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 B&Gの各種スポーツ大会に大応援団を派遣して、常に注目を集めている岡山県のB&G美星海洋クラブ。去る8月11日に山口県大島町で開催された「B&Gスポーツ大会中国ブロック大会(水上の部)」でも、50名を超える選手ならびにサポーターを送り込み、応援はもちろん、会場でカキ氷の露店を開くなどして大会を大いに盛り上げてくれました。この活気はどこから生まれているのか、同海洋クラブの指導員、山室修一さんに、これまでのクラブの歩みをお聞きしました。  
海洋クラブのメンバーに挨拶をする山室さん(向かって左)

勤務体系なんて気にしない

  岡山県の西南部に位置する美星町は、文字通りきれいな星が見える場所で有名ですが、B&G海洋センター ・海洋クラブ関係者の間では、この町にあるB&G美星海洋クラブの活発な活動も大きな話題になっています。   もっとも、同海洋クラブは昭和56年に設立され、実に20年以上の歴史がありますが、実は設立当初の活動は現在のように活気あふれるものではありませんでした。 

キャンプを楽しむ海洋クラブのこども達
 美星町の教育委員会で社会体育全般の仕事を担当し、B&G美星町海洋センターの職員として海洋クラブの指導にあたることになった山室さんでしたが、当初の活動をこう語っています。
 「私が指導員になったのはクラブが設立されて数年後のことでしたが、当時は、むしろ海洋センターで行われていたカヌーなどの体験教室が中心で、クラブの活動は活発とは言えませんでした」
 「今のように保護者の皆さんの協力があるわけでもなく、漠然とクラブ化されていた状態でした。ですから、これから先どうやって運営していこうか思っていた矢先、たまたま滋賀県の高島町で開催されたB&G全国スポーツ大会の視察に招かれ、その大会規模や競技レベル、参加選手たちの意気込みに圧倒されてしまいました」

 美星町の子どもたちも、ぜひB&G全国スポーツ大会に参加させたい。そんな熱い思いが胸にこみ上げた山室さんは、町に戻るとさっそく行動に移りました。当時は、子どもたちの送迎ができないとの理由で、保護者から海洋クラブへの入会が断られることが多かったので、山室さんは「自分が責任を持って練習の送り迎えをします」と説得して歩いたのです。
 「毎日、夕方の練習時間になると、役場のワンボックスカーを借りて子どもたちを自宅まで迎えに行き、練習が終わると送り届けましたが、その甲斐あってクラブには十数名の子どもたちが訪れるようになりました。職場では、そこまでしなくてもいいのではという声も出ましたが、こうした仕事は役所的に5時で上がっていたら、なにもできません。現実的な取り組みで勝負しなければいけないと思ったのです」
練習にやって来る子どもがいるかぎり、送迎はしなければならない。山室さんは、そう思って自分を励まし続けたそうです。


挨拶できる子どもたちに、なってもらいたい

 こうした努力を続けて2年が過ぎたとき、思わぬことがきっかけとなって山室さんの送迎は終わりを告げることになりました。
 「普段、私たちのクラブは地元の調整池で練習をしているので、夏休みを使い、同じ岡山県でも海のある邑久町の海洋クラブを訪れて、交流しようということになりました。ところが、子どもたちに同伴してくれる保護者は数えるほどしかおらず、邑久町を訪れたら、先方は大勢の保護者が歓待してくれたので、私を含めて大人の参加者は皆、ショックを覚えてしまいました。また、美星町は星がきれいなことで有名なので、冬になったら邑久町の子どもたちを招いて一緒に星空観察を楽しもうということになったのですが、このときも先方からは大勢の保護者が参加され、迎える側の私たちは夏のときと同様、数えるほどの保護者だけでした」

海洋クラブでカヌーの練習に励むクラブ員

 肩身の狭い思いをした、山室さんと保護者たち。「これでは交流にならない。我々は、もっとしっかりしなければいけない」と、参加した保護者の間から声が上がったのは、ごく自然の成り行きでした。
 「この交流イベントに参加された保護者の1人で、当時から現在までクラブの代表を務めていただいている東田さんを中心に、有志の皆さんが周囲に声をかけて歩いてくれ、保護者によるクラブの育成会が立ち上がりました。その会合の席で、ある人が『海洋クラブは託児所ではない。なぜ山室さんが送迎までしなければいけないのか』という意見を出してくれ、集まった方々も賛同の声を上げてくれました」

 2年間にわたって山室さん自らが送迎に励む姿を、実は多くの保護者が感謝の目で見ていました。しかも、練習を始めた子どもたちが実に礼儀正しくなったことに、皆、驚いていたのです。
 「私には、小さなクラブであろうと、どこに行っても恥ずかしくない行動が取れる子どもたちになって欲しいという願いがありました。だから、練習の際は大きな声で挨拶し、点呼がかかったら即座に集まるということを徹底させました」
 山室さんの努力や子どもたちの変化を見て、保護者の間からクラブをなんとかしようという強い声が上がりました。送迎は、育成会に入った保護者が交代で行うようになり、「子どもは宝だ。子どもにお金をかけることは大切だ」という東田会長の言葉もあって、大会に出るための経費や日ごろの活動費も育成会によって集められるようになっていきました。

県大会10年連続出場の快挙を達成

 育成会ができると、海洋クラブの活動は自然に活発になっていきました。
 まず、子どもたちを送迎することで保護者の皆さんの意識が変わっていきました。送り迎えのついでに練習を見学するようになり、やがて自ら水面に出てカヌーなどを習う人も出てきました。そのため、今では『親子交流会』と称して子どもたちが親にカヌーやヨットを教えるイベントも開かれています。
また、私は艇の準備や後片付けは手伝わないようにしており、練習中の細かい指導も控えています。つまり、練習活動のほとんどを子どもたちの自主性に任せているのです。そのため、上級生が下級生の面倒を見て、下級生が上級生を敬うという異年齢交流が深まっていきました」
  こうした活動を通じて、保護者の間では「海洋クラブに預けていたら、良い子に育つ」、「だから、海洋クラブを支えていこう」という機運がどんどん高まり、子どもたちが大会に出るたびに、大勢の保護者が応援に駆けつけるようになっていきました。

 今年、山口県大島町で開催された「B&Gスポーツ大会中国ブロック大会(水上の部)」でも、50名を超える選手ならびに保護者のサポーターが大集合。大会を盛り上げようと、有志によってカキ氷の露店も開かれて注目を浴びました。
大会ではおそろいのTシャツで応援します!

 「海洋クラブを支えてくれる育成会ができてから、すべてが変わりました。子どもたちが練習に励めば励むほど、保護者の皆さんの関心も高まるという具合で、大会に出るとなれば自主的に会合が開かれ、経費はいくら必要なのか、誰が送迎用のクルマを提供するかといった具体的な問題が即座に解決されていきます」

 育成会ができてからのクラブの活躍は目覚しく、さまざまなB&Gスポーツ大会で優秀な成績を収める子どもたちが後を絶ちません。B&Gスポーツ大会中国ブロック大会(水上の部)などは今年で10年連続出場の実績を誇っており、必ず誰かが何らかの種目で優勝や上位入賞を果たしています。
 「クラブの全員が大会に出られるということはあり得ないのですが、いつも私はクラブの子すべてを応援団として連れていくようにしています。選手になれた子だけが頑張るのではなく、常にクラブが一丸となって参加していきたいのです。しかも、保護者のほとんども同行するので、常に大所帯になってしまうのです」
 大会は、いろいろな地方で開催されるため、保護者の多くは旅行がてら子どもの応援ができると喜んでいて、会場に入れば子どもの応援で親同士が盛り上がるそうです。
「海洋クラブの活動を活発化してくためには、保護者がクラブをサポートする育成会が必要不可欠です」と山室さん。保護者の協力が続くかぎり、B&G美星町海洋クラブは隆盛を極めていくことでしょう。
 


 


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