連載企画

注目の人:全国の海洋センター・クラブで活躍する方や、スポーツ選手など、B&G財団が注目する人にインタビューをしています。

No. 102

カヌーを通じて、たくさんの親子に絆を深めてもらいたい

2014.07.23 UP

~地域に根付いたカヌー活動に励む、B&G宮崎シーライオン海洋クラブ~

今年6月8日(日)、宮崎市の海浜公園で「B&G杯 第2回サンビーチ 一ッ葉 カヌーアスロン大会」が、B&G宮崎シーライオン海洋クラブの主催で開催されました。カヌーとビーチランを組み合わせたこの大会を発案したのは、カヌーに魅せられて同海洋クラブを立ち上げた藏本政一さんでした。
「カヌーというよりも、カヌーに集う仲間の輪が大好き。大人と子供、親子みんなで海に出て楽しい時間を分かち合っていきたい」と語る藏本さん。カヌーアスロン大会をはじめとする、同海洋クラブのさまざまな取り組みについてご紹介します。

プロフィール
● 藏本 政一(くらもと まさかず)

1958年、生まれ。長崎県出身。海が好きで水産高校から大学水産学部に進学し、高校時代はカッター、大学時代はレガッタで活躍。卒業後は宮崎市に移り住んでシーカヤックを楽しむ傍ら、日南市の南郷B&G海洋クラブなどで子供たちにカヌーを指導。2012年には、地元の活動拠点としてB&G宮崎シーライオン海洋クラブを設立した。

● B&G宮崎シーライオン海洋クラブ

平成24年(2012年)1月、開設。宮崎市の海浜公園「サンビーチ・一ツ葉」の北ビーチを拠点にカヌー活動を展開するほか、バスやトラックにカヌーを積んで県内各地を移動しながらカヌー&キャンプなども実施。地元の小学生や修学旅行生を対象にした各種カヌー体験教室にも力を入れている。

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第4話さまざまな展開をめざしたい!

クラブを支える子供たちの輪

海浜公園『サンビーチ 一ッ葉』北ビーチで始められた海洋クラブの活動。子供も大人も一緒になってカヌーを楽しみます

 宮崎市の海浜公園『サンビーチ 一ッ葉』北ビーチを拠点に、活動を始めたB&G宮崎シーライオン海洋クラブ。代表を務める藏本さんは、B&Gプランを基に子供たちへのカヌーの普及に力を入れていきました。

 「カヌーは体のバランス感覚を養うので、幼い頃から乗せてあげたいと思っています。また、早いうちから海で遊ぶ際の安全意識を身につけていってほしいので、子供のカヌー教室を行う際には、皆でライフジャケットの浮遊体験や浮き身の練習などを行っています」

 海洋クラブには看護師のメンバーもいるため、ときどき手を借りて子供を集めた救命講習も行っていると語る藏本さん。5歳になる長男、汐音(しおん)君も救命講習を受けており、藏本さんが昼寝をしているときなどは、「大丈夫ですか?」といって藏本さんの胸を手で押して心肺蘇生の練習を始めることもあるそうです。


昨年行った海洋クラブの救命講習会。たくさんの子供たちが参加しました


 「起こされるほうはビックリしますが、それだけ心肺蘇生に興味を持ってくれているのだと思います。汐音だけでなく、クラブに遊びにやってくる多くの子も、子供同士でいろいろ言い合いながら心肺蘇生の練習をしています」

 このようなとき、大人たちは遠巻きに子供たちの様子を見守っているそうです。唐突に大人が入ってアドバイスするより、子供同士が教え合うことで、お互いを大事にする仲間意識が育まれていくからだそうです。

 「日頃行っているカヌーの活動でも子供同士が教え合っており、そんな時間を過ごしながら、年長者が年少者の世話をすることを覚え、年少の子も年長の子を頼るようになっていきます」

 キャンプに行った際も、ごく自然に年長者がリーダーになって年下の面倒をみているそうで、こうした異年齢の子供たちによる仲間意識がクラブの活動を支えているそうです。

人の喜ぶ顔が見たい!

 以前から、公民館などの要望に応えてカヌー教室を行っていた藏本さんや仲間の皆さん。海洋クラブとして新たな船出を迎えてからも、こうした活動は積極的に続けられています。

 「以前から、体験学習の一環としてカヌー教室を地元の小学校で行っていましたが、海洋クラブになってからも継続の活動として実施しています。

 また、地元の観光協会から依頼され、海のない県からやってくる修学旅行の学生を対象にしたカヌー体験教室も行うようになったほか、地元のトライアスロン競技大会でも運営のお手伝いをさせていただいています」

 海洋クラブの活動拠点である、海浜公園『サンビーチ 一ッ葉』北ビーチは、カヌーやヨットといった非動力型のマリンスポーツを楽しむ水面として整備されているので、漁船やモーターボートなどの動力船が入ってくることはありません。大きな船との衝突の危険や引き波を受ける心配などがないことから、初心者でも安心してカヌーを楽しむことができます。

 「修学旅行のカヌー体験教室は不定期で入るので、急にスタッフを揃えなければならない場合もありますが、なんとか声を掛けあって対処しています」

 カヌーはなかなか乗る機会がないはずだから、こうした活動は断れないと語る藏本さん。人の喜ぶ顔が見たいからこそ、続けていられるそうです。

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数多くのカヌーを積んで遠出ができる藏本さん所有のマイクロバス。海洋クラブの機動力を支えています

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クルマで遠征して海のツーリングを満喫。B&G宮崎シーライオン海洋クラブ自慢の活動です

釣りだって楽しもう!

 従来、藏本さんはクルマにシーカヤックを積んで仲間と一緒にキャンプをしながら遠出を楽しんでいましたが、こうした活動の原点は海洋クラブにも受け継がれています。

ちびっこキャンプで朝食を作る子供たち。メニューは定番の牛乳パックを使ったホットドックです

 「いまでも、カヌーをクルマに積んで、海洋クラブの皆と一緒に遠出を楽しんでいます。昨年は県南の日向市周辺まで足を延ばして、カヌー&バーベキューで盛り上がりました。

 また、昨年からは春、夏、秋と3回の『ちびっこキャンプ』を企画しており、カヌーに乗りながら魚釣りも楽しみます。子供たちは釣りが大好きなので、釣竿をカヌーに載せて海に出ると、目の色を変えて喜びます」

 クラブのなかに釣り具店を経営しているメンバーがいるため、その人に頼んでカヌー用の短い釣竿を揃えてもらったと説明する藏本さん。さまざまな人と人とのつながりを活かしながら、より多くの子供たちを海に連れ出したいそうです。(※最終話に続きます)