連載企画

注目の人:全国の海洋センター・クラブで活躍する方や、スポーツ選手など、B&G財団が注目する人にインタビューをしています。

No. 102

カヌーを通じて、たくさんの親子に絆を深めてもらいたい

2014.07.09 UP

~地域に根付いたカヌー活動に励む、B&G宮崎シーライオン海洋クラブ~

今年6月8日(日)、宮崎市の海浜公園で「B&G杯 第2回サンビーチ 一ッ葉 カヌーアスロン大会」が、B&G宮崎シーライオン海洋クラブの主催で開催されました。カヌーとビーチランを組み合わせたこの大会を発案したのは、カヌーに魅せられて同海洋クラブを立ち上げた藏本政一さんでした。
「カヌーというよりも、カヌーに集う仲間の輪が大好き。大人と子供、親子みんなで海に出て楽しい時間を分かち合っていきたい」と語る藏本さん。カヌーアスロン大会をはじめとする、同海洋クラブのさまざまな取り組みについてご紹介します。

プロフィール
● 藏本 政一(くらもと まさかず)

1958年、生まれ。長崎県出身。海が好きで水産高校から大学水産学部に進学し、高校時代はカッター、大学時代はレガッタで活躍。卒業後は宮崎市に移り住んでシーカヤックを楽しむ傍ら、日南市の南郷B&G海洋クラブなどで子供たちにカヌーを指導。2012年には、地元の活動拠点としてB&G宮崎シーライオン海洋クラブを設立した。

● B&G宮崎シーライオン海洋クラブ

平成24年(2012年)1月、開設。宮崎市の海浜公園「サンビーチ・一ツ葉」の北ビーチを拠点にカヌー活動を展開するほか、バスやトラックにカヌーを積んで県内各地を移動しながらカヌー&キャンプなども実施。地元の小学生や修学旅行生を対象にした各種カヌー体験教室にも力を入れている。

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第2話子供たちを海に誘いたい!

安全第一が合言葉

南郷B&G海洋センターで海の旬間イベントを楽しむ子供たち。バナナボートは常に一番人気がありました(2007年の特派員便りより)

 カヌーショップの仲間とツーリングを楽しむクラブを立ち上げ、クルマにカヌーを積んで県内外のさまざまな海を楽しむようになった藏本さん。やがて、知り合いを通じて日南市南郷B&G海洋センターから相談を受け、藏本さんをはじめとするクラブの有志が子供たちのカヌー教室を手伝うようになりました。

 「子供にカヌーを教えることに戸惑いはなく、安全管理だけはしっかり行いたいと思いました。カヌーに乗っていてケガをすることはめったにありませんが、カヌーに乗る準備をしているときや乗船する際に注意が必要です。子供はよく走り回るので、濡れたスロープで滑って転んだり、教えた手順通りに乗らず、勝手に乗ろうとして態勢を崩したりするからです。そのため、『艇庫の周りでは絶対に走らない!』と教え込みました。

 また、海は楽しいフィールドであると同時に、気象の変化などで危険な場所にもなり得ます。ですから、身を守るためのライフジャケットの大切さも口が酸っぱくなるほど言い聞かせました」

 ケガをしたり怖い思いをしたりしては、楽しいはずのカヌーが台無しになってしまいます。そのため、藏本さんはカヌーを通じて身の安全を守ることの大切さを徹底的に説いていきました。

高まる子供のニーズ

海の旬間イベントでカヌーに乗る子共たち。藏本さんは、カヌー教室を通じて子供たちにライフジャケットの大切さを教えていました(2007年の特派員便りより)

 安全を第一に考えながら、南郷B&G海洋センターのカヌー教室を手伝うようになった藏本さん。当初は、小学3年生から6年生を対象に行いましたが、『お兄ちゃんだけが乗れて、僕はどうして乗れないの!』といった低学年児の声も出たため、安全に考慮しつつ1年生からの参加も受けるようになりました。

 「自分が乗るのもさることながら、子供にカヌーを教えるのも楽しいものです。小さな子から『自分も乗りたい!』とせがまれたら、何とかしてあげたい気持ちになるものです。当時は、海洋センターにモーターボートがあったので、漕いで出るのが遅い低学年児はモーターボートで沖まで連れていってから乗せてあげるなどの工夫を考えていきました」

 やがて、そんな藏本さんたちの活動の様子を耳にした公民館からも、カヌー教室を開いてほしいという要望が出るほか、自分たちのシーライオンクラブ自体でも子供の数が増えていきました。

 「クラブメンバーの子供が乗りに来ると、やがてその子の友だちも来るようになって、子供が参加する活動が多くなっていきました。しかし、基本的に私たちはシーカヤックで活動する大人のクラブだったので、子供が乗れるようなカヌーはあまり持っていませんでした。

 そのため、クラブにやってくる子供は何とか乗せてあげることができても、公民館などからカヌー教室の要請があって大勢の子を一度に乗せてあげなければならない場合は、さすがに対応し切れませんでした。

今年のカヌーアスロン大会でも、半九レインボースポーツクラブなどの協力によって数多くのカヌーが集められました。カヌー仲間の輪が広がります

 そこで、こうした場合は、子供も乗れるカヌーを揃えていた半九レインボースポーツクラブ(宮崎市の総合型地域スポーツクラブ)にお願いして、必要な数のカヌーを貸してもらっていました」

 半九レインボースポーツクラブでは障がい者向けのカヌー体験乗船会を開いており、藏本さんたちも運営を手伝っていました。その縁もあって、必要なときにはカヌーを借りることができましたが、自分たちのクラブのなかで子供の数が増えていく状況を考えれば、どうしても自前で子供も乗れるカヌーを揃える必要がありました。

遠い艇庫

 こうしたなかで3年前、願ってもない話が持ち上がりました。南郷B&G海洋センターを通じて、「これまで行ってきたカヌー教室などの実績をもとに、シーライオンクラブもB&G海洋クラブ登録を申請してみたらいいのではないか」と助言されたのでした。

 「そんな話を受け、さっそくB&G財団にお願いして申請書を送ってもらいましたが、申請の条件要項を見ると、『子供たちの活動を考慮して、艇庫はなるべく海に近い場所に設けること』とありました。そのため、これはちょっと無理かなと思いました」

 藏本さんは、5年前に大きな倉庫のある農家を自宅に購入。倉庫を艇庫に改造してクラブ艇や活動備品を収容していたので、そこを海洋クラブの艇庫として申請するつもりでしたが、自宅の艇庫でクルマにカヌーを積んで、活動拠点にする宮崎市の海浜公園『サンビーチ・一ッ葉』に行くには30分ぐらいは掛かりました。

 海洋クラブの登録が決まれば舟艇や備品の助成が受けられるので、すっかりと肩を落としてしまった藏本さんやクラブの仲間たち。ところが、そんな折に思わぬ朗報が舞い込みました。(※続きます)

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大きな倉庫が使えるとあって、ある農家を5年前に入手。一度にたくさんのカヌーを運ぶことができる小型バスも楽に駐車できる庭も魅力です

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倉庫にはシーカヤックを中心にさまざまなカヌーが保管されています。海まで30分ほど掛かりますが、貴重な後方支援基地になっています