連載企画

注目の人:全国の海洋センター・クラブで活躍する方や、スポーツ選手など、B&G財団が注目する人にインタビューをしています。

No. 105

海洋センターを地域おこしの拠点にしていきたい

2014.11.12 UP

~時代の変化に応じて施設の有効活用に励む、高岡市福岡B&G海洋センター~

地域で唯一の上屋付温水プールとして親しまれながらも、暖房設備がないため冬場の休業を余儀なくされていた、富山県の旧福岡町B&G海洋センター。しかし、利用者の強い要望が続いたため、高岡市との合併を機に平成22年、B&G財団の助成と合併特例債を利用して施設の全面改修に着手。暖房設備を備えた通年型の温水プールが完成すると、従来から通っていた地域の子供たちに加えて水中ウォーキングに励む高齢者が多くなり、体育館でも「カローリング」などに親しむ中高年の姿が増えていきました。
今回の注目の人では、「少子高齢化の時代になってもニーズの変化に応じながら、地域おこしの拠点にしていきたい」と意欲を示す、現:高岡市B&G海洋センター・スタッフの皆さんに、これまでの経緯や今後の展開について語っていただくとともに、最終回の第4話では高橋正樹市長に市民の健康づくり事業に向けた抱負をお聞きいたします。

プロフィール
● 高岡市福岡B&G海洋センター

平成2年(1990年)、旧福岡町で開設。体育館、上屋付温水プールに加え、その後、敷地内に艇庫を設け、近隣のダム湖などでカヌー活動も展開。平成17年に高岡市と合併してからは現名に変更され、その後、施設の老朽化が著しくなったため、平成19年に体育館の外壁およびフロアを改修。また、平成22~23年にかけてプールの全面改修を行い、屋根の固定化や館内の暖房化を実現。これによって利用者が増大し、地域の健康づくり拠点としての活用が期待されている。

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第2話海洋センターを支える運営委員会

自然に増えた高齢者の利用

アクア・ウォーキング教室に参加する皆さん。自発的に水中ウォーキングを行う利用者が増えたため、「遊・Uクラブ」でも教室を開いて指導するようになりました

 市町合併を機に、B&G財団の修繕助成を利用してプール上屋の全面建て替え工事を行った高岡市福岡B&G海洋センター。暖房設備を整えて通年の営業が可能になったことから、水中ウォーキングに励む高齢者を中心に利用者の数が増えていきました。

 「合併が行われた平成17年頃から、自然発生的に水中ウォーキングの利用者が現れるようになりました。『痛めた足腰のリハビリに良い』とか『健康を維持するために良い』といったことを病院でアドバイスされた高齢者の皆さんが海洋センターの温水プールを訪れ、泳ぐ人に混ざって自分なりのメニューで歩くようになったのです」

 屋外施設の町営プールにも水中ウォーキングの利用者が訪れていましたが、夏場のみの営業だったことから、しだいに温水プールの海洋センターに足を運ぶ人が増えていきました。

 「こうした事情に後押しされて、暖房設備を取り入れた全面的な施設の改修が行われ、プールにもスロープや滑り止め加工を施した底床のレーンが設置されました。そこで、ますます水中ウォーキングの利用者が増えたため、歩き方のコツや注意点などを施設内に表示するほか、地域総合型スポーツクラブの『遊・Uクラブ』でも『アクア・ウォーキング』と名付けた教室を開くようになりました」

活発な意見を寄せる10名の委員

体育館の受付には「遊・Uクラブ」をはじめとする各種スポーツ団体の案内が所狭しに貼られており、施設の活発な利用が伺えます。最近では隣の市から訪れる利用者も少なくありません

 歩き方のコツを表示し、「アクア・ウォーキング」教室を考案したのは、旧福岡町の時代から設立されていた「遊・Uクラブ」のスタッフの皆さんでした。もともと同クラブは旧福岡町の総合型地域スポーツクラブとして組織されましたが、市町合併を機にNPO法人となって新生高岡市の地域総合型スポーツクラブの運営が託され、海洋センターを含む市内各所の体育施設の指定管理者になりました。

 「現在、遊・Uクラブは理事を含めて15人ほどのスタッフによって運営されており、海洋センターに来れば通年型の温水プールが利用できるようになったことから、最近では高岡市だけでなく隣の市からも利用者が訪れるようになりました」

 海洋センターの運営に関しては、旧福岡町の時代から「海洋センター運営委員会」がさまざまな意見や要望を出し合い、遊・Uクラブや行政と協議を行いながら施設利用における年間の運営計画を立てています。委員は、学識経験者3名、学校教育関係者3名、社会教育関係者4名の計10名によって構成されており、体育館やプールで日頃活動しているサークルなどの利用者団体からも1名の代表が選ばれ、社会教育関係者4名のうちの1名として参画しています。

 「海洋センター運営委員会は、住民の貴重な財産である海洋センターの運営に関して、さまざまな立場の人の意見をより多く反映する目的で作られました。合併後も委員会の制度は引き継がれており、各委員から活発な意見や要望が寄せられています」

意見が出ることで深まる理解

 海洋センター運営委員会の会議が開かれると、10名の委員からさまざまな意見や要望が出されます。もっとも多い意見は施設利用に関する改善点で、前回の会議ではプールの利用料金を改定する案のほか、これまで午後の時間帯にプールを利用していた幼稚園の委員から、午前中に変更してほしいという要望が出されました。

 「午前中にボイラーを炊いてプールの水を温めているので、園児の皆さんには十分に水が温まった午後からの時間帯に使ってもらっていましたが、幼稚園から『午後になると子供たちの集中力が落ちてしまう反面、午前中なら誰もが元気いっぱいなので、できれば利用時間を午前中に変えてほしい』と相談されました」

 午前中から十分に水を温めるためには朝の早い時間からボイラーを炊くため燃料費が余計にかかってしまい、それなりに人手も必要ですが、子供たちのことを考えれば幼稚園が出した要望にも応えたいところです。そこで、どうしたらこの要望に沿った運営ができるか、運営委員会と遊・Uクラブ、そして市の担当者が同じテーブルについて協議していきました。

 「利用する側の要望と施設を運営する現場とのすり合わせが大切です。どちらの側も、お互いに黙っていたら歩み寄ることはできません。さまざまな意見が委員の皆さんから出ることで相互理解が深まり、それが中身の濃い施設の運営につながるのではないのかと思います」

 委員に選ばれる人たちは皆、熱心に議論を交わすと語る海洋センター・スタッフの倉満さん。特に利用者団体の代表は日頃から各団体の要望や意見を聞いてまとめており、会議になると積極的に意見や要望を出すそうです。

 「しばらくの間、利用者団体の代表はバレーボール・スポーツ少年団の方が務めていましたが、女性の声も反映したいということで今年度からは2年の任期でバドミントン・サークルの方が務めています」

 こうして、人選にも工夫を凝らしながら利用者の声に耳を傾けている海洋センター運営委員会。もちろん、将来に向けた取り組みについても、少子高齢化を見据えながらいろいろな意見が出ているそうです。(※続きます)

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幼児水泳教室で元気に体を動かす子供たち。幼稚園での利用に関して割り当て時間の変更希望が出されると、さっそく関係者が集まって協議を行いました

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平成23年に開催されたプールのリニューアル式典では、オリンピックメダリストの中村真衣さんによる記念の水泳教室も行われ、多くの子供たちが参加しました