連載企画

注目の人:全国の海洋センター・クラブで活躍する方や、スポーツ選手など、B&G財団が注目する人にインタビューをしています。

No. 105

海洋センターを地域おこしの拠点にしていきたい

2014.11.26 UP

~時代の変化に応じて施設の有効活用に励む、高岡市福岡B&G海洋センター~

地域で唯一の上屋付温水プールとして親しまれながらも、暖房設備がないため冬場の休業を余儀なくされていた、富山県の旧福岡町B&G海洋センター。しかし、利用者の強い要望が続いたため、高岡市との合併を機に平成22年、B&G財団の助成と合併特例債を利用して施設の全面改修に着手。暖房設備を備えた通年型の温水プールが完成すると、従来から通っていた地域の子供たちに加えて水中ウォーキングに励む高齢者が多くなり、体育館でも「カローリング」などに親しむ中高年の姿が増えていきました。
今回の注目の人では、「少子高齢化の時代になってもニーズの変化に応じながら、地域おこしの拠点にしていきたい」と意欲を示す、現:高岡市B&G海洋センター・スタッフの皆さんに、これまでの経緯や今後の展開について語っていただくとともに、最終回の第4話では高橋正樹市長に市民の健康づくり事業に向けた抱負をお聞きいたします。

プロフィール
● 高岡市福岡B&G海洋センター

平成2年(1990年)、旧福岡町で開設。体育館、上屋付温水プールに加え、その後、敷地内に艇庫を設け、近隣のダム湖などでカヌー活動も展開。平成17年に高岡市と合併してからは現名に変更され、その後、施設の老朽化が著しくなったため、平成19年に体育館の外壁およびフロアを改修。また、平成22~23年にかけてプールの全面改修を行い、屋根の固定化や館内の暖房化を実現。これによって利用者が増大し、地域の健康づくり拠点としての活用が期待されている。

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第4話(最終話)海洋センターに寄せる期待

インタビュー: 髙橋正樹 高岡市 市長

 高岡市福岡B&G海洋センターを取材するにあたり、髙橋正樹市長にもいろいろなお話を伺うことができました。施設改修後の事業展開や今後に寄せる期待などをインタビュー形式で紹介いたします。

成果を得た全面改修

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インタビューに応じていただいた髙橋正樹 市長。市長室を訪れると来年3月に開通する北陸新幹線のポスターが貼られていました

●海洋センターのプールが全面的に改修されて3年が過ぎました。利用者の皆さんからはどのような声が寄せられているでしょうか。

 プールの全面改修は、「冬でも利用したい」という周辺地区の皆さんの熱心な声に押されて行われました。そのため改修後の利用率は50%もアップしており、とてもはっきりとした成果が出ています。

 利用率を上げた大きな力は高齢者の水中ウォーキングですが、一般の利用が減る平日の昼間にも多く来ていただき、効率的な施設運営ができています。

 思えば、昔の人たちは仕事で体を動かしながら、健康管理に必要な運動量を消化していましたが、最近の人たちは機械類の発達によって体を動かさなくなり、歩く量もずいぶんと減りました。

 ですから、私たちは仕事と健康管理を分けて考え、仕事も大事なら健康も大事であるという意識を持つ必要があります。水中ウォーキングを行っている人たちに話を聞くと、「無理なく自分のペースで楽しんでおり、冬でも利用できるようになってありがたい」といった声が返ってきます。利用者の皆さんには健康のために長く続けていただきたいと思います。

文化的な利用も考えたい

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海洋センターのリニューアルオープン記念式典で挨拶に立つ髙橋市長。住民の夢が叶った瞬間でした
 
 

●改修以来、水中ウォーキングをはじめとして施設の順調な利用が続いていますが、これから先、海洋センターを使って取り組んでみたい事業や活動がありましたら、お聞かせください。

 「スポーツは文化なり」という考え方もあり、「スポーツと芸術はどこかでリンクしている」と説く人もいます。以前、私もある講演で「元来、オリンピックには文化や芸術が組み合わされていた」といった話を聞いたことがあります。

 私がロンドンオリンピックを視察した際には、大会期間中にあちらこちらで芸術祭が開催されていました。また、最近では中学の体育の授業でダンスが必修となっていますが、ダンスには芸術性も問われます。

 ですから、スポーツ施設というくくりだけで海洋センターを見るのではなく、海洋センターに文化的な事業を組み入れながら、郷土文化の発信源としての利用も考えて良いのではないかと思います。B&G財団さんからもいろいろな知恵を出していただきながら、あらゆる事業の可能性を探っていきたいと考えています。

地域に根ざした施設をめざしたい

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海洋センター体育館でダンス教室に励む地域の子供たち。時代に応じてさまざまなメニューを取り入れています
 

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新しくなったプールでいろいろな事業を展開。富山県連主催のB&G交流水泳大会も賑やかに行われました

●文化的な活動にも力を入れたら、さらに多くの人が集まるようになると思います。そうなるにしたがって、海洋センターは地域コミュニティーの拠点としての役割も担っていくのではないのでしょうか。

 最近は、どの地域でも過疎化が進んだり近所付き合いが減ったりしながら、人と人とのつながりが昔より細くなってきていますが、どんな時代になろうが地域の輪は大切にしていきたいものです。

 そもそも海洋センターは地域の人が集まる場所なのですから、たとえば体育館で行う床をテーマにしたイベントとプールで行う水をテーマにしたイベントを上手に組み合わせながら、さまざまな人が親睦を深め合うといった事業も楽しいと思います。海洋センターの活用を考えた場合、地域コミュニティーは1つの大きなテーマになり得ます。

●これまで、高岡市福岡B&G海洋センターは幼児や小学生を対象にした水泳教室に力を入れてきました。地域コミュニティーを考えるなかで、数が減ってきている子供への対応をどのようにお考えでしょうか。

 子供の数が減ったり指導する先生がいなかったりすることで、年々、さまざまなクラブ活動が学校単位だけでは成り立たなくなってきています。ですから、海洋センターの指導者が自主事業や総合型地域スポーツクラブの「遊・Uクラブ」を通じて幼児や小学生向けの水泳教室を行い続けていることにとても感謝しており、子供たちの才能を見出す地域スポーツの第1ステージとして大きな期待を寄せています。

 そして、こうしたなかから日本を代表するような選手が出たら、地域も多いに盛り上がって、よりいっそうコミュニティーの輪が深まっていくのではないかと思います。

●いろいろなお話、ありがとうございました。(完)