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No.001:青森県南部町 工藤祐直 町長 自然環境の豊かさを、体験を通じて子供たちに伝えていきたい
2017.01.31 UP

豊かな自然あふれる青森県南部町。B&G全国指導者会の会議で財団にお越しになられた、工藤祐直町長にまちづくりについてお聞きしました。

プロフィール 工藤 祐直(くどう すけなお)町長
1955年(昭和30年)生まれ。青森県南部町出身。
大学卒業後、民間企業を経て青森県名川町役場に就職。同町のB&G海洋センター勤務となり、初代育成士として活躍。その後、農林課や企画課などを経て、平成11年に名川町町長に就任。平成18年、合併による新生南部町の初代町長に就任し、現在に至る(通算5期目)。
B&G財団評議員、B&G全国サミット 副会長、B&G全国町村長会議・B&G全国指導者会 会長。

第3話:魅力ある地元の創生をめざして

- 県の交流イベントとしては、昨年11月に行われた「あおもり鍋自慢」もご盛況だったようですね。イベントの様子を教えてください -

 県内の鍋を一堂に集め、好きな鍋を一度に味わえる機会があれば、たくさんの人が喜ぶのではないのかなと思い、南部町観光協会の主催によって今回初めて開催しました。

 青森県には40の自治体がありますが、地元の調理方法と地元の食材を使った自慢の鍋が各々ありますのでお声がけをしたところ、県内23市町村から出展していただきました。また、県外からも熊本市から出展いただくこととなり、計24種類の各地の自慢の鍋が集まりました。

  • 鍋の一番の良いところは、笑顔が浮かぶ、明るい話題のコミュニケーションが取れるところ、と工藤町長

  • 昨年11月に開催した「あおもり鍋自慢」。県内外から24種類の鍋が出展し5,000人が来場した

 イベントは大盛況で、5,000人の方にご来場いただきました。県内だけでなく県外からもご来場いただき、中には車で2時間半をかけてお越しいただいた方もいらっしゃったと聞いています。終了予定の一時間以上前に全ブースの鍋が完売し、一カ所でいくつもの鍋が味わえる「鍋交流」を実現できたと自負しています。

  • イベント当日は、元プロ野球選手のパンチ佐藤氏がスペシャルゲストとして登場した

  • 来場者は、各地の自慢の鍋に舌鼓をうち、終了予定の一時間前には全ての鍋が完売する大盛況となった

 また、当日には2016年1月に開催したB&G全国指導者会 総会の時に講演いただいた元プロ野球選手のパンチ佐藤氏をスペシャルゲストにお招きし、大いにイベントを盛り上げていただきました。

- 南部町では通称「鍋条例」を制定されているそうですが、制定の契機や経緯を教えてください -

 実は制定する7~8年前から「鍋条例」の構想はあったのですが、お隣の八戸市がB-1グランプリ発祥の地で、「八戸せんべい汁」でエントリーを続けて過去に3回も2位となるなど注目を集めていました。

 そのため、広報の面も考えて2012年9月に制定しましたが、町のイベントなどはタイミングを見計らい、八戸市がグランプリ(2012年10月)を取った後に開催しました。

 私は、鍋の一番の良いところは、笑顔が浮かぶ、明るい話題のコミュニケーションが取れるところだと思っています。家族や仲間で鍋を囲むときには、まずは暗い話題になりませんから。この「笑顔で明るいコミュニケーション」が、鍋の一番の特長だと思います。

 南部町では、鍋を囲んで「フーフー」言いながら食べることの語呂合わせて、毎月22日は「鍋の日」と定めています。町内の防災無線でも毎月「22日は鍋の日です。町民の皆さんは家族や仲間と鍋を囲んで、コミュニケーションを図り楽しく過ごしましょう」と放送してお知らせしています。条例の制定はマスコミにもかなり取り上げられて、取材もずいぶん来ました。

 また「鍋の日」ののぼり旗も作って、地元の商店の店頭にも掲げてもらい、町民への浸透を図っているほか、役場では鍋の日をノー残業デーにしています。職員には早く退庁してもらい、家族と鍋を囲んだり、職場の同僚とのコミュニケーションを深めたりしてもらいたいからです。

 このほか、学校給食に鍋を採用してもらっているほか、幼稚園でも工夫して昼食に取り入れてもらっていて、南部町の新しい文化として根付いていけばと期待をしています。

  • 南部町の新しい文化に、と学校給食にも鍋を採用。写真は「いも煮汁」の給食

  • 鍋には必ず野菜が入るので食事の栄養バランスもよい。南部町特産の「食用菊」を使った鍋は、彩りも華やか

 鍋には必ず野菜が入るので「健康に良くて、バランスがよい」という利点があります。また、鍋に入れる野菜は、どんな地方でも地元で生産されるものが大部分です。

 鍋文化を広めるため、その魅力や効能をお伝えするときには、地産地消、明るいコミュニケーション、健康に良いということで、「まさに一石三丁」だと訴えています。

- これからの南部町のまちづくり -

 日本各地が抱えている課題として、少子高齢化の問題と人口減少があります。

 南部町も高齢化率が高くなっているので、地域のコミュニティをどう維持していくかという課題に直面しています。

 また、子供の出生率も下がっており、結婚をせずに生涯を独身で過ごす方も増えています。こうした状況の中、行政としては人口減少をいかに緩やかにするかという現実的な課題について、安心して子育てができるまちづくりを進めています。「無料が全て良い」とは考えていませんが、学校給食の無償化、中学までの医療費の無償化を行いながら子育て支援策を進めています。

  • 学校給食の無償化、中学までの医療費の無償化など、安心して子育てができるまちづくりを、南部町では進めている

  • 都会暮らしを続ける中で、自分の町のいいところが改めてわかる、という方もいる、と工藤町長

 若い時には都会に出てみたい気持になるもので、それが当然のことであると私は思っています。便利な生活環境もさることながら、雇用を考えてみても若い人にとって都会は大きな魅力です。

 ただ、都会暮らしを続ける中で、振り返ってみて自分の町のいいところが改めてわかるという方もいます。育った町の良さを思い出して、自分の町に戻りたいと考えたとき、はたして南部町に受け入れられる場所があるのかどうか、そうした課題についても考える必要があります。

 現実的には、都市から戻って地元で暮らしていくとなると、雇用はとても大切な部分になります。南部町は人口23万人の八戸市に隣接しており、車で30分程度の距離に位置しています。八戸都市圏の自治体が一体となって企業誘致を進め、働く場所を確保しながら周辺一帯の生活基盤を固める構想も進めています。

 こうした取り組みは、短期間で目に見える成果は出ませんが、今、取り組んでおけば、人口減少の度合いを抑え、必ず先々に成果を生むと考えています。今後も色々と工夫や挑戦をして、この課題に立ち向かうしかないと考えています。

 こうしたことからも、子供の頃に様々な体験活動や交流体験を通じて、地元の良さを知ることはとても大切だと考えています。体験を通じて、南部町の良さと魅力を、今後も子供たちに伝えたいと思います。

※完

(文:進藤 博行