、1km先に彦島という無人島があり、そこまでカヌーで漕いでいくことができます。無人島に渡って向こうで記念写真を撮って帰ってくるといった、ちょっとした冒険気分も味わえます。

  • 無人島での記念撮影も、周防大島の思い出として強く心に残るだろう

  • 学校によっては、船で帰路に就くことも。世話した受け入れ家庭が総出で生徒たちを見送る

 元気な生徒に励まされながら海に出て不安気だった子が、無事に島へ渡り終えると皆から拍手喝さいを受けるといった、微笑ましい場面に出くわすこともよくあります。そして、出発時に不安気だった子も、無人島を離れる頃にはすっかりカヌーに慣れて、バンバン飛ばして帰ってきます(笑)。

 このような光景を目の当たりにすると、海という自然のなかで子供たちが励まし合ったり、逞しくなったりする経験は、やはり大切なことだなと思います。

※第3話に続きます(3月8日水曜日に掲載予定)

(文:進藤 博行

体育館、プール、艇庫の各施設で、年間約2万5千名に利用されています。
海洋性スポーツや自然体験活動などを通して、青少年の「こころ」と「からだ」の育成と、地域住民の健康維持、コミュニティづくりなどに活用されています。