連載企画

注目の人:全国の海洋センター・クラブで活躍する方や、スポーツ選手など、B&G財団が注目する人にインタビューをしています。

No. 105

海洋センターを地域おこしの拠点にしていきたい

2014.11.05 UP

~時代の変化に応じて施設の有効活用に励む、高岡市福岡B&G海洋センター~

地域で唯一の上屋付温水プールとして親しまれながらも、暖房設備がないため冬場の休業を余儀なくされていた、富山県の旧福岡町B&G海洋センター。しかし、利用者の強い要望が続いたため、高岡市との合併を機に平成22年、B&G財団の助成と合併特例債を利用して施設の全面改修に着手。暖房設備を備えた通年型の温水プールが完成すると、従来から通っていた地域の子供たちに加えて水中ウォーキングに励む高齢者が多くなり、体育館でも「カローリング」などに親しむ中高年の姿が増えていきました。
今回の注目の人では、「少子高齢化の時代になってもニーズの変化に応じながら、地域おこしの拠点にしていきたい」と意欲を示す、現:高岡市B&G海洋センター・スタッフの皆さんに、これまでの経緯や今後の展開について語っていただくとともに、最終回の第4話では高橋正樹市長に市民の健康づくり事業に向けた抱負をお聞きいたします。

プロフィール
● 高岡市福岡B&G海洋センター

平成2年(1990年)、旧福岡町で開設。体育館、上屋付温水プールに加え、その後、敷地内に艇庫を設け、近隣のダム湖などでカヌー活動も展開。平成17年に高岡市と合併してからは現名に変更され、その後、施設の老朽化が著しくなったため、平成19年に体育館の外壁およびフロアを改修。また、平成22~23年にかけてプールの全面改修を行い、屋根の固定化や館内の暖房化を実現。これによって利用者が増大し、地域の健康づくり拠点としての活用が期待されている。

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第1話生まれ変わった我が町のプール

冬でも泳ぎたい!

 雪深い冬で知られる富山県の旧福岡町に、体育館と上屋付温水プールで構成される海洋センターが開設したのは平成2年のことでした。当時、町営のプールもありましたが、屋外施設で夏場しか運営できなかったため、海洋センターがオープンすると、特に上屋付温水プールに大きな期待が寄せられました。

 「ここは寒い気候の土地柄なので、屋外の町営プールは6月から9月までの3カ月あまりしか稼働できません。そのため、もっと長い期間利用できるプールが欲しいという声が以前から町内に上がっていました」(現:海洋センター・スタッフの倉満一成さん)

 スポーツが盛んな町で、当時の町長も野球が大好きなスポーツマンだったことから、官民あげて海洋センターの誘致に動いた結果、晴れて体育館と上屋付温水プールの建設が決定。平成2年に施設が開設すると、町のスポーツ拠点として機能していきました。

 「当時から水泳は町で人気のあるスポーツだったので、町営プールと違って温水が利用できる点に住民の関心が寄せられました。小学生たちなどは、オープンの1時間前ぐらい前から玄関に列をつくって待ってくれました」

 体育館も開設当初からスポーツ少年団の利用で賑わい、やがてビーチボールバレーの女性グループや高齢者のさまざまなクラブが活用するようになっていきました。

 「体育館なら雨の日でも寒い日でも体を動かすことができるとあって、フロアに人工芝を敷いて室内ペタンクや室内ゲートボールを楽しむ高齢者のクラブ利用が増えていきました」

 海洋センターができたことで、スポーツを取り巻く町内の様相が大きく変わったと振り返る倉満さん。町内に地域総合型スポーツクラブの「遊・Uクラブ」ができてからも、その活動の受け皿として海洋センターが活用されていきました。

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東に雄大な北アルプスの連山を望み、北に海の幸が豊かな富山湾が控える高岡市。雪の多い地域ですが、冬でも多くの住民が海洋センターで水泳や水中ウォーキングに励んでいます(画像提供:高岡市)

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海洋センター現スタッフ(遊・Uクラブ)の皆さん。前列中央が辻浦 孝さん。後列左から倉満一成さん、林 真寿美さん。そして、右端が施設を管轄する高岡市教育委員会の氷見和人さん

2年にわたって全面改修

海洋センター開設時から人気のあるビーチボールバレー。遊・Uクラブを通じて、さまざまな年齢層のグループが楽しんでいます

 高齢者の各種クラブや地域総合型スポーツクラブなどを中心に、町のスポーツ拠点として順調な運営が進められていった海洋センター。高岡市と新設合併した平成17年頃には、高齢者の水中ウォーキングも盛んに行われるようになりましたが、その一方で開設以来15年以上にわたってフル稼働してきたプールや体育館には老朽化の問題が浮上。加えて、住民からも利用面に関するいろいろな要望が出るようになりました。

 「雪の多いところですから積雪による経年劣化が目立つようになり、プールの上屋を支える支柱が腐食し、シートもボロボロに傷んだ状態になりました。また、上屋付の温水プールとはいえ暖房設備がないので、寒さが厳しい12月から3月までの3カ月は休業していました。そのため、当時、利用が増え始めた水中ウォーキングのお年寄りからは『冬場でも定期的に通いたい』といった声が寄せられました」

 体育館はプールに比べて傷みが少なかったため、合併直後の平成19年に実施した外壁の再塗装とフロアの研磨のみで改修を終えることができましたが、プールに関しては関係者の意見をまとめた結果、オールシーズンの利用をめざして上屋を全面的に建て替えることになりました。

全面改修によってプールに設置されたスロープ。高い手すりがあるため、足に不安のある人でも安心して水に入ることができます

 「全面的な建て替えとなればB&G財団さんの修繕助成だけに頼るわけにいきませんが、合併を機会に建て替え費用の一部を合併特例債で賄う案が考えられました」

 プールの上屋を全面的に建て替えるためには億単位の予算が必要でした。そのため、平成22年にB&G財団修繕助成を利用しながら躯体工事を済ませ、残り半分の工程を翌23年に合併特例債を使って行うことが決定。2年がかりの大工事になりましたが、無事に改修を終えることができました。

地域から寄せられた期待

新しくなったプールで水中ウォーキングを楽しむ皆さん。個人やグループの活動に加え、遊・Uクラブでも教室を設けて初心者向けの指導を行っています
 

 B&G財団の修繕助成制度を活用して上屋の全面的な建て替えを実現した、海洋センターのプール。豪雪にも耐える丈夫な屋根や充実した暖房設備のおかげで、年間を通して住民の誰もが水泳や水中ウォーキングが楽しめるようになりました。

 「新しくなったのは上屋だけではありません。改修前から水中ウォーキングに関する要望が多かったので、足に自信のない人でも手すりを使って楽に水に入ることができる緩斜面のスロープをプールに設置したうえ、1コースのみですが底の床に滑りにくい加工を施し、ウォーキング専用のレーンとして使うようにしました」

 かねてから高齢者の間で人気が出ていた水中ウォーキング。暖房設備を取り入れて冬場でも水に入れるようになったことで、ますます利用者が増えていきました。

 「不安定な足取りだった人たちが、水中ウォーキングを始めたことで徐々にしっかりと歩けるようになっていく姿は、私たちスタッフの喜びです。ですから、一年中プールが利用できるようになったことは、仕事をする上での大きな励みになりました」

 全面改修によって地域の人たちからより多くの期待を集めるようになった、海洋センターのプール。旧福岡町の時代から海洋センターを中心に事業を展開してきた地域総合型スポーツクラブの「遊・Uクラブ」にも、市町合併を機会に新たな役割が与えられていきました。(※続きます)

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建て替え工事前のプール施設。ビニールシートの大部分が変色して劣化しています

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B&G財団の修繕助成によって躯体工事が完了。積雪に耐える太い梁や柱が組み込まれました