スペシャル 夢をつなげ!B&Gアスリート

No.009:田中 美紗樹選手(セーリング競技 470級全日本選手権 女子優勝) B&G兵庫ジュニア海洋クラブ出身 全日本インカレ3連覇中の早稲田大学ヨット部の若きエース!
2017.06.20 UP

プロフィール 田中 美紗樹(たなか みさき)
1997年11月生まれ、大阪府大阪市出身。
小学1年生から、B&G兵庫ジュニア海洋クラブでヨットをはじめる。小学6年生で出場した「2009全日本OP選手権大会」で小学生優勝し、ヨーロッパ選手権大会の日本代表に選出される。現在乗っているヨットの艇種は、470級と呼ばれる全長4.7mの2人乗りヨット。全日本インカレ3連覇中の早稲田大学ヨット部に所属し、2年生ながらレギュラーを務める。
関連記事 B&G兵庫ジュニア海洋クラブの田中美紗樹さん アジアセーリングチャンピオンシップに出場!(2012年)
【 解 説 】
ヨット競技のルール

洋上で二等辺三角形や台形の頂点にブイ(マーク)を設置して、スタートラインから競技艇全艇が一斉スタートする。基本として、各ブイを反時計回りしてゴールする。1位は1点、2位は2点と増えていき、全レースを合わせて最も低い得点で優勝する。


OP級

1人乗り、艇の全長は2.31m。Optimistは楽天家の意。ISAF(世界セーリング連盟)が承認する最小クラスの艇で、競技参加は15歳まで。知力・体力・情緒面の向上に大きく貢献するジュニア専用の入門艇で、1954年に米国のクラーク・ミルズ氏が設計。


420級(よんにいまる)

スキッパー(艇長)とクルーの2人乗り、艇全長4.2m。国内では2015年から採用され、高校総体と紀の国わかやま国体で始まった種目。オリンピックを目指すユース選手を中心に世界中で競技が行われている。


470級(よんななまる)

2人乗り、艇全長4.7m。小柄な日本人に適し、1976年のモントリオール五輪から正式種目となった。日本はこのクラスに力を入れている。


全日本インカレ(全日本学生ヨット選手権)

大学ヨット界で最高峰の大会。Intercollegiate大学対抗。早大は昨年(2016年)まで総合で3連覇しており、さらなる連覇を目指している。今年は11月に福井・若狭湾で開催される。スナイプ級(帆はメインとジブセールの2枚)、470級(帆はメイン、ジブ、スピネーカーの3枚)の各クラスとその総合点を競う。

前編:幼少期の恐怖体験

早稲田大学ヨット部で全日本インカレ連覇に貢献している田中美紗樹選手。彼女が初めて1人でヨットに乗ったのは、4歳の時でした。

「幼稚園の時、ヨットが趣味だった両親と兄の影響で、私も1人でヨットに乗ってみることになりました。その時、艇がひっくり返って海に落ちたんです。水泳を習っていたこともあり、水への恐怖は無かったんですけど、『海にはサメがいる』という固定概念があったので、怖くて仕方なかったです(笑)」

そんな恐怖体験の後でも、両親に勧められ、小学1年生の時にはB&G兵庫ジュニア海洋クラブに入ることになったそうです。

「気づいたら、週2回、海に行くことが当たり前になっていました」

小学生の頃は、週2でヨット、週1で英会話とスイミングを習っていた田中選手。ヨットに夢中になっていった過程を伺いました。

「習い事の中で、ヨットが一番楽しかったです。小学4年生の時から全日本選手権大会を目指していこうと目標を持つようになって、そこから競技として楽しめるようになりました。でも、結局その年は全日本に出られなかったんです。同い年の選手が全日本に出場している姿を見て、凄く悔しい思いをしたことを覚えています。その悔しさから、精一杯練習に励んで、翌年小学5年生の時に全日本に出場することができました。そこでB&Gの新人賞をいただいて、勝つことの嬉しさを知りました」

競技としての楽しさや勝つことの喜びを知った田中選手。しかし、楽しいことばかりではなかったそうです。

「小1からB&G兵庫ジュニア海洋クラブに入っていると、年上の人が後から海洋クラブに入ってくることが結構あるんです。小学校低学年だった私は、年上の人の身体能力に敵わず、『私の方が長くヨットに乗っているのに!』と、悔しい思いをしました。正直、その時はヨットが好きではありませんでした(笑)」

B&G新人賞を受賞した田中選手(左)

念願の全国大会!更なる高みへ

年上の後輩に負けん気を燃やしながら、熱心に練習を続けた田中選手。

「当時の練習は、艇をまっすぐ、早く走らせる練習をしていました。風に対して色んな角度で走る基本的な練習ばかりを繰り返しました。海洋クラブで、基礎はしっかり固めるよう指導されました」

ついには小学5年生でナショナルチームの選考を行う全日本OP選手権大会に出場するまで実力をつけ、小学6年生で出場した「2009全日本OP選手権大会」では、小学生クラスで1位を獲得。第14回のアジアセーリングチャンピオンシップの日本代表選手にも選ばれました。

「全国大会に出るようになると、自分の艇を持つようになりますが、初めてなので私は兄のおさがりを使っていました。兄の艇も誰かのおさがりでした。だから私の艇は、おさがりのおさがり。ヨットは高いので…」

その後、中高一貫校を受験するために、習い事を整理したそうです。

「英会話とスイミングは中高一貫の学校を受験するため、小学5年生の時にやめました。ヨットは受験直前までやり続けていましたが(笑)」

2011 日本オプティミストセーリング選手権大会 表彰式(左)

中高一貫校に無事合格し、中学校では習い事の延長として水泳部に入部しました。平日に水泳、土日にヨットというハードな生活を続け、中学1年生で「2010 IODA ヨーロッパ選手権」の日本代表に選出。中学2~3年生では「第43回2011と第44回2012 日本オプティミストセーリング選手権大会」で女子優勝を飾りました。

OP級は15歳までの競技。中学3年生で有終の美を飾り、新たな種目に挑戦するため、ヨット部のある高校への進学を決めます。

(文・鈴木 慶

B&G兵庫ジュニア海洋クラブで活動していた頃。中央が田中選手

平成7年(1995年)、B&G伊丹海洋クラブの有志などが集まって、兵庫県セーリング連盟ジュニアヨットクラブを設立。B&G伊丹海洋クラブと連携しながら兵庫県立海洋体育館を拠点に活動を続け、平成23年にB&G兵庫ジュニア海洋クラブとして登録。平成9年にOP級ヨット日本代表を初めて輩出して以来、多くのトップセーラーを生んでいる。