スペシャル 夢をつなげ!B&Gアスリート

No.004:奥原 希望選手(リオデジャネイロオリンピック バドミントン女子シングルス 銅メダリスト) 「やりたいこと」を見つけて全力で取り組もう!
2017.02.20 UP

国立スポーツ科学センター(東京都北区)で、練習後に取材させていただきました

プロフィール 1995年生まれ、長野県大町市出身。
高校2年生で出場した全日本総合選手権において史上最年少(16歳8ヵ月)の女王となり、日本代表に初選出。2013年4月、日本ユニシス入社。両ひざのケガを乗り越え、2015年スーパーシリーズファイナルで日本人初のシングルス優勝を飾る。
2016年、リオデジャネイロオリンピック 女子シングルス種目で、日本バドミントン史上初となる、シングルスでの銅メダルを獲得した。現在、日本ユニシス 実業団バドミントン部で活動中。




第3話:そして夢は東京へ!

大舞台から得た新たな力

ケガを乗り越え、国際舞台で快進撃を続ける奥原選手。その勢いはリオデジャネイロオリンピックの大舞台でも、とどまるところを知りませんでした。

オリンピック本戦、準々決勝では、山口茜選手との日本人対決を制して、準決勝に進出。

準決勝ではインドのシンドゥ選手に敗れたものの、奥原選手は日本バドミントン史上初となる、シングルスで銅メダルを獲得し、オリンピックメダリストとなったのです。

また、長野県出身者、初の夏季オリンピック個人種目のメダリストとしても歴史を作ったのでした。



― 初出場での銅メダルですが、結果には満足していますか? ―

「全然です。準決勝で力を出し切れていれば、まだ納得いったかと思いますが、最後は抵抗することもできずに負けてしまいました。3位決定戦は不戦勝で試合もなく終わってしまい。心の中にもやもやが残りました」

「準決勝の相手(シンドゥ選手)は本当に強かったです。苦戦している局面で、思いきって戦法を変えることもできなかった。後になってから、色々とやるべきことがあったと気づきましたが、試合中はなすすべがなかったです」

― オリンピック中、メンタル面での調子に浮き沈みはありましたか? ―

「オリンピックは毎日が試合になります。日によって調子は違いますが、1回戦に、自分でも驚くくらいのベストパフォーマンスが出ました。コート全体が良く見えて、イメージ通りの球が打て、思った通りの球が相手から返ってくる。全てが思い通りにいった試合でした。

逆に、1回戦でそのパフォーマンスが出てしまったことに、『この後、大丈夫かな?』と不安を感じたんです。準決勝ではその不安が的中してしまいました」

― 銅メダルを獲得した感想と、その後の生活や気持ちの変化はどうですか? ―

「メダルって重いな、と思いました。その後は、メディアに取り上げてもらったり、日常生活で色々な人に声かけてもらったり、応援してもらったりして、そのお陰で、もっとがんばらなきゃな、と思いました」

「私は、自分のためにというより、色々なものを背負って、色々な人のためにと思うと、自然と頑張る気持ちになるんです。練習も甘えてちゃだめだと自然にカツが入ります。色々な人を想像して、色々な人のためにがんばりたいといつも思います」

「でも、スポーツは結果が全て。次は『金』しかないと思っています」

奥原選手 一問一答

― 子供のころは、ラリーが続くことが楽しかったそうですが、今、バドミントンの魅力は? ―

「『駆け引き』がイチ押しの魅力だと思っています。打つところをどんどん限定させていって、最後はどちらかが主導権を握って決めるか、握られた方がきつくなってミスをする。そんな所が魅力です

それが分かると、見る方もやる方も楽しいですよ。相手の作戦の裏を読んだりしますからね」

― 対人競技は難しい? ―

「対人競技の場合、自分のコンディションが悪くても、戦略やプレースタイルの相性が勝敗を左右します。つまり自分のコンディションが悪くても、勝ちに持っていくことができると思います。

タイム競技は過去の自分を超えることでしか良い結果を出せない訳ですし、タイム競技の選手はメンタルが強いな、と思います。私は対人競技が好きですね」

― いわゆる「ゾーンに入る」という感覚があるかと思いますが、試合中にずっと維持するのは不可能ですよね。勝負所でそこに持っていくとか、コントロールは可能なんでしょうか? ―

「良い試合の時のイメージはあるし、ゾーンへの持っていき方も、同じ状況なら容易に入っていけると思います。でも、状況が違う中でゾーンに入るのは難しいですね。

一つ言えるのは『集中』です。集中しきることがゾーンに一番近い方法だと思います。私は、目の前の一球にどれだけ集中するかにこだわっています」

― 逆に、その集中を散らす要素は? ―

「まず不安、そして焦りですね。『次どうしよう』ではなく、相手はこう来るからこっちはこうする、という自信を持つことが大事。不安な要素があると、自分で自分に問いかけてしまう。余計なことを考えてしまうということです」

― 雑念を払って集中するコツはある? ―

「そこは開き直るしかないです。または忘れるか、うまく切り替えること
くよくよせず、悪かったことを忘れ、自分を信じることです。コンディションは毎日違いますし、調子の悪い時にも試合はあるので、良い時も悪い時もベストを尽くすしかないです」

― バドミントンが奥原選手に与えてくれたものは? ―

「バドミントンがなかったら今の私はいません。私の人生の軸になっているし、バドミントンがなければ、私が崩れちゃうんじゃないかと思います。全てをバドミントンから学び、すべて吸収してきたという思いがあります」

― 最後に、B&G海洋センターの体育館では、バドミントンも盛んにおこなわれています。そこで頑張っている子供たちに対してメッセージをお願いします ―

「バドミントンに限らず、さらにスポーツや勉強にこだわらず「これをやりたい」ということを見つけて、全力で頑張ってほしいです。
今がきつくても、全力でやっていれば いつかやっててよかったなと思う日が来ます。
だからこそ、後悔しないように全力でやりましょう!!」

大ケガを負っても諦めない気持ちで、オリンピック初出場でメダル獲得を果たした奥原選手。その視線は、すでに2020年の東京オリンピックへと向けられています。

後悔しないようにと「全力」にこだわるその姿勢には、力強さだけでなく、周囲の応援に応えたいという気持ちが込められていました。頑張れ!奥原選手!
※完

(文・持田 雅誠

※次回《夢をつなげ! B&Gアスリート》No.005:<セーリング>高野 芹奈 選手

大町市北部の木崎湖のほとりに海洋センター艇庫があります。
キャンプ場も隣接していて、釣りやボートを楽しむ多くの観光客が訪れ賑わっています。
奥原選手の卒業した大町南小学校ではここで夏にキャンプを行っていて、奥原選手はカヌー体験をしたそうです。