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No.009:田中 美紗樹選手(セーリング競技 470級全日本選手権 女子優勝) B&G兵庫ジュニア海洋クラブ出身 全日本インカレ3連覇中の早稲田大学ヨット部の若きエース!
2017.06.27 UP

プロフィール 田中 美紗樹(たなか みさき)
1997年11月生まれ、大阪府大阪市出身。
小学1年生から、B&G兵庫ジュニア海洋クラブでヨットをはじめる。小学6年生で出場した「2009全日本OP選手権大会」で小学生優勝し、ヨーロッパ選手権大会の日本代表に選出される。現在乗っているヨットの艇種は、470級と呼ばれる全長4.7mの2人乗りヨット。全日本インカレ3連覇中の早稲田大学ヨット部に所属し、2年生ながらレギュラーを務める。
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【 解 説 】
ヨット競技のルール

洋上で二等辺三角形や台形の頂点にブイ(マーク)を設置して、スタートラインから競技艇全艇が一斉スタートする。基本として、各ブイを反時計回りしてゴールする。1位は1点、2位は2点と増えていき、全レースを合わせて最も低い得点で優勝する。


OP級

1人乗り、艇の全長は2.31m。Optimistは楽天家の意。ISAF(世界セーリング連盟)が承認する最小クラスの艇で、競技参加は15歳まで。知力・体力・情緒面の向上に大きく貢献するジュニア専用の入門艇で、1954年に米国のクラーク・ミルズ氏が設計。


420級(よんにいまる)

スキッパー(艇長)とクルーの2人乗り、艇全長4.2m。国内では2015年から採用され、高校総体と紀の国わかやま国体で始まった種目。オリンピックを目指すユース選手を中心に世界中で競技が行われている。


470級(よんななまる)

2人乗り、艇全長4.7m。小柄な日本人に適し、1976年のモントリオール五輪から正式種目となった。日本はこのクラスに力を入れている。


全日本インカレ(全日本学生ヨット選手権)

大学ヨット界で最高峰の大会。Intercollegiate大学対抗。早大は昨年(2016年)まで総合で3連覇しており、さらなる連覇を目指している。今年は11月に福井・若狭湾で開催される。スナイプ級(帆はメインとジブセールの2枚)、470級(帆はメイン、ジブ、スピネーカーの3枚)の各クラスとその総合点を競う。

後編:躍進途上のセーラー

OP級を卒業し、今後は420級や470級といった2人乗りのヨットに挑戦していくことになった田中選手。

「当時は、B&G兵庫ジュニア海洋クラブには同い年の女の子がいなかったので、学校でヨットの話をしていた時、一番興味を持ってくれた友達をヨット体験に誘いました。それが、リオ五輪にセーリング49erFX級で出場した高野芹那さんです」

田中選手は、部活を引退した中学3年生の秋、同じクラスで同じ部活の高野選手をヨットに誘い、2人はヨット部のある高校へ進学。そこから田中・高野ペアは、世界選手権や全日本大会の常連となりました。

そして、高校3年生で出場した世界選手権。田中・高野ペアは、銅メダルを獲得し、日本人高校生としては、国際420級世界選手権での史上最高の順位を樹立しました。

高校生で数多くの功績を残した田中選手。卒業後は、早稲田大学に入学し、強豪として知られる同大学ヨット部に入部。さらに躍進を続けます。

高野選手(右)とペアを組み、帆走する田中選手(左)

強豪!早稲田大学ヨット部へ

高校で様々な功績を残していた田中選手は、早稲田大学ヨット部の即戦力としてレギュラーになりました。

「早稲田大学のヨット部は、強豪の他大学より経験者が少ないので、レースの練習より基礎練を重視することが多いんです。その中でも、私は大会での経験値が多い方なので、そのぶん団体戦でプレッシャーを感じることもあります」

また、普通の運動部とは異なり、練習場所が遠隔地に限られるヨット部は、土日に神奈川県内の葉山や八景島で合宿練習を行っています。

「土日は泊りがけで練習に行くんですが、金曜日の夜に集まって、1年生は料理を作るために食材の買い出しをします。もちろん、私も1年生の時は料理を作りました。得意料理はタコライスとひき肉料理です」

早稲田大学ヨット部の練習風景

楽しそうにヨット部の合宿練習を語る田中選手。毎週泊りがけで、どんな練習をしているのでしょうか。

「海に出てヨットに乗れる時間は限られているので、海での練習を有意義にするために、陸上で艇に乗って練習した内容を海で実践したり、合宿練習の無い平日は筋力トレーニングやランニングをしています。決まった練習日、時間にどれだけ詰め込んだ内容ができるかが大事なんです」

海洋クラブでヨットを始めてから「艇を大事に、道具を大事にすること」を教えられてきたといい、厳しく守っていることは海への畏怖を常に抱いている表れと感じました。

意外にも「大好物はみかんです!」と語る田中選手。私生活では何を楽しみにしているのか聞きました。

「今一番楽しみにしているのは、世界選手権が終わってからの観光です。ヨットハーバーがある辺鄙な所に行くことが多いので、観光としても楽しめます」

高校に続き、早稲田大学でも快進撃を続ける田中選手。これまでヨットを続けてこられたことを両親に感謝していますと答えていました。そして、今の課題を率直に伺いました。

「周りからは、よく『感覚派セーラーだ』と言われています。要は、あまり上手く頭を使えていないことが課題です。感覚で艇を走らせているので、焦った時やうまくいかなかった時に、その理由がわからないんです。何がいつもと違うのか理解できれば冷静に対処できるのですが、漠然と『いつもと違う』と思うだけで、『何が違うのか』はわからないんです。だから、今は、自分が感じた事を全て言葉にする練習をしています」

7月と8月に世界選手権を控える田中選手。今後の展望を語ります。

「もちろん、2020年の東京オリンピックに出場したい、という気持ちはあります。でも、その為の実績がまだまだ足りないので、今は目先の大会で結果を残すことに集中したいです」

- 最後に、B&G海洋クラブでセーリングに励む子供たちに一言お願いします -

私にとってB&G海洋クラブはヨットの楽しさを教えてくれた所です。楽しいと感じながら競技に取り組む事と、基本を身につける事が出来たら、将来たくさんの艇種にチャレンジできる機会があります。是非楽しんで頑張っていってください!!


B&G兵庫ジュニア海洋クラブ出身のスター選手として、今後も頑張ってください!
取材を快く受けていただき、ありがとうございました!

(文・鈴木 慶

B&G兵庫ジュニア海洋クラブで活動していた頃。中央が田中選手

平成7年(1995年)、B&G伊丹海洋クラブの有志などが集まって、兵庫県セーリング連盟ジュニアヨットクラブを設立。B&G伊丹海洋クラブと連携しながら兵庫県立海洋体育館を拠点に活動を続け、平成23年にB&G兵庫ジュニア海洋クラブとして登録。平成9年にOP級ヨット日本代表を初めて輩出して以来、多くのトップセーラーを生んでいる。